地下鉄駅ナカビジネス~交通事業ルネサンスの歩み~/藤井 健志

 仕事で毎月SANSA右京に足を運ぶのですが、太秦天神川の改札を出ると京野菜が並べられていて最初は何でこんな所にとびっくりしました。最近京都市でも、地下鉄の駅の改札を出ると京野菜の販売をしていたり、スイーツの販売をしていたりするのを目にするようになりました。

■京都市地下鉄事業が「経営健全化団体」に
 地下鉄の駅構内に商業施設を誘致するいわゆる「駅ナカビジネス」というものが、2008年から京都市地下鉄でもようやく導入されました。この年京都市の地下鉄事業が新しくできた財政健全化法の国の基準(資金不足比率が20%)を大幅に上回る資金不足になり、「経営健全化団体」となりました。そんな中で、「京都市交通事業ルネサンスプラン」のもとアクションプログラムを作成し、人件費の削減をはじめ、さまざまな取り組みが行われてきました。

■駅ナカビジネスの導入
 この駅ナカビジネスもその一環として、それまで防災面から許可されなかった商業施設の誘致も行われるようになりました。いまや現金自動出入機(ATM)や宝くじ販売所なども並んでいます。平成21年から四条駅、烏丸駅に入ったベーカリーショップなども予想以上の売上で絶好調のようです。(駅ナカビジネス:平成19年度の決算では収入約5千万円。20年度約1億見込み。 目標:平成
25年までに年間5億円)

■市営地下鉄オリジナルスイーツの取り組み
 昨年11月には“京都市市営地下鉄オリジナルスイーツ”として「水尾の柚子ちーず 麿のおきにいり」という商品が発売されました。
駅ナカビジネスの取り組みとして、地下鉄の収益強化と地場産業の活性化を目的に、オリジナルスイーツの開発事業者の募集がまず行われました。
条件は地下鉄の駅でのみ販売される商品であること、などの制約がありましたが、10点の応募スイーツの中から4点が選ばれ、今度はパッケージの学生デザインコンペが行われました。
市内のデザイン系学生を対象にパッケージデザインを募集し、学生が提案したデザインとスイーツとが最もマッチングしたものとして選ばれたのが、上記の「水尾の柚子ちーず 麿のお気に入り」です。
産学公の連携の結果として生まれました。1個150円、箱入りは5個900円です。結構評判もよく、出足好調のようです。ちょっと小腹の空いた時にでも一度味わってみてください。地元京都の地下鉄の赤字解消に少しでもお力を。

■四条駅リニューアル
 また地下鉄四条駅のリニューアル工事がそろそろ着工されます。(※この原稿がアップされるときにはもう着工しているかも)
国の追加経済対策で盛り込まれた交付金(地域活性化・経済危機対策臨時交付金の一部)を活用し、この事業は行われます。
現在の改札位置を南に移動し地下鉄階段側に近づけ、阪急電車と繋ぐ通路部分を拡大して、店舗用スペースが拡げられます。
また現在管理スペースとして使われているもう1層下の階にも店舗スペースが設けられ、駅ナカビジネスとしての増収策が計画されています。
6月頃には各テナントショップ出そろうのでしょうか。

■河原町界隈から京都駅周辺への集客力のシフト
 四条河原町から阪急百貨店が撤退することが決まり、ビブレもなくなり、河原町周辺はちょっと寂しくなってきそうな雰囲気が漂ってきました。
一方、5月末には、一時頓挫しておりました京都駅南の商業施設が、イオンモールの委託運営でオープンする予定です。
近鉄名店街「みやこみち」を抜けた所を少し西に足を運ぶと、3月開校のの駿台予備校京都駅前校の真新しい建物の向こうに、道を挟んで2つの棟が空中回廊で繋がれています。
イオンモールHANAのような集客力を発揮し、ますます京都駅周辺のポテンシャルが高くなるのでしょうか。

■市民の足をみんなで守ろう
 京都市地下鉄(高速鉄道事業)は平成20年度で経常損益が△144億16百万円。1日平均3950万円の赤字を出しながら運行していると言う計算になります。地下鉄東西線工事の予想外の経費増が一番足をひっぱているようです。
いずれにしても経営の健全化とお客様増加が肝要です。例えば、1日1車両1人多く乗っていただければ、1日当たり4千人増で、年間2.8億円の増収となります。
 筆者は広告ビジネスにかかわっているので、京都市交通局とのお付き合いも長く、局職員の方々が懸命に知恵を絞って、累積赤字3042億円の解消に向けてアクションを起こされていることに一市民としても少しでも力になれればと思って活動しています。


■執筆者プロフィール

藤井健志
一級建築士、中小企業診断士、ITコーディネータ
(勤務先)(株)日商社 プロジェクト開発部
fujii@nisshosha.co.jp