消費トレンドの波を読む~ 消費トレンドの波に潜む 未来からのメッセージ ~/源田 道雄

●混迷する小売業界

 百貨店 :テナント任せの顧客サービスが 顧客不満足度をアップ
 大型SC:拡大路線も終着駅へ どうなる低価格路線と接客力の壁
 コンビニ:崩れた成長神話 過剰出店が招いた薄利体質と見切り販売

 これら苦悩する業界がある一方、ユニクロなどはリーズナブルな商品を次々と投入しながら躍進を続け、また、深夜の都会では、24時間営業の都会型スーパーにシングルな人々の流れが止まりません。

 では、なぜ、小売業界がこんな衰退の道を辿っているのでしょうか。
その原因は、「過去の成功体験」という錆びついたアンカーを引きずったままでいるからです。

 一方、低成長時代に成長を続ける会社は、消費トレンドを先読みし、仮説を立て、「守り」から「攻め」へと大きく舵を切ったのです。

●未来を読むためのABC分析
 今月の売上が「─20%」となった原因を、過去しか見ることができない、ABC分析に頼っているようでは、経営の動体視力が衰えてしまったことを意味しています。 

 消費トレンドの波間に潜む顧客ニーズこそ、低成長時代から脱出するために必要なメッセージです。そして、売上の時間軸に伴う変化が消費トレンドの波として現れます。

=時間軸を取り入れたABC分析=
 データの推移状態を表わすために、時間軸を取り入れることでデータの経過変化を現します。また、同時に顧客ニーズの心理的変化による購買行動の変化も表わします。

 この分析に必要な要素は次のようなものです。

1.所得層による顧客の購買志向の変化
 新中間所得層─低安定型(高品質・低価格)購買志向─が出現し、低成長時代の主流となり始めています。

2.顧客の期待度は、常に上昇し続ける「昨日の100点は、今日の80点」顧客が求める100点満点は上がり続けます。

3.商品寿命の波の変化
 商品のライフサイクルは、富士山型 _/ ̄\_  から茶筒型 _ | ̄ ̄|_  へさらに、今ではペンシル型 _|~|_ へと変化しています。

もし、発注をペンシル型に対して、富士山型で行うとタイミングを逃すだけでなく、大量の廃棄ロスを発生させてしまいます。

4.攻めのリスクマネジメント
 目の見えるロス  = 廃棄ロス(死に筋商品)
 目の見えないロス = 売上機会のロス

 在庫リスクに囚われすぎると、顧客ニーズが見えなくなり、売上の機会を失います。また、在庫コストの偏在化の歪みが、組織の弱体化をもたらします。
ポイントは、「目の見えないロス」を減らすことです。

●明日から創れる ”投資Money” 

 廃棄コストを新商品の開発に必要な資金として、投資コストに変換するビジネス・モデルをイメージすることがポイントです。

1.生産から販売までの中で発生している、廃棄に必要なコストを明らかにします。
2.廃棄コストをどの時点で誰がどのようにして処理しているかを明らかにします。
3.理論上可能と思われる、換金システム(生産~販売等)をプランニングします。
4.投資マネーを商品開発に投入した場合の市場競争力をシミュレーションします。
5.循環型投資システムに関するプランの具体化をトップが決断します。

⇒ 従来のリサイクル市場(食品)

    (百貨店・スーパー・コンビニ)
         [販 売]
     商品 /    \ 売れ残り商品

     [生 産]  _  [再 生]
   (契約農家)   (加工工場)
        有機肥料

(問題点)付加価値の要素が少なく、循環される投資資金の回収効率が低い

⇒ [循環型] 投資・Moneyで拓く(NEW)マーケット

 付加価値の要素を複数組み合わせることで、新たなマーケットを形成することが可能となり、投資資金の回収効率が高くなります。

       [ 消費トレンド ] ⇔  (顧客満足の変化、商品寿命の変化)
           ↓                  ↓
<< 複数の付加価値を組み合わせて作られた製品 >> ⇒ ” New マーケット”
           ↑                  ↑
       [ 付 加 価 値 ]            (連携 企業)
     ……………………………..        ∥
     . 利便性 : コンビニ・宅配   .        ∥
     . 価格  : 柔軟な価格設定   .        ∥
     . 品質  : 安心・安全・ECO . ⇔ < 新たな投資市場の創出>
     . ブランド: 本物志向・PB商品 .
     . サービス: 接客・顧客情報 .
     . IT  : ネットショップ .
     ……………………………..

●未来からのメッセージを読む力         

 この未曾有の嵐から脱出するためには、トップリーダーが「何を目指すのか」、そのためには、「何を読むのか」を明確に決断することが求められています。
それには、仮説を創る力が必要です。

 この機に消費トレンドの波について、ご一考されてはいかがでしょうか。

 尚、このレポートのPDF版もご参照ください。
  http://homepage3.nifty.com/station-i/report/Station-i-Report-4.pdf


■執筆者プロフィール

ステーテョンアイ
          源田 道雄  ITコンサルタント 

   E-Mail: m_genda@nifty.com
   URL : http://homepage3.nifty.com/station-i/