変化の時代に新たな商機を!!!/玉垣 勲

◇グローバル資本主義の功罪
 一昨年のリーマンショックに始まる金融危機は、昨年には実体経済それも世界経済に同時不況を招来させました。経済のグローバル化、グローバル資本主義は”モンスター”となって、人類は“自由”を謳歌できる度合いを強めた半面で、世界経済の不安定化、所得格差の拡大さらに環境破壊などの副産物を増幅させました。
 そのことによりモンスターの勢い、自由平たく言えば人間の欲望充足(禁断の果実)を制御する必要性に良識ある多くの人々は気づき始めました。豊かさとは何か、幸福とは何かなど価値観への問いかけ、価値の転換も求められています。
国民総幸福量(GNH;Gross National Happiness)なる概念、価値尺度が注目されてもきました。                     

◇経済政策の転換と成長戦略
 昨年は、政治史においても歴史の転換ともなる、これまでの長きにわたる自民党を主軸とする保守政権から、民主党を主体とした政権への交代が実現しました。
この政権は、これまでの産業界優位の政策を転換し、雇用、所得再配分の「生活者重視」の政策を掲げています。
 しかし、デフレ経済の進行からデフレスパイラルを懸念する向きも多く、消費支出の拡大から内需拡大による不況からの脱出の目論みは容易いものではありません。
 本格的な景気回復の萌芽は、民間企業の活力復元を軸にいわゆる中長期的な成長戦略が明確に打ち出され、成長への歩みが軌道に乗った時です。すなわち、環境・エネルギー、健康(医療・介護)、アジア、観光・地域活性化など6分野の成長戦略での新たな需要創出への具体化とその実行によってはじめて、デフレ脱却による景気回復への道が見えてくるものと思います。

◇外需、内需の同時振興
 需要拡大のためにはこれまでの外需への過度の依存は避けなければなりませんが、これから急速な発展が見込めるアジアを主体とした新興国への進出、需要創出にはさらなる創意工夫と果敢な行動力が必要です。これら新興国は所得水準はいまだ低位かつ所得格差は大きく、その国の均衡ある発展を促すためにも、ピラミッドの下部(BOP: Base Of Pyramid)の市場浸透、これら所得層の所得水準向上、需要拡大を図ることに意を用いることで、日本と新興国が将来にわたり相互に利益を享受することとなります。
 「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、内需拡充のためには介護・医療などの福祉分野、自然環境、観光分野、それに日本の優れた技術力の基盤を担う中小企業の振興発展のためのヒト、モノ、カネ、情報の経営資源付帯の地方経済の再生がカギとなります。地方経済の復権は、中小企業の活力増進、そのための地方産業興しと人材の確保・定着、そのための人材教育・育成投資とその支援が欠かせません。
 もとより地方分権の確立のため、地方経済、中小企業の発展の方途は画一的なものではなく、その地方の特性、その企業の独自性を生かす支援施策、主体的運営にあることは言を待ちません。

◇中小企業のIT化推進
 中小企業の活力増進にITツールが威力を発揮することは周知のところです。
IT化推進には経済産業省も力をいれてきましたが、情報処理の世界でも新しいパラダイムが脚光を浴びています。 業務システムにおける新しい動きすなわち、SaaS、クラウドコンピューティングです。クラウドコンピューティングでは、ソフトウエアの提供やデータの保管などを専門会社のコンピュータに任せ、企業側はインターネット経由でそれらのサービスを「利用する」ことです、またイン
ターネットを通じてソフトウエアが提供される方式を総称して、SaaS(サース)と呼んでいます。
 クラウドコンピューティングのメリットは、第一に多くにサービスが月額料金制のため。初期投資が低く抑えられること、第二にインタネットにつながるパソコンがあれば社内に特別な設備は不要であり、使いたいシステムを「試せる」ことにあります。また、大事な情報をインタネット上に流す上でのセキュリティ保全のためのICT(情報通信技術)活用サービスとしてVPN(Virtual Private Network)があります。このクラウドコンピューティングの利用により、中小企業のIT化促進それによる経営革新への寄与度は高まるものと思います。

◇全員経営による経営力の強化
 底流にある外部環境は依然としてきびしいものがあります。さらに時代、環境が大きく変わってきていること、変わろうとしていることはわかるが、時代・環境の変化は前人未踏の方向、分野だけに変化への羅針盤、舵取りは容易ではありません。
 しかし、本来、企業は変化の時を新たなビジネスチャンス到来と捉えて、前向き、プラス思考でことに処すものです。考えようによっては、環境が苦境の時にこそ、商品・サービスの改良、新たな商品開発が成り、既存市場の掘り起こしや新規市場の開拓の芽が出、商機が生まれるものです。その芽、商機を見出し、育み実らせるためには、経営者、従業員を問わず事業に所属する従事者一人ひとりが、日々を一歩前進のために持ち場持ち場でがんばりたいものです。
 さらに加えてその努力、がんばりを将来的に実り大きな成果に結びつけるためには、お互いが協同参画・行動の全員経営のもとに、自企業独自の企業風土・文化を共有し、心も新たに未来に明るくはばたく夢を描き、その夢の実現に向かって果敢に挑戦する初年度の年にしたいものです。


■執筆者プロフィール

玉垣 勲

IT経営代表
中小企業診断士 社会保険労務士 通訳案内士(英語) ファイナンシャル・プランナー

メールアドレス;ANB51755@nifty.com