「プロセス・イノベーション」と「プロダクト・イノベーション」/竹内 肇

  前回(2009.05.25)は、経営環境の厳しい時代には、イノベーション(変革)
が必要であり、イノベーションの実現には、「経営者の決断」と「イノベーショ
ンへの阻害要因の排除」が重要であることをお話しましたが、今回も、「イノベ
ーション」に関連したお話です。

 企業のイノベーションは「プロセス・イノベーション」と「プロダクト・イノ
ベーション」に大別され、今日のような、技術的、社会的な環境変化が激しい時
代は、「プロダクト・イノベーション」が望ましいと言われています。

 「プロセス・イノベーション」とは、ある製品やサービスのプロセス(製造工
程、作業過程など)を変革することで、効率化による時間・原価低減や品質を高
めるなどで競争力を高めるものです。
 それに対して、「プロダクト・イノベーション」とは、これまでとは異なった
独創的・先進的な新たな製品やサービスを生み出すことによって、競争力優位を 
図るものです。

 ちょっと話を中断して、昨今の急速な環境変化を認識していただくために、近
年の出来事を少し振り返ってみましょう。
<1995年>
 阪神淡路大震災において、ライフラインは寸断され、「電話」や普及し始めた
「携帯電話」、今や姿を見ない「ポケベル」が繋がらない状態が続く中で、イン
ターネットを利用した情報発信が行われていることが報じられました。
 まだ、多くの人達がインターネットという概念すらご存じありませんでした。
<1998年>
 インターネット接続の設定が容易となったWindows98の登場で、イン 
ターネット利用が急速に普及し、発売前には数パーセントであったインターネッ 
ト利用率は、2000年末には40%近くまでに上昇しました。
<1999年>
 NTTドコモ携帯電話iモードのサービスが開始されました。今日、小学生で
も当たり前のように使いこなす携帯メールも登場して10年なのです。
<2001年>
 e-Japan戦略が策定されました。当時の首相が、ITを「イット」と読 
んだことを記憶している人は多いと思います。中小企業へのIT利活用は、この 
政策を機会に急速に普及しました。9年程前のことです。

 変化の中に身を置いていると、その変化の大きさに気が付きにくいものですが、
10年ほど前の皆さんのビジネス環境はどのようなものであったかを振り返って、
今日との違いを確認してみてください。
 その他にも、インターネットへの一般電話回線によるアナログ接続から、ISDN、
そして、ADSLやFTTH(光ファイバー)による高速常時接続の普及、楽天などのネ
ット通販やアスクルなどの文具新流通の普及、銀塩写真からデジタルカメラへ、
など、ここ10年ほどの大変化を並び立てるとキリがありません

 続いて、10年後の社会を想像して見て下さい。

 例えば、車は、ガソリン車に代わってハイブリッド車に、さらには電気自動車
に置き換わっているでしょう。
 高速移動体通信の普及によって、車の中でのインターネット利用が進み、イン
ターネット上で提供されている地図を利用することでカーナビ専用機は姿を消し
ているでしょう。
 クラウド・コンピューティングの普及によって、プログラムは、パッケージソ
フトを購入して自パソコンにインストールして使う形態から、事業者が提供する
サーバー上にあるプログラムをインターネットを介して利用する形態が一般的に
なっているでしょう。
 全ての事業者同士が、標準化された仕様によってインターネット上画面の中で
受発注/商取引(EDI)を行い、その取り引き結果は、自動的に財務会計デー 
タとして取り込まれていることでしょう。
 映画は劇場公開と同時にインターネットを通じて自宅で見ることができ、書籍
は電子書籍端末にインターネットからダウンロード、ホームサーバーを介して家
電機器を外部から遠隔操作、屋根瓦は太陽光発電パネルに、白熱電球はLED電
球に(経産省が2012年までに白熱電球廃止方針)と、家庭における生活環境もか 
なり変化していることでしょう。
 私の勝手な想像ですが、いずれも、すでに始まっていることなのです。

 さて、その時、皆さんの会社を取り巻く環境はどの様になっているでしょうか?

 ここで、冒頭の話に戻りますが、「プロセス・イノベーション」によって、事
業の効率化、高品質化を追求することは素晴らしい活動です。これまでの日本企
業の強みの源泉でもありました。
 しかし、一方で、時代の流れを読み、あらたなニーズ(消費者求めるもの)に
応え得る新たな製品やサービスの提供し続けなければ、時代の潮流から取り残さ
れてしまう可能性があります。
 特に、前述のように、技術的進歩と社会環境がめまぐるしく変化している今日
は、潜在的ニーズを掘り起こすための革新的発想による製品やサービスの提供、
すなわち「プロダクト・イノベーション」が重要となってくるのです。

 「プロダクト・イノベーション」実現への取り組みはまたの機会にご紹介した
いと思いますが、まずは、10年後の皆さんの会社の姿、扱っている製品・サー
ビスを想像してみませんか?


■執筆者プロフィール

竹内 肇(タケウチ ハジメ)
E-mail:takeuchi@pangkal.com

◆中小零細企業の経営改革・競争力強化支援、ISO27001/ISMS認証取得支援◆
合資会社パンカル 代表
http://www.pangkal.com/


 

 

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