昨年の金融危機に端を発する景気の低迷の影響について、経営者の皆様より
「半年で経済環境がこれだけ激変したのは初めて」という驚きの声を良くお聞き
します。建設業界では、今まで受注件数をこなせるかどうかという好景気だった
のに、半年で受注を既存の営業地域外に求めていかなければならない状況にまで
変化しています。また、今まで洗剤などの消費材については景気の影響はさほど
受けなかったものが、昨年12月には今まで年末の大掃除で洗剤の使用を3杯か
ら2杯にする行動を消費者が行った結果、消費材についても売上が減少したよう
です。これは、もちろん消費者に倹約の意識もあるのでしょうが、倹約の意識よ
りも「エコ」つまり環境に対する配慮の意識が強くなってきている結果だとみら
れます。
このように、経営者の皆様は大きな環境変化にさらされ、今後の対応を迫られ
ています。では、政治の対応はというと、新年より与党(自由民主党・公明党)の
混迷ぶりが、一段と深まっており、政権交代も見据えた今後の制度の改廃を注視
していく必要があります。
今年の制度改正を見ていくと、税制においては与党より昨年12月12日に平
成21年度税制改正大綱が発表されました。国内経済の不振から国民生活を守り、
今後3年間のうちに景気回復を最優先で実現するという決意から生活対策と内需
刺激策を焦点とし、減税を前面に打ち出した内容となっています。しかし、当然
財政の厳しい状況をふまえ、消費税および相続税に代表される税制抜本改革の必
要性についても触れられたものとなっています。
今後の政局を見ていく必要はありますが、21年度税制大綱の内容は概ね国会の
承認を得て実施される流れとなります。中小企業の経営者に関係が深いと思われ
る項目について一部にはなりますが、ご紹介させていただきます。
中小企業対策税制
★中小法人等の軽減税率の引き下げ(2年間)
今回の税制改正大綱の特に大きな目玉として、中小法人に対する生活対策があ
げられますが、資本金等の額が1億円以下である中小法人等について、平成21年
4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度における所得の
うち年8百万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が現行の22%から18%
に引き下げられます。
★欠損金の繰戻し還付の復活
平成20年度の税制改正で停止期間が2年延長された「欠損金の繰戻し還付制度」
が復活します。中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度におい
て生じた欠損金額から還付の対象となりますので、例えば、この3月決算法人に
ついて、前年度は黒字だったが、経営が悪化して今期が赤字となってしまった場
合には、前年度に納付した法人税の還付を受けることができることになります。
住宅・土地税制
★土地の長期譲渡所得の特別控除制度の創設
土地需要を集中的に喚起し、有効活用を強力に推進するための特例措置として、
個人および法人が平成21年、22年中に取得した国内の土地等について、5年間を
超えて保有後に譲渡した場合には、その譲渡にかかる譲渡益から1千万円が控除
されます。
★土地の先行取得の課税の特例制度の創設
併せて、個人事業者および法人が平成21年、22年中に棚卸資産以外の土地等の
取得をし、届出書を提出した場合において、その土地を先行取得財産として、そ
の取得後10年以内に、他の保有土地等を売却して譲渡益が発生したときは、その
先行取得した土地等について、その譲渡益の80%相当額(平成22年取得の場合
は60%)の圧縮記帳をして、課税の繰り延べができます。
★事業用資産の買換特例の期限延長
国内にある長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等へ
の買換えをした場合の課税の特例について、適用期限が3年延長されます。
相続税制・事業承継税制
★事業承継税制の完成
相続税の抜本的改正である遺産取得課税方式への見直しは見送られましたが、
中小企業の事業承継を円滑化するため、非上場株式等にかかる相続税および贈与
税の納税猶予制度が創設されました。
この制度は、既知のとおり、経営承継相続人が、相続等により、経済産業大臣
の認定を受けた非上場株式を取得した場合には、その相続人が納付すべき相続税
額のうち、その株式にかかる相続税額の80%相当について、相続税の納税を猶予
するというものです。
また大綱では、猶予税額の具体的計算方法や猶予された税額が免除される場合
について明文化され、さらに現行の小規模宅地等についての課税の特例計算との
併用が認められました。
ただし、この税制は、事業承継者以外のその他の相続人の税額には影響を与え
ないため、農地の納税猶予制度のように他の相続人に対するメリットはありませ
ん。
なお、この制度は平成20年10月1日以後に発生した相続から遡って適用され
ることから、平成21年3月31日までの間の相続について、この制度の適用可能
性がある場合には、申告書の提出期限が平成22年2月1日まで延長されます。
■執筆者プロフィール
氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり経営戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com
HPアドレス http://www.hikari-advisor.com
21世紀に羽ばたく「あるべき姿」の実現に向け、お客様の羅針盤として真の
経営改革支援と、事業リスク分野における情報提供、将来に向けての対応策を
ご提案いたします。
コメントをお書きください