PMOの活用について/西田 則夫

 3年前のこのコラムにて「ユーザーのためのプロジェクトマネジメント」と題して、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の設置のついてふれたことがありました。
設置の目的として、
 ・システム化投資のメリットを出すためのマネジメントを実施し、ベンダ側も巻き込んでプロジェクト全体としての整合性がとれるような運用を可能にする。
 ・システム開発の完了が終わりでなく、それを何年も運用し続けることがユーザーのスコープとなるようにプロジェクトを推進する。
その際、PMOの役割としては、以下のものが想定されるとしました。
(1)品質管理
(2)トラブルプロジェクト支援
(3)人材(PM)の育成
(4)構築のための導入技術管理
(5)調達管理
現在、こういった目的、役割のもとでPMOが十分機能しているかというと現場サイドからいうとはなはだ疑問といわざるをえません。
 前述にありますように、PMOを設置した時は、PM(プロジェクトマネジャ)を支援するものであったわけですが、実態としては、「進捗遅れはないか」「品質に問題はないか」「標準化に準拠して作業をしているか」などPMやプロジェクトチームの作業内容をチェックすることに注力する傾向があります。
 現場のPMにとっては「ユーザからの仕様変更」「納期調整」「コスト圧縮対策」等、ステークホルダー対応に常に苦慮しているのが現状です。こういった状況で、PMOによるチェックに対しての報告に労力をさかれることはある意味耐えがたい場合もあるかもしれません。
 ただ、効果的にPMOを利用して、大規模プロジェクトにおいてPMが気付かない問題点を吸い上げる役目をしたり、問題点の解決のための会議などを推進ししトラブルを事前に回避する事例もあります。
 現在のシステム開発は、複雑なシステム要求、低コスト、短納期といったいつトラブルが発生してもおかしくない状況におかれています。こういった中で、トラブルの予兆をいかに事前につかみ迅速な対応をうてるかでプロジェクト成否が決まります。
 PMやプロジェクトチームのチェックばかりするのでなく、PMOがその予兆をつかむ役割として有機的にプロジェクトの一員として参画できる体制をとることが効果を生む結果となります。
 ここでPMOがプロジェクト状況をタイムリーに把握できる情報を提供できる仕組みをつくることがあげられます。例えば「仕様書が未作成の件数もしくはページ数」「チーム別または個人別の成果物の量」「品質不適合発生の量および発生率」の各推移についてデータ提供しトラブルの予兆をつかみます。
 成果物の個人別の量や不適合率に変化があった場合にはその個人に何がしかの問題点が隠されていると判断できますし、全体に品質の低下傾向があれば、後工程に影響を与える可能性があるため対策をうつ必要が生じます。
 このようなトラブルの予兆をつかんだら対策を確実に実施することが重要です。
その対策を「だれが、いつまでに」実施するか、また、トラブルは再発していないかのフォローも重要です。このような対応が実施されているかの監視機能をPMOの役割のひとつとしてあげることもできます。
 どちらにせよプロジェクトが円滑に推進されることを目的として、PMOをうまく活用することが重要と思われます。


■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio.Nishida@csk.com