ITコーディネータ資格ができた2001年度辺りから、中小企業のIT経営を推進する施策として「ITSSP事業」や「IT経営応援隊事業」が実施され、昨年度においては対象分野を拡大した「地域イノベーションパートナーシップ事業」が展開されてきました。これら一連の事業では、啓蒙的なセミナーや成功事例発表会を入口とし、経営者研修会やCIO養成研修会もしくは成熟度診断という第2段階レベルの教育・人材養成を行い、更に一歩進めたRFP作成支援や訪問コンサルティングを実施しました。
今年度に実施される中小企業支援施策では、これまでのIT経営の観点より、さらに経営者側に立ったカテゴリで、(1)新事業展開、(2)創業・再チャレンジ、(3)事業承継、(4)ものづくり、(5)新たな経営手法への取組みといった内容の中小企業応援センター事業(中小企業経営支援体制連携強化事業)を全国84か所に設置して専門家派遣等を含むワンストップサービスを提供することになっています。また、事業規模は小さくなりますが、地域競争力強化事業(地域新成長産業創出促進事業)として、各地域ブロック毎に成長領域を重点的に支援し、地域が有する強みや特徴に即した先導的事業を促進する施策も実施されます。
中小企業応援センター事業では、地域の支援機関である商工会議所や商工会、府県や政令指定都市の運営する中小企業支援機関、また地域金融機関やNPO及び大学等の中小企業支援能力を高めることにより中小企業の取組を応援する予定ですが、その具体的な内容は4月下旬頃には明確になっているでしょう。従来からこれらの支援機関は専門家派遣制度を実施することが多かったのですが、この事業において、事業承継、販路開拓、技術指導、資金調達、知的資産経営、マーケティング、ブランディング、労務管理等に対する専門家派遣が大幅に強化されます。なお、昨年の政権交代以降の事業仕訳の潮流もあり、支援企業や支援機関の顧客満足度の測定や事業実績評価もシッカリと実施されることになっています。
一方、地域競争力強化事業は全国一律ではなく、各地域ブロックごとに何を重点的に育成支援するかを決めて実施することになります。そのような分野の例としては、次世代自動車関連産業、次世代航空機関連産業、医療福祉機器産業農商工連携による地域ブランド化、ソーシャルビジネス、低炭素社会の形成促進、情報通信技術の利活用促進、高付加価値サービス促進、地域コンテンツの海外発信力強化等が挙げられています。このような分野における連携体制の構築や試行的取組等の新たな事業活動やイノベーション創出の先導事業を展開するようです。
上記2つの事業を見ても分かるように、従来のIT経営の推進より、企業本来の経済活動を高度に連携させる取組や新たなイノベーションに繋がるような企業の取組を推進する中に、IT経営が取り込まれて事業成果に貢献するといった自然な姿が見えています。一昨年までとは明らかに違うIT利活用の高度化であり、これに取組む専門家の能力強化が重要になってきたと言えます。
(NPO)ITコーディネータ京都では、今年度に独自のIT経営支援を検討し、依然として啓蒙的なステージにいる中小企業の底上げを実施します。また、IT化を推進することと車の両輪の関係にある情報セキュリティの普及活動も検討していきます。もちろん、上記事業も機会を掴んで実施しますので、上記事業の対象領域をテーマにした支援、経営戦略の再構築やITの利活用に関してサポートが必要な際は、いつでもお気軽にITコーディネータ京都にお申し付けください。
(NPO)ITコーディネータ京都 E-Mail:office@itc-kyoto.jp
■執筆者プロフィール
中村久吉(なかむらひさよし)
ITコーディネータ、中小企業診断士、社会保険労務士
ISO27001主任審査員、プライバシーマーク主任審査員
e-mail: ohnakamura@gmail.com