個人事業か、法人か~起業をする場合~/小林 由香

 現在の会社法では、「資本金1円、取締役1名でも株式会社が作れる」という
ように平成18年の会社法施行前に比べて法人設立が容易になりました。
 事業を起こして数年目の方や、これから起業をしようとされている方から「法
人化した方がいいでしょうか。それとも個人事業のほうがいいでしょうか」とい
うご質問をよくいただきます。
 法人がいいのか、個人事業がいいのか。それは、メリットとデメリットが複数
あり、事業の内容や方向性、経営者の考え方が大きく異なるため、一様にどちら
かという答えはすぐには出来ません。
 法人化をすることのメリット・デメリットの例をあげてみます。

■法人化のメリット

○消費税が設立後2年間は免除されることがあります。(資本金1000万円未
 満の会社の場合)

○次の理由により、所得にかかる税金(法人税と所得税の合計)が、個人事業主
 として申告するより減少できる場合があります。
 1.代表者に役員報酬(給与)を支払うことにより、給与所得控除の適用がで
  きる。(オーナー会社の場合は、一定の制限あり)
 2.欠損金の繰越控除が7年間できる。(個人は3年間)
 3.法人契約の生命保険料等が最大100%経費に出来る。(個人は年間10
  万円の所得控除が限度)
 4.代表者への退職金の支給が可能になる。

○個人事業は12月末決算であり、翌年の3月15日までに確定申告を行うが、
 会社は、計算期間(決算日)を自由に決定する事ができるため必ずしも年度末
 の忙しいときに決算・税務申告をする必要がない。

○会計を個人ときっちりと区分して行うため、財務諸表の信用度が上る。

○法人でないと新規取引をできないケースもあり、事業拡大のチャンスが広がる。

■法人化のデメリット

○赤字の場合、法人税はかかりませんが、法人住民税の均等割り(資本金1,0
 00万円以下の法人で7万円から8万円)は、赤字でもかかります。

○個人事業(白色申告)に比べ帳簿等の整備が重要です。但し、個人で青色申告
 をしている場合には、あまり変わりません。

○法人の設立登記に費用がかかります。(30万円程度)

○交際費の一部は、経費になりません。(年間の支払額の1割が経費から除かれ
 ます。年間600万円を超えた部分は経費から除かれます。資本金1億円超の
 場合は全額経費から除かれます。)

○法人の場合は社会保険に加入しなければなりません。(個人事業の場合5名未
 満の場合は任意加入です。)

○法人を設立する際、個人所有の事業用資産等を法人へ譲渡しますと、個人側で、
 所得税や消費税が発生する場合があります。

 主なメリットは消費税が2年間免除となること、代表者へ役員報酬(給与)支
給することによる給与所得控除(課税所得の減少)により節税が図れることです。
 法人税と、所得税の税率構造の違いにより所得税・住民税・事業税が減る場合
もあります。(年間所得800万円以上の場合)
 法人設立が容易になった分、以前ほどの効果は期待できないものの、取引先か
らの信用度が上ります。
 また、法人化を事業の拡大への意思表明と考えると、代表者のみならず、従業
員のモチベーションを上げることが出来ます。
 最近は、以前に比べ節税目的よりもこちらのほうが、ウェイトが高いような気
がします。
 容易に法人の設立が出来るため、メリット・デメリットの検討を十分に行う前
に登記手続きをされるケースも見られます。
 設立を検討される場合は、取締役会などの機関設計・株主構成も後々のことも
考える必要があります。
 会社法や、税務・会計の専門家にご相談されることをお勧めいたします。 


■執筆者プロフィール

 小林由香(Kobayashi Yuka)
 小林税理士事務所 所長
 税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
 「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。

公式Facebookページはこちらから

<いいね>をクリック!