観光についても考えてみる/松井 宏次

発熱の無さから安全性の高い発光ダイオード(LED)を使って、色による皮膚の治療が進んでいるというニュースが流れていました。
例えば青色光の照射は、活性酸素により皮脂腺の活動を抑えニキビをできにくくし、また、赤色光はアンチエイジングなどに効果があるそうです。
色彩が心理に与える影響はそれなりに認知されてきましたが、色による身体のケアは、どこまで効用が認められ、どのように広がるのでしょうか。

さて、今回は観光について触れてみます。

国土交通省に観光庁が設置されてから、今秋2009年10月で1年が経過しまた。
インバウンド、アウトバウンドそれぞれの取り組みが、どう開始されるか注目された1年でもあったようです。ちなみに、このインバウンド、アウトバウンドという言葉は、観光分野では、もともとは、地域外から地域内への誘客を促進する観光かその逆方向の地域外へ出て行く観光を表す用語でした。近年では、もっぱら海外から日本へ、日本から海外へ、という区分で使われています。

日本の観光客の受け入れ数は、世界的に見て、決して多くはありません。
例えば、公開されている2007年集計では、世界全体の国際観光客到着数は約9億300万人、世界で最もその到着者数が多かった国はフランスで、その数は約8,190万人。続いて、スペイン(約5,920万人)、米国(約5,600万人)、中国(約5,470万人)、イタリア(約4,370万人)、英国(約3,070万人)、ドイツ(約2,440万人)、ウクライナ(約2,310万人)、トルコ(約2,220万人)、メキシコ(約2,140万人)の順だそうです。
これに対し、日本の国際観光客到着数は28位(約835万人)。アジアの島国と、上記のような陸続きで各国が繋がるヨーロッパ各国とを一律で比べるわけには行きませんが、まだまだ伸ばす余地があるとみられています。

2007年に政府が策定した観光庁目標は、下掲の通りでした。インバウンド、アウトバウンド、国内観光、それぞれについて、数値が示されています。この数字のたてかたについて、このレベルでは目標ではなく特に施策をうたずとも実現する予測だろうという批判がありました。先日、国土交通大臣が目標値の上方修正を発言したようですが、様々な見直しが進むのかも知れません。
もっとも、直近では、平成22年の来日外国人旅行者1000万人の達成が危ういという状況ではあるのですが。

 2007年 政府策定の観光庁目標
  1.来日外国人旅行者を平成22年までに年間1000万人に増やす
  2.日本人の海外旅行者を同年までに年間2000万人にする
  3.国内観光旅行消費額を同年度までに年間30兆円に
  4.国内宿泊日数を同年度までに1人平均年間4泊にする
  5.国際会議開催を23年までに5割以上に増やす

観光は、様々な要素で成り立っている産業でもあります。観光庁は、国土交通省の庁として設置されましたが、関連施策は、各省庁に渡ってたてられています。
厚生労働省では、勤労者の休暇の取得促進、旅館施設の環境衛生管理など、農林水産省は、グリーン・ツーリズムや、子ども農山漁村交流など、経済産業省から、サービス産業、コンテンツ産業、産業観光 等への諸施策等々、さまざまです。
1990年頃には、日本は、その将来、外国人労働者が増えることで製造業を中心とした産業を支えるという意見を良く耳にした覚えがあります。製造業の景況が厳しいなか、今は、外国からの旅行客を増やすことで経済活動を活性化できるという考えが、観光立国という名で広がろうとしているようです。

観光といえば、非日常の世界の経験を得られることが基本のひとつ。ただ、それは、あのディズニーランドのような素晴らしく練り上げられた非日常でなくてもいいことを判っておきたいものです。
普段暮らす地域から離れて、少しばかり違う、ちょっと思いがけない経験に出会う。その違いというのは、訪れた先の暮らしや、ものづくりに根づいている。そこには、その地域に暮らす人々の「地域満足度」がある。そうしたことが、これからはますます大事になりそうです。そして、こうしたことは、国内の旅行者にとっても、海外から旅行者にとっても同じくらいに大事なベースのようです。

モノの動きが「流通」として捉えられるとすると、人の動きを作るのが「観光」ともいえます。観光の視点で、ご自身のビジネスを見直してみること、また、新しい観光を生み出すことを考えてみること、そうしたことも、今、試してみる価値があると思います。

参照:http://www.mlit.go.jp/kankocho/


■執筆者プロフィール

 松井 宏次(まつい ひろつぐ)
 ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
 mailto:hiro-matsui@nifty.com