IT業界で次々と出現する新しい言葉について考えてみる~クラウドコンピューティング~/池内 正晴

 1.クラウドコンピューティングという言葉の出現

 IT業界を取り巻く世界では、次々と聞きなれない言葉がでてくる。最近耳にし
た言葉のひとつとして「クラウドコンピューティング」という言葉がある。クラ
ウドコンピューティングとは英語で記述するとCloud Computingとなり、直訳す
ると「雲状のコンピュータ操作」という意味になり、何のことかさっぱりわから
ない。
 従来よりコンピュータのシステムを図解するときに、ネットワーク(特にイン
ターネット)を雲の絵で表現することが、多く行われている。このネットワーク
を使ってコンピュータを利用することから、クラウドコンピューティングという
表現が使われるようになったのではないかと考えられる。また、ネットワークを
介してどこにどのように設置されているかわからないコンピュータで業務処理を
行うことを、雲に覆われて見えないということで表現しているとも考えることが
できる。


2.クラウドコンピューティングという言葉の意味

 クラウドコンピューティングとは、簡単に述べるとインターネットなどのネッ
トワークを介して、見えない(離れた)ところにあるコンピュータを使用して、
処理を行うという意味なのである。これまで、このコラムでも多くの人が取り上
げているASPやSaaSなどの概念と同じではないかと思う人も多くあるのではない
だろうか。コンピュータを使用する方法として客観的な見方をすれば、両者は同
じものであると考えられる。そうであれば、なぜクラウドコンピューティングと
いう言葉が使われるようになったのであろうか。
 ASPはApplication Service Providerの略でアプリケーションを提供する事業
者、SaaSはSoftware as a Serviceの略でソフトウェアをサービスとして提供す
るといったような意味となる。すなわちサービスを提供する側の視点での言葉な
のである。
 これらに対してクラウドコンピューティングは、どこにどのように設置されて
いるかわからないコンピュータを使用して処理を行うといったように、利用者側
の視点で見た言葉であると捉えることができる。
 視点を変えただけで、実態として同じ内容の言葉なら不必要ではないかと考え
る人もいるかもしれないが、利用者側視点ということがポイントなのである。
 IT関連で出現してくる新しい言葉は、全体的な仕組みを表したものや、製品や
サービス提供側の視点によるものが大部分である。そのため利用者は新しい技術
などが自社にとって有益なものであるかを判断するために、その技術的な内容を
理解する必要があるケースが少なくない。
 しかし、技術がある程度成熟し、それによって得られる効果が明確になってく
ると、その技術について利用者側の視点で語られる機会が増え、利用者として技
術によるメリットを理解することが容易になる。そのような流れの一部が、クラ
ウドコンピューティングという言葉の出現に表れていると考えても良いのではな
いだろうか。


3.クラウドコンピューティングのもうひとつの意味

 クラウドコンピューティングとは、ASPやSaaSなどの概念に対するひとつの捉
え方であると述べてきたが、もっと大きな概念についての言葉であるとも考える
ことができる。
 利用者は、巨大なコンピュータネットワーク(インターネット)に接続すれば、
様々なサービスを簡単に利用することができる。しかし、そのサービスは物理的
にどこでどのような形で提供されているかわからないものが大半である。さらに
無料で提供されているサービスなどでは提供者が誰であるのかすらわからないも
のも少なくない。
 ネットワークに接続されているそれぞれのコンピュータは、もちろん実態があ
るものであるが、そのネットワークが巨大化することにより、個々の実態という
ものが見えなくなっているにもかかわらず、利用者は様々なサービスを利用でき
るという状況を指して、クラウドコンピューティングという言葉が語られるケー
スもある。


4.次々と生まれてくる新しい言葉に対して

 いずれにしても、IT革命という大きな流れの中で、いままでには考えつかなか
ったような技術や概念が次々と生まれ、それらを言葉で定義しようとして、次々
と新しい言葉が生まれてきている。さらに、その言葉に対して十分に明確な定義
がされていないため、混乱が起こることも少なくない。
 このような混沌とした状況がおさまるまで静観するというのも、ひとつの選択
肢でもあるかもしれない。しかし、ビジネスのうえでは、先進性でライバルに対
して優位に立つということも重要な戦略でもある。そのためにも、ひとつの言葉
に振りまわされることがないように留意しながらも、それぞれの言葉の意味や背
景などを考えてみることにより、広い視点で世の中の動きを見ていくということ
も大切である。


■執筆者プロフィール

池内 正晴 (Masaharu Ikeuchi)

学校法人聖パウロ学園
    光泉中学・高等学校
ITコーディネータ
E-mail: ikeuchi@mbox.kyoto-inet.or.jp



公式Facebookページはこちらから

<いいね>をクリック!