「IT資産」が業績向上にどのくらい役だっているのか!! 実地棚卸を行いませんか/恩村 政雄

1.はじめに
 日本の企業が本格的に情報システム化を進めてからわずが40年足らずですが、ハード、OS、ソフト、周辺機器等の性能と種類は長足の進歩。
 21世紀に入り、日本はIT化戦略を国家施策の重点施策として強力に推進した結果、情報インフラは世界の先端を走るようになりました。
 しかし、IT化投資時に期待した効果を享受するほどには、IT化は企業の業績(売上UP、利益確保、経費削減、全体的業務の効率化等)に結びついていないと、眉をひそめる中小企業経営者は数多くあります。
 ITをうまく業績に結び付けている企業の事例を広く世に知らしめ、中小企業のIT化に取組むポイントはどこにあるのかの気づきを与え、経営におけるIT化の羅針盤を示そうと「関西IT活用企業百撰」の活動が深く静かに浸透しています。

2.「関西IT活用企業百撰」は関西主要経済団体が共同で設立した優れもの
 関西IT活用企業百撰とは、IT化をうまく企業経営に役立てて、業績をあげている企業の実例を公開し、ITの活用に悩んでいる企業、これからIT化を進める企業のIT化導入・活用にヒントを与え、うまく活用できるように道筋を示し、関西の中小企業を盛り立てたいとの思いから、2001年関西主要経済団体 ((社)関西経済連合会、大阪商工会議所、京都商工会議所、神戸商工会議所、(社)関西経済同友会、関西経営者協会)が共同で設立した組織で、その実行部門を「NPO法人IT百撰アドバイザー・クラブ」が担っています。
 経済産業省もこの関西IT活用企業百撰を参考にして、中小企業のITの活用による経営革新を進めることにより中小企業の活性化を図ることを趣旨として、2004年「IT経営応援隊」を発足、関西地区では近畿経済産業局、(財)関西情報・産業活性化センター(KIIS)が母体となって「関西IT経営応援隊」を立上げ、「関西IT活用企業百撰」と共同推進体制を組み、力強く推進しています。

3.IT化を経営に上手に結びつけている企業の事例
 「NPO法人IT百撰アドバイザー・クラブ(以後はIT百撰と略称)は2001年に結成。
 メンバーの多くは情報産業企業OB、一般企業情報システム部門OBで、ITコーディネーター有資格者も数人。メンバーの報酬は企業訪問時の交通費実費補填だけで、その他の報酬は一切なく完全なボランティア。訪問先の企業はこのことを知り、その高い志に共鳴し、企業秘密の細部にまで詳しくお話ししていただける。(もちろん守秘義務を厳守)
 毎年、IT百撰に応募した企業にメンバー2名で訪問し、経営者のIT化への思いと、IT化の現状及びその活用度が企業経営にどのくらい役立っているか等を、
1.経営戦略とIT戦略の融合
2.現状が可視化による業務改革の推進
3.ITの活用による新ビジネスモデルの抽出、ビジネス領域の拡大
4.標準化された安定的なIT基盤の構築
5.ITマネジメント体制の確立
6.IT投資評価の仕組みと実践
7.IT活用に関する人材の育成
8.ITに起因するリスクへの対応
の8つの角度から経営者にヒヤリングし、後日の選考会でメンバー全員が特に優秀と認めた企業を表彰し、2月頃に大阪国際会議場でフォーラムを開催、各社1時間に亘り経営者から直接発表していただき、聴講の中小企業経営者に啓蒙や気づきを力強く与えています。

IT化の取り組み事例として2社のIT化の取り組みについて述べてみます。
事例1,ーISO9000マニュアルをIT化し、工程管理、品質管理を誰でもマスターー
 A社は鋳工機械メーカーで大手機械メーカーの協力会社。メーカー製品の部品を納入しているが、ある休日に電話が鳴る。メーカー担当者から怒声ですぐ来い。
 A社が納品した部品が原因で、メーカー製品が海外の現場で大トラブル発生し工事が中断。
 多額の弁償、廃業にまで追い込まれたが、A社が3日間に亘り操業を中止、全員が侃々諤々で原因究明、その姿勢がメーカーを動かし、メーカーの指導を仰ぎ、品質管理を一から見直す。同時に経営者は一念発起し自らISO9000取得を目指し猛勉強の甲斐あって認定取得企業となる。
 もちろん、従業員20人以下の小規模企業でISO9000認定取得したのは日本では初の企業。
 さらに、この品質管理の知識と取り組みを日常の仕事の中に織り込むために、ISO9000で示されているマニュアルを、基本は遵守しつつ自社の規模に適した形で全てIT化。
 現在では、ベテランや新入社員を問わず、IT化マニュアルを遵守し作業を遂行。全員が短時間で工程管理や品質管理のコツをマスターし第一人者となる。
 ISO9000認証取得をさらに一歩進め、IT化に結びつけたQCD(品質、コスト、納期)の取り組みに大きな効果をあげ、メーカーからは協力会社の範として絶大な信用を得ている。

事例2,ートレーサビリティ情報の細事にまで亘る開示で売上・利益を確保ー
 21世紀前後、ヨーロッパでBSE牛発見、日ならずして日本でもBSE牛。牛関係業界に激震が走る。
 牛の生産者、流通加工業者、牛肉販売店・飲食店と全てのルートで大きな痛手。
 B社も例外でなく、売上はつるべ落とし、何とかしなければと四苦八苦した結果、ホームページ(HP)を一新し、生産者の牛に対する思い・情熱、子牛登記、生産牧場情報、生産履歴、と畜検査書と、牛が生まれてから枝肉になるまで牛肉の安全・安心をとことん追求。この全ての情報をHPで情報開示し、同業者や飲食店だけでなく一般家庭からも注文の引合いがひっきりなし。
 HPでの情報開示の主な目的は、牛肉の安全・安心を訴えBSEの風評被害を最小限に押さえることであったが、予想外にもWeb表示価格が通り、利益も確保され経営力が一段と増す。

4.IT化を経営にうまく結びつけている企業の共通点
中小企業といわれる中には数百人規模の中堅企業、数人足らずの家族的企業と、その規模は千差万別だが、企業規模を問わずITをうまく活用し、業績に結び付けている企業には共通している点が多くみられる。
・経営者がIT化に対し熱き思いを抱き、自ら取組んでいる
・自社の経営資源を冷静に直視し、足らざるところをIT化に置き換えられないかと、真剣に検討した跡がみられる・IT化の目的が明確で、社員全員にまで浸透している(手段が目的にはなっていない)
・ITが日常業務の中に組み込まれ、ITを活用しているという特別な意識は薄い
・普及度の高いソフトやハードを身の丈にあった費用で導入・活用し、徒に先端ソフトやハードに走るようなことはしていない

 中小企業の皆さん、今活用されているひとつひとつのITがどのくらい自社の業績向上に役立っているのか、製・商品の実地棚卸と同じように、IT資産の実地棚卸を行いませんか!


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