最近の新聞紙上では、景気に関する指標が良くなってきており、景気が回復しつつあるように報じられています。本当にそうなのかと地域の事業所を回っていて感じています。昨年から廃業や倒産が数件あり、何回か事業所を訪問したりしておりました。実感としてすべての業種が良くありません。
製造業では、生産が中国などに移っており、国内でのパイが減っています。その減ってきたパイをめぐって競争が激しくなり、低価格競争になっています。ある事業所では、仕事は忙しく残業もしているが、売上が減ったとのことです。発注は小ロットになり、注文のサイクルが長くなっています。
卸売業では、取引先の事業所の回復が遅れているため、やはり、売上が減少しています。
小売業では、安い大型店に顧客が流れているようです。
零細事業所では、代表者の給与がだせず、年金で生活を補っているところもあります。
中小零細事業所は社長の経営努力が必要で、信念を持って積極的に取り組もうとする意志が最も重要です。次に小さいながらも人との縁を重視し経営している会社を紹介します。
(1)婦人服の卸売業
生産は中国で行い、販売先はデパートに卸している。社長は76歳。前社長が亡くなった後、継いでおられる。前社長(ご主人)が難病にかかり、輸血を必要とした。その時、取引銀行や取引先の多くの方に輸血していただいた。前社長は27年間輸血を受けられたそうである。現社長はその時の恩を忘れず、相手先のことを考えて経営されています。銀行からも借入をして欲しいといわれ、必要ないが借入をしたこともあったとのことです。デパートのバイヤーさんに対しては、その人の立場を尊重してあげていたそうです。ですから、勤務先のデパートが撤退して、別の店に勤務した時、是非、納めて欲しいと来られたそうです。また、いつも利用していた婦人服のブランドショップの店長が、別の店に移った時も、わざわざ足をのばして購入しにいかれたそうです。
現社長は人のご縁で会社を続けてこられたとおっしゃっておられますが、前社長が輸血をうけられていたことを、今もその恩を忘れず、利他の精神で経営されておられるから、関係した人々が離れず、着実に会社が継続されていると思います。
(2)建築用資材の金物製造販売業
当社は、襖や建具、集合住宅用金物、民芸家具や寺社・仏間用の装飾金物の製造販売業である。最近では、建築金物検索システムを搭載したインテリア・建築金物総合専門通販サイト「ビドーパル」を立ち上げられました。
先代の社長は仁義に厚く、頼ってこられたら、借金してでも助けられたとのことです。現社長は、先代社長から人との縁を大切にすることを学び実践してこられました。ある雑誌のインタビューに応じて、「自分が信じた道を進んで行くと、応援してくれる人も自然と現れてくれるものです。ほんと不思議に・・・。そして、応援してくれた恩人には礼を尽くすことを絶対に忘れないことです。」
と述べられています。私がお会いした時も、人を裏切るようなことをしてはいけない。それは、自分にかえってくると強くおっしゃいました。
また、社長は、現在は親が子供に人生など様々なことを話す機会が減っていると苦慮されておられます。社長はひとつの試みとして、「五時の社長室」というネットを通じてのメッセージを開設されました。週1回、10分程度の話しをされておられ、137話まで継続されています。
URL:http://www.shachoshitsu.com/
以上の2社に共通しているのは、関係する人々との縁を大切にし、誠実に接してこられてたことです。経営の本質とはこれではないかと考えます。
■執筆者プロフィール
クリッジナリティー 代表 米田 良夫
中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ。
電話番号:0745-77-0722
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