コミュニケーションと自己理解/中川 秀夫

 日本のビジネス社会では、仕事の成果を決めるのは人間関係です。コミュニケーションをうまくとり、良い人間関係を構築し、効果的に仕事ができる環境をつくることができる人が、成果を勝ち取ることとなります。
 ITコーディネーター専門知識教材テキスト06(初版)によれば、『事実、企業活動は、活発なコミュニケーション行動があってはじめて機能し得る。われわれが勤務時間の60%をコミュニケーション行動(面談する、電話する、文書を書いたり、読んだりするなど)に費やしているというデータが、これを証明している。』となっています。人間関係の大切さとコミュニケーションの重要性を認識していても、実際には円滑で効果的なコミュニケーション行動をとることはなかなか難しいものです。そこで、コミュニケーションのあるところ常に登場する自分自身の理解について確認していきます。

 [自分自身の理解(ジョハリの窓)]
 今までの人生で誰でも自分自身との付き合いが、他の誰よりも長い付き合いのはずであります。しかし、自分自身を100%理解している人はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。また、周りの人がみた自分というイメージと自分自身がイメージする自分との間には、多少ズレが生じているように思います。
「自分でわかっている自分、わかっていない自分。他人に知られている自分、知られていない自分。」といった見方に区分し、田の字型のマトリックスをつくり、それらの4つの領域をそれぞれ4つの窓として捉え、自己理解を整理して考えられるように開発されたものがジョハリの窓であります。ジョハリとは、開発者のジョセフ・ラフトとハリー・インガンの名前を合成したものだそうです。

1) 開かれた窓(自分でわかっている自分と他人に知られている自分との組合せの領域)
自分も他人もともに理解できる領域です。この領域で交流するときには、お互いが良く理解しあえるので、良いコミュニケーションを築くことができます。

2) 閉ざされた窓(自分でわかっている自分と他人に知られていない自分との組合せの領域)
自分の持っているいやな面や他人に話せない悩みなど、意識的に隠している領域です。

3) 気づかない窓(自分でわかっていない自分と他人に知られている自分との組合せの領域)
自分自身は気づいていないが、自分の気持ち、考え方、行動が他人からの自分の像と自分自身のイメージとのズレにより生じている領域です。

4) 暗い窓(自分でわかっていない自分と他人に知られていない自分との組合せの領域)
自分にも他人にもわからない未知の領域です。

 このことから、よりよいコミュニケーション行動により良い人間関係を構築するためには、自分自身のことを自分も知り、他人にも知っていただくことが必要となります。
 そのためには、1)の開かれた窓を今以上に広げてゆくことです。この領域が大きければ大きいほど、よりよいコミュニケーション行動により良い人間関係を構築できるはずです。

1)の開かれた窓を今以上に広げてゆく方法
(A)他人に対して自分自身を積極的に肯定的に開示する努力をすることで、2)の隠された窓の領域を小さくしていくことです。
(B)自分が他人からどう見られているかについて、人からのフィードバックを積極的に受け入れて、3)の気づかない窓の領域を小さくしていくことです。
(C)2)の隠された窓の領域、3)の気づかない窓の領域を小さくしていくことで、1)の開かれた領域が大きくなり、4)の暗い窓が小さくなっていきます。

 自分自身を知り、積極的に肯定的に開示していくことでよいコミュニケーションを促進し、より良い人間関係を構築しましょう。そして、お互いの仕事の成果を獲得しましょう。


■執筆者プロフィール

中川 秀夫(なかがわ ひでお)
税理士、ITコーディネーター、CFP(1級F P技能士)、
不動産コンサルティング技能登録者
IT投資に関する支援を新機軸に経営計画、 

建設投資、不動産に関する業務サポートを展開中 。
お問合せ先:naka.h@dream.com