先日、「中小企業白書 2009年版」が発表されました。
サブタイトルは「イノベーションと人材で活路を開く」というものです。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/090424hakusyo.html
世界経済が減速し、中小企業はかつてない厳しい経営環境に置かれていますが、「売上の維持・拡大を図るためには、変化する市場ニーズを把握し、中小企業の強みを活かした製品・サービスの開発・供給、販路の拡大等に取り組むこと、すなわち中小企業のイノベーションを進めることが重要である。」と述べています。
イノベーションとは、狭義には「技術革新」と訳されますが、広義には製品やサービス、市場、組織構造、組織風土、業務の流れなど企業活動にかかわるあらゆるものの革新を指します。
白書では、イノベーションを実現するための研究開発活動費の割合が高い企業ほど景気後退期でも営業利益率が高くなる傾向があり、また、イノベーションを実現して新たな製品・サービスを生み出している企業の売上高が増加傾向にあるとの調査結果を示しています。
「厳しい時代だから、ここは耐え忍ぶしかない。」とのお考えの企業も多いと思いますが、一方で、「厳しい時代だからこそ、変革(イノベーション)の機会である」として頑張る元気企業もあり、TVなどでも時々紹介されています。
ここで立ち止まる企業と、前進する企業の格差は、後に、幾倍にも拡大することは明らかです。「言うは安し、行なうは難し」ではありますが、チャレンジしていただきたいと思います。
そこで、公的支援事業として、コア技術を活かした新規事業の企画支援を行っていた経験などを踏まえて、イノベーション実現のための要点を、特に重要と感じている2点についてご紹介したいと思います。
1、経営者の決断
これは、白書の中で「経営者のリーダーシップ」として示されている内容にも通じますが、リーダーシップの発揮以前の問題として、経営者のイノベーション実現に向けた決意・決断が重要です。
通常、支援事業を始めるにあたって経営者との面談を行いますが、その時に、事業に対して真剣な課題として取り込もうとされているか?その実現に向けて投資も辞さない気持ちはお持ちか?などを伺います。この時点で、支援が意図した成果を生み出すか、良い勉強になったとして形式的に終わるかが概ね判断できます。
ちなみに、投資とは単にお金を投じるのみが選択肢ではありません。お金を捻出できない場合は、要員による労力と時間を投じることもできます。お金も労力・時間も投じられない場合は、宝クジでも買って運を天に委ねられると良いでしょう。
ついでに言うならば、経営の方針に決断を下すことは経営者の特権であり、また、経営の醍醐味でもあります。経営を楽しいものと認識していただけるようになればと思っております。
2、イノベーションへの阻害要因の排除
イノベーションを実現するに当たっては、その阻害要因となる3つの「関」があると言われています。「関」とは、関所の関で、さえぎり止めること。また、そのものを言います。これを突破できるか否かが重要な課題と言えます。
(1)認識の関
問題点を正しく認識できない、あるいは、問題を誤って認識しまうものです。
与えられた問題の解を求める教育の結果として、問題を見出すことができない「問題解決シンドローム」や、蛙は熱湯に入れられると驚き逃げるが、冷水から徐々に加熱すると茹であがって死んでしまう「茹で蛙(ゆでがえる)」の話にも通ずるものがあると思います。
(2)文化の関
自身の常識、知識、経験、先入観が新たな創造を阻害するものです。
特に、企業においては先人の成功体験は大きな文化の関となってしまいます。
若い社員の新たな提案に対して、先輩から何らかの出来ない理由が示され、新たな発展への芽が摘み取られてしまうのは良く見かける光景です。
先人の歩んだ道を歩ませるようでは、先人を超える発展は無いものと思います。
(3)感情の関
今のままで良いという保守的思考、間違った笑われる・恥ずかしいという観念、意固地になってしまう、無気力でどうでもいいと感じる、などといった人間の感情面での阻害要因です。
経営者の思いを共有し、目標達成に向けた士気を高めることが必要となります。
こうした阻害要因である「関」を乗り越える手段として、創造活動のための技法を用いることも有効です。「発想法」、「問題解決手法」などとして市販書籍などでも紹介されているのでの参考にしていただければと思います。
■執筆者プロフィール
竹内 肇(タケウチ ハジメ)
E-mail:takeuchi@pangkal.com
◆◆中小企業の経営改革・競争力強化支援、ISO27001/ISMS認証取得支援◆◆
合資会社パンカル 代表
http://www.pangkal.com/