管理会計の導入のススメ/間宮 達二

 日本銀行京都支店平成22年3月11日発表の管内金融経済概要より京都の景況を見てみると、厳しい状況が続いているものの、内外の政策効果等から緩やかに持ち直しているとの発表をしています。
 個別の内容をみていくと、海外頼みの部分では、生産が海外向けを中心に増加を続け、観光も中国をはじめとするアジアからの団体客の増加などからやや持ち直しています。個人消費については、個人消費は厳しい雇用・所得環境を背景に全体として弱めの動きが続いており、京都の6百貨店平均でも21年度より前年比マイナスが継続しています。また、耐久消費財については政策効果等から持ち直しています。一方、設備投資は大幅に減少し、低水準で推移しています。住宅投資は減少しているほか、公共投資は増加した後、横ばいで推移しています。この間、雇用は悪化傾向に歯止めがかかりつつあるものの、厳しい状態が続いています。
 私の身近でも、製造業は少し持ち直してきたものの、小売業については厳しく、特に繊維関係についての前年比売上減少割合が大きいように感じております。

 このような厳しい景況の中、人件費について企業負担増の制度改正があります、まず多くの中小企業が加入する全国健康保険協会の京都支部の健康保険料率が22年3月より現行の8.19%~9.33%へ増加します。また、22年4月より労働基準法が改正され、月間残業時間が60時間を越えた部分に対して割増賃金率が現行の25%より50%に引き上げられます。この4月から割増賃金率の変更が実施されるのは大企業限定ですが、3年以内にすべての企業に対して適用されることになっています。

 現行政府の明確な成長戦略が見えてこない中、企業の取り巻く環境はますます厳しさを増すばかりです。財務体質が比較的弱い企業にとっては、自社の財務状況を的確に把握しておかなければ、すぐに資金繰りが悪化し事業継続ができない状況に陥ります。

 企業にとって重要な機能は数多くありますが、ここでは財務の機能を向上させる方法の代表的なものとして、管理会計の導入をお勧めいたします。それでは、管理会計とは何でしょうか、以下一般的に皆様がよく触れておられる制度会計との比較し記載いたします。

★制度会計とは
 企業外部の利害関係者に対する会計情報の提供を目的とする会計で、法規制(会社法や法人税法)の枠組みの中で行われる会計をいいます。計算の正確性が求められます。
★管理会計とは
 法令や会計基準の制約を受けず、自由な発想に基づく会計処理が可能で、原価把握や種々の分析に役立つ情報を得るために行われる会計をいいます。情報の迅速性が求められます。

 損益計算書においては、売上・原価・利益は会社組織全体の過去の業績結果を表していますが、これらを見るだけでは、自社の詳細な財務状況は正確に捉えられません。そこで重要となるのが管理会計です。

 管理会計の代表的な例は、部門別業績管理や現場データ管理、資金繰り表などですが、まずは、営業部や財務部などにある様々な数量データの中で、どれが有益な情報なのかを検討する必要があります。ターゲットが決定すれば、そのデータから、自社の正しい業績管理、業績評価をすることが可能となるのです。

 是非皆様も管理会計を通じ、原価管理や財務人材の育成、PDCAサイクルの確立など、さまざまな自社の財務の課題を解決することで厳しい景況の中での財務体質強化に取り組まれてはいかがですか。


■執筆者プロフィール

氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり経営戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com
HPアドレス  http://www.hikari-advisor.com
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