ロングセラー商品から学ぶこと/中川 普巳重

  最近我が家では2才9ヶ月になる息子のためにお菓子を買う機会が増えました。
スーパーのお菓子売り場で選ぶものは自分が子供の頃に食べた懐かしいお菓子ば
かりです。「チロルチョコ」、「アポロチョコレート」、「マーブルチョコレー
ト」、「チョコベビー」、「いちごミルク(アメ)」。これらの銘柄で育った私、
あれからゆうに30年は過ぎているというのに、スーパーのお菓子売り場にしっ
かりと並び今も変わらない味を提供しているロングセラー菓子に息子もすっかり
虜になっています。福岡育ちの私にとって特に思い入れのあるのが「チロルチョ
コ」、今日は「松尾製菓のチロル」から勝手に学んでみたいと思います。
■チロルチョコの誕生
 チロルチョコは福岡県田川市の松尾製菓株式会社の商品だってご存知ですか?
子供のころ10円玉を握りしめて駄菓子屋に買いに行った「チロルチョコ」は3
つ山の形をして中にコーヒーヌガーの入ったチョコレート。子供には結構食べ応
えもあっておいしくて大好きだったお菓子のひとつです。始まりは1962(昭
和37)年、主に西日本の駄菓子屋で発売されたのだとか。
 コンセプト:子供たちがお小遣いで買えるチョコ
 商品:3つ山の形をして中にコーヒーヌガーの入ったチョコレート
 価格:10円
 チャネル:駄菓子屋、西日本
 プロモーション:オーストラリアのチロル地方をイメージしたチロルハットの
         イラスト入りパッケージ
■原点回帰
 1973(昭和48)年、第一次オイルショックが日本経済を直撃、トイレッ
トペーパーや砂糖を買うためにスーパーで母と一緒に並んだ記憶があるこの頃、
原材料費の上昇に伴って「チロルチョコ」は20円に値上げされました。そして
数年後には30円に!10円では買えなくなってしまったチロルチョコ・・・子
供心にショックでした。
 環境変化:オイルショックによる物価高騰
 顧客価値の変化:手軽に10円で買えるチョコレート
 ⇒価格が30円に値上がりし「子供たちがお子遣いで買えるチョコ」ではなく
 なってしまった
 原点回帰:子供にとって10円で買えることが重要
 商品:1つ山の正方形に変更し中には定番のコーヒーヌガー
 価格:10円
 チャネル:東日本へ販路拡大、駄菓子屋だけでなくスーパーにも
 プロモーション:カラフルな「TIROL」のロゴ
■商品展開
 その後、「チロルチョコ」には仲間が増え、年に数種類の新商品が市場投入さ
れ、「アーモンド」、「BIS(ビスケット)」、「ミルク」など今も残る定番
商品が生み出されました。これらは今もスーパーを中心に展開されている多種類
のチロルチョコが入った「バラエティパック」にも入っています。
■コンビニへ進出
 コンセプト:次はどんなチロルチョコ?と消費者がワクワクする
 商品:コンビニ販売に向けてバーコードが印刷できるサイズへと一回り大きく
   なる。
    「きなこもち」でブームとなり、次々と面白い商品を展開
    「クリスマスチョコレート」(冬季限定パック)
    「ビッグチロル」(バレンタイン限定)
    「復刻版ミルクヌガー」(3つ山の形、パッケージも従来のもの)など
     催事企画品も多数展開、今では150種類もの味があるそうです。
 価格:10円
 チャネル:全国展開、スーパー、コンビニなど
 プロモーション:子供だけでなく大人にも、消費者が予想し得ない面白さを追
         求、次々と新商品を展開
■オリジナルチョコも
 インターネット限定商品として展開されているのが「DECOチョコ」。自分
の好きな写真や画像をチロルチョコのパッケージにプリントできる有料サービス
です。贈答用、個人の記念用と利用されているようで送料なども含めて1個70
円程度、1セット45個。価格はちょっと高めだけれどナショナルブランドのお
菓子がオリジナルパッケージで手軽に作れるというのは新たな顧客価値なのでは
ないでしょうか。

時代の流れに伴い、「誰に」「何を」「どのように」という「事業領域」を変え
てきた松尾製菓株式会社。「チロルチョコ」という10円から始まった子供向け
のお菓子はいまや子供から大人までを巻き込んだブームとなっているように思い
ます。
商品:10円の原点を大切に、ワクワク感を提供するチョコレート菓子
   150種類もの味、予想もし得ない商品、催事企画品、オリジナル品
価格:10円、30円ぐらい~(主にコンビニ展開品)
   250円ぐらい~(催事企画品)
チャネル:全国展開、スーパー、コンビニ、ネットなど
プロモーション:パッケージにも注力し企画・販売部門を分社化しチロルチョコ
        株式会社(東京)を設立

選ばれ続けるには理由があると思います。ロングセラーはロングセラーであり続
けるためのキーワードがあるのだと思います。「原点」を大切にしながら時代の
流れを読み「変化」している、その姿に企業経営にとって大切なことを学べる気
がしています。
皆さんもご自身の好きなものをテーマにその事業展開のキーワードを探ってみま
せんか?なかなか楽しいですよ。


■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
 中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、
 キャリア・デベロップメント・アドバイザー
 Eメール  fumie-na@k4.dion.ne.jp


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