ITアウトソーシングの見直し/大塚 邦雄

 昨年よりWeb上で業務用ソフトウェアを提供するSaaSが話題になっています。
パッケージの品揃えも進んでいますので検討されている方もおられるでしょう。
SaaSに限らず、アウトソーシングは中小企業にも浸透しつつあります。昨今の急激な経済悪化の中で、直ぐに景気が回復することは難しいでしょうが、その中で如何に経営努力をして生き残る道を選ぶかが重要になります。

 この対策は各社の状況によって様々ですが、何らかの形で更なる合理化が必要になることでしょう。ITアウトソーシングの活用もその一つと言えます。
一般的にアウトソーシングは、コンピュータ関連の情報通信技術を外部委託するITOと、企業の主に内部管理業務(総務・経理・人事など)の一部を専門企業に外部委託するBPOがあります。
ITOは更に、業務用ソフトウェアを提供するアプリケーション・アウトソーシングと、システム基盤を提供するインフラストラクチャー・アウトソーシングに分けられますが、ここではアプリケーション・アウトソーシングについて取り上げます。冒頭で述べましたSaaSもこの一種です。

 SaaSについてはこのコラムでも他のITCが何度か取り上げて説明していますし、BPOについても載っておりますのでバックナンバーを参照願います。
今回は一般的にITOを利用する上で気の付いた点を述べることにします。

利用に当たっては、
(1).アウトソーサに任せきりにしないこと。
 よくある例は自社での専門要員がいないため情報リテラシー(情報活用力)が低く、委託結果に対して評価・改善がなされないことです。
 そこで必要になるのがシステムの主治医(トレーナー)とも言える人材をもつことです。(通常ITCが担います)
 アウトソーシング費用の改善効果と主治医に掛ける費用のバランスになります。

(2).利用アウトソーサの交替を考えておくこと
 (1)と関係しますが、システムを運用すると継続性が重要になりますので、簡単に委託業者を切り替えることが難しくなります。しかし、より良いシステムの利用を念頭において、運用システムのサービスレベルを評価することが情報リテラシーの向上に繋がります。

(3).システム運用費用を見える化すること
 これも上述と関係しますが、通常システム開発を外部に委託する場合は開発工数を人月計算して費用が見積もられます。しかしその見積もりの妥当性を評価するのは非常に困難です。しかしシステムの利用数乃至は頻度によって課金されれば、利用効果を測定することが可能となります。

(4).アウトソースする業務を定期的に見直すこと
 中小企業でもISOの認証を取得されている企業がありますが、取得時には盛り上がったものが、その後低調になるケースがよくあります。業務効率が悪いと感じたら利用システムに問題があるのか、業務そのものの在り方に問題があるのかを見直し、外部委託業務を改善します。

(5).利用業務の組み合わせを考えること
 企業によっては部署毎にIT化を進めた結果、データの重複や齟齬をきたす例があります。データの正確性・信憑性を確保し、データに連鎖性をもたせることです。そのためには業務フローの見直しと合わせて、データフローのムリ・ムダ・ムラをなくす取組みが必要です。

これらは、既にアウトソースしているところが対象ですが、今後利用される企業でも参考にして頂けるでしょう。

注)
SaaS(Software as a Service)
ITO (Information Technology Outosourcing)
BPO (Business Process Outosourcing)


■執筆者プロフィール

大塚 邦雄
情報処理システム監査、ITコーディネータ
30年にわたるシステム経験をもとにIT化を支援します。
e-mail:k_ootuka@mbox.kyoto-inet.or.jp