数年前からSaaS研究会、J-SaaS研修会含めて、色々と中小企業向けのIT化として対応しているが、最近少しずつ、SaaSサービスを活用しようとする企業が出てきた。
SaaSは、色々な業務機能を月額費用の形で提供するオンラインサービスである。企業にとっては費用の低減、運用の手間の簡素化などが図られる。しかし、その導入は中々進んでいなかった。
・月額レベルであれ、月数万円では、チョット高い。
・サービスの内容がよく分からない。
・上手く使いこなせれるか?不明、自信がない。
・とりあえず、現状のやり方(人的な処理、既設システムで業務は進んでいる等)で支障がない。
ないない尽くしであった。
だが、サービス提供側の価格の低減化、対応力強化、ユーザ側の意識変化などで、私の関係している企業数社でも導入を開始している。その内の1社は生産管理業務への適用も進めており、従来の「営業支援、顧客管理、情報共有」業務への適用とは違う活用も出ている。
ある雑誌の「SaaS/ASP利用実態調査」でも、回答企業1679件のうち約2割が使用中、検討中とあわせると約4割とのこと。大企業も含めての調査であり、中小企業の状況を反映しているとは言えないが、確実にSaaSサービスは浸透している。
□SaaSとしてのサービスアップ
小規模事業者向けとして経済産業省が力を入れているJ-SaaSサービス(http://www.j-saas.jp)は、加入者が増えていくとともにメニューも増加しているが、各ベンダーからの提供サービスも増えている。
サイボウズの「かんたんSaaS」は、先ほどの中小企業経営者の悩み解決として今年からサービスインとのこと。また、受発注EDIについても、中小企業での活用推進の1つとして業界レベルでSaaS化を進めており、期待が持てる。
更に最近感じるのは、生産管理などSaaS化し難いといわれている業務サービスまでITベンダーが提供し始めていることである。
□更なるサービスアップ化
様々なSaaSサービスが拡大すると供に、その相互連携と既存のアプリサービスのデータ、機能を活かすためのオンラインでの連携化が進んでいる。
1)Sky On Demand
奉行シリーズとSalesforceとのデータ連携、サイボウズガルーンとSalesforceCRM連携など
2)MIJS(http://www.mijs.jp/about_mijs/)によるアプリケーション連携
国産ソフトウェアベンダーの集まりであるMIJSが各サービス間の連携を本格化しつつある。
3)Boomi on Demand
アメリカでのサービスであるが、SaaSアプリケーション間、SaaSアプリケーションと従来基幹システム間での接続サービスを実現。統合プロセスの定義にはコーディング作業は不要。
他にも色々とある。また、業務向けアプリケーションの他社で開発したものを活用していく動きが盛んとなっている。開発費用の低減、運用の手軽さから今後の拡大が見込まれる。
1)SalesforceのAppExchange
オンデマンドアプリケーションのマーケットプレイス。開発者は作成したアプリケーションを公開し、ユーザーは数回のクリックでそのアプリケーションをインストールできる。
2)ZohoのWebオフィススイート
3)Coghead
コードを書かずにアプリケーションを作ることができる。基本は、ドラッグ&ドロップで画面を定義し、必要機能を作る。
4)Facebookでは、学生中心に自分の開発したアプリの活用を図る。
中小企業経営者も、開発の専門メンバーではなくてこのようなサービス導入をある程度まとめられる人がいれば、安くて高機能の業務サービスは可能ではないのだろうか。また、我々のようなITコーディネータが以下のような支援を行うことも更なる進展の一歩かもしれない。
・導入検討支援
業務見直しを含め、SaaS導入を想定した情報化への最適化検討
・業務プロセスの設計支援
各業務をSaaSサービス化するためのプロセス分析と設計
・既存システムとの連携支援
データ移行、データ連携、既存アプリケーションとの連携、プロセス実現に合わせたアプリの組み合わせの設計
・導入、定着支援
カスタマイズ支援、ユーザ教育 など
SaaSサービスの導入は、中小企業での更なるIT活用化へのトリガーでもあり、先にお話した既に取り組んでいる企業では、自社の見直し、企業力アップに上手く活用している。現在対応している京都、滋賀の企業を含めて、SaaSサービスの活用企業の更なる拡大を目指して行きたい。
■執筆者プロフィール
小久保 弘
ITコーディネータとして、生産力強化、営業力強化について、
京都、滋賀での研究会、セミナー、個別支援をしています。