IT経営の第一歩は見える化から/宗平 順己

 2008年6月に経済産業省から「IT経営ロードマップ」というものが公開されました。どなたでも経済産業省のホームページからダウンロードできます。
http://www.meti.go.jp/press/20080625001/20080625001-3.pdf

 ダウンロードされた資料をみると発行者は「IT経営協議会」となっています。
このIT経営協議会は、経営へのIT活用においてベストプラクティスとされている企業27社と大学教授など専門家とで構成されています。
http://www.meti.go.jp/press/20080625001/20080625001.html

 また、6月20日に開催された第1回の会合では、IT経営ロードマップの策定に先立って「IT経営憲章」というものが採択されています。

 これらの資料では、IT経営とは、「経営と現業とITの融合によって企業価値の最大化を目指すこと」と定義されています。
 そしてIT経営を実現するためには、成功企業での事例を踏まえて「見える化」、「共有化」、「柔軟化」の3つのステップを踏むこととされています。業務や情報を見える化した上で、組織全体を見渡して業務や情報の統廃合をするというところまでが当面目指すべきところです。さらに環境変化に対して迅速に対応できるように業務やシステムのモジュール化を進めるのが「柔軟化」ということですが、中小企業にとっては理解しにくい内容でしょうから、システムを発注する際に、変更しやすいしくみにしておいて欲しいとITベンダーに注文をつけておけば良いと思います。
 さて、第一ステップの「見える化」では「業務の見える化」と「情報の見える化」の2つの取り組みが必要です。情報の見える化はまだまだシステムの専門家でないとできない内容なので、ここでは「業務の見える化」について解説します。

 「業務の見える化」は一言でいうと、業務フローを作成しましょうということです。ただし、いきなり業務フローを書いてほしいと担当者に依頼すると失敗します。細かな作業手順を書く人や大まかな業務の流れを書く人が現れ、各人の書いた業務フローをつなげることができなくなってしまいます。
 そこで、業務の棚卸をまず行います。一般には大分類、中分類、小分類で業務一覧を作成し、小分類について業務フローを作成するということが一般的です。
業務フローについては世の中に多くのテンプレートがあるので、それを使うことをお勧めしますが、必ず、一度作成した後、何度も見直すことがあることに留意しておいて下さい。

 この「業務の見える化」は、私たちITコーディネータにとっては、最も基本的な指導内容であり、難易度も高くないのですが、書かれたことのない一般企業の皆さんにとっては、私たちがいくら簡単だと言っても実感がわかないことだと思います。しかしながら、この見える化に着手しなければ、ITの有効活用ができず、結果的には企業の死活問題になってきます。
 「業務の見える化」の効果はすぐに現れます。自分たちの業務のムダ、ムリ、ムラをすぐに理解することができ、改善策の検討が容易になります。

 ぜひ、読者の皆さんが業務の見える化に着手されることを強くお勧めします。
また、自分たちでは難しいと考えられているのであれば、私たちITコーディネータにご相談ください。「目からうろこ」のアドバイスが得られることとなります。


■執筆者プロフィール

氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 (株)オージス総研 執行役員 技術部長
資 格 ITコーディネータインストラクター、ITコーディネータ、
    公認システム監査人

専門分野
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・IT統制