●まずはトップが本気になれるか?
・経営者が本気にならないと会社は変わらない。当たり前の理屈だが、どうも簡単には当たり前にならない。会社を、企業を、組織を変えようとしたら、それは大変なことだ。人間は、所詮変わりたくない動物だから、変わることには、まず、拒絶反応が起こる。至極当然な流れなのだ。そこを、抗って変化を起こすのは大変だ。
・だから、「本気」で叫び、「本気」で改革を成し遂げようとしないと、ことは動かない。人間の気持ちを動かし、変えようとするのは、大変な作業だ。会議で集めて号令をかけたら、はい、終わりというものではない。まずは、徹底するのに時間がかかる。組織が大きいと、膨大なエネルギーが要る。後のフォローも必要だ。
・組織が小さいと、レベルが不ぞろいになる。レベルがまちまちだと、でこぼこや温度差が大きく、これはこれで、また別の悩みがある。均一には、なかなかならない。また、最終的に均一にはならない。それには、相当な時間とコストがかかる。始めから温度差があるという、認識に立って物事を考える。
・まして、はたから見ていて経営者本人が「他人事」ではどうにもならない。
「本気」でやってもらわないと最後まで行かない。よくあるケースでは、スローガンまではぶち上げて、後のややこしいことは、下に丸投げする。投げられたほうは、たまったものではない。冗談じゃない、となる。そうなると、最悪だ。
●従業員はトップの「本気度」をよく見ている
・従業員は、職員は経営者の「本気度」を見ている。変化に対し、当初はほとんど様子見する。様子を身ながら、周囲の変化を感じ取る。そして、自分にとって一番有利な動き方を判断する。考えの、判断の基準はどうしても「自分」になる。
冒険をしようとしない。まして、年齢が高くなると、もっとテンポは遅くなる。
・この閉塞感を打ち破るのは、経営者しか出来ない。経営者が本気になり、「本気」の度合いを発信することで、それを周囲に見せる。なにせ、トップが「本気」でやるというからには、これは尋常な事態ではないことを分からす。絶対にやるんだという「意思」を見せることで、周囲の雰囲気は俄然変わるはずだ。
・それを周囲に振って、適当にやってくれとなると、周囲の雰囲気は一気にシラケムードに変わる。冗談じゃない、となる。周囲は、社長が変われば、会社は変わるのに、と期待を持っている。それを裏切ってはいけない。期待に応えないといけない。「わがこと」とどれくらい感じられるかがポイントになる。
・まずは、自分の問題と捉える。ここがボタンの掛け違いが大きい。こうなったのは、誰の責任でもない、自分の責任だと感じられるか。まずは、他人のせいではなく、自分の問題と置き換えられるか。ここが、他人のせいになると、あとのマインドにつながらない。しっかり反省することが大事だ。
●不退転の決意で向かう
・そして、改革に不退転の決意で取り組む。後戻りはしないぞと。過去の過ちは繰り返さないぞ、と。今度は「本気」だと明快に伝える。「本気」だ、「本気」だと100回言っていると、本当に「本気」のエネルギーが、むくむくと湧いてくる。「言霊(ことだま)」という言葉があるくらい、口に出して発信すると、それが本当になる。科学的な根拠はないが。
・何回も繰り返し言い続けると、周囲もだんだん、これは「本気」だと分かってくる。それを見せないといけない。途中でくじけたり、当初からうまくいかないかも知れない、などとエクスキューズを用意したり、退路を作っておくのは良くない。ただし、経営者たる者、常に代替案を持っておく必要はあるが。
・改革のパッション=情熱は伝播ささないといけない。が、しかし、社内の改革が、社長一人の大声で実現するわけではない。そこには、必ず名脇役、名参謀、名ナンバーツーが要る。そういう人材が確保されていないといけない。優秀な人間ほど先が見えるから、見限ってリタイアされることもある。
●トップが変われば組織のマインドが変わる
・そうならないように、とにかく「本気」で「我がこと」であることを常に発信する。社長が昨日と同じことをしている会社は、従業員も、会社自体も昨日と同じだ。そうしていると、そのうちに他社から出し抜かれ、相対的に地盤沈下し、あげくの果てに収益性の悪化を招き、結局衰退の一途をたどることになる。
・トップが変われば組織のマインドが変わることは、プロ野球の監督の交代の例を見るまでもなく、いくたの事例が周囲に転がっている。しかし、自分のこととなると出来ないのが、悲しいかな、現実だ。そこをブレークスルー出来た企業だけが、未来に存在価値があるのだ。そうでない、企業は、残念ながら存続すら危うい。
・いつも、24時間365日「本気」のハイテンションでいることは難しい。適当に弛緩してリラックスすることも必要だ。ただ、そのリラックスは、次のハイテンションの準備のリラックスだ。次の絵が描けていないといけない。このメンタル面の維持が、経営者のひとつの大きな仕事だ。自分でやるしかないのが、少々、しんどいと感じる方もあるだろうが、これは経営者のミッションだ。
株式会社成岡マネジメントオフィスメールマガジン
「社長が変われば会社は変わる~どれくらい「本気」になっているか~」
から一部加筆訂正
■執筆者プロフィール
株式会社成岡マネジメントオフィス 代表取締役 成岡 秀夫
1952年生まれ京都市出身 大手化学繊維メーカーの技術者から転身し、義兄の経営する京都の出版社、印刷会社で取締役。1995年に出版社の破綻を経験し、以降中小企業診断士、高度情報処理技術者の資格を取得。2003年独立し株式会社成岡マネジメントオフィス設立。
(社)中小企業診断協会京都支部常任理事、(協)京都府中小企業診断士会専務理事、京都府中小企業再生支援協議会外部専門家他公職多数。