実感がわかない、数字で見る最近の景気の回復報道/松山 考志

 鳩山政権から菅政権が誕生し、目下我々が気になるところは脱デフレのための
具体的な政策です。日本型デフレは、自民党の橋本政権時代の2002年に始ま
り、物価下落以上のスピードで所得が下がるため消費が細り、この間の雇用は非
正規が主力となり給与水準が下がり続けました。2008年9月のリーマン・シ
ョックで世界経済がマイナス成長に転じ、再び本格的なデフレの波が押し寄せま
したが、鳩山政権はようやく昨年11月の月例経済報告で「日本経済は緩やかな
デフレ状況にある」と宣言し、対策に本腰を入れ始めたばかりです。政府は5月
24日に5月の月例経済報告を発表し、景気の基調判断について「着実に持ち直
してきている」とし、2か月連続で据え置く発表をしました。しかしながら、私
たちには実感がわかないのが現実だと思います。以下、数字で最近の景気動向を
見てみたいと思います。

■「百貨店に底入れ感」
 先日、大手百貨店4社が発表した5月の既存店売上高(速報値)は、高島屋と
大丸松坂屋百貨店が前年同月比プラスに転じました。前年を上回るのはそれぞれ、
2年2カ月と3カ月ぶりです。伊勢丹と三越は前年を下回りましたが、4月から
減少幅は縮小しました。要因としては、例年に比べ好天に恵まれ、ブラウスなど
衣料品が好調だったということです。売上高は高島屋が0.5%増、大丸松坂屋百
貨店が0.9%増です。両社とも初夏向けの婦人服が伸びたほか、「外商顧客向け
の高級時計の催事が好調だった」というコメントです(大丸松坂屋)。最大手の
三越伊勢丹ホールディングス傘下の伊勢丹は0.1%減(4月は4.2%減)、三越は
5.3%減(同13.0%減)でしたが、それぞれ旗艦店である伊勢丹新宿本店が22カ
月ぶり、三越日本橋本店が25カ月ぶりに前年比プラスに転じました。5月は明る
い表情が戻ってきた百貨店業界ですが、今後の見通しは慎重な見方も根強いよう
です。5月のプラス浮上は、前年同月が新型インフルエンザの影響で低水準だっ
た反動との見方もあり、「6月以降は予断を許さない」との声が聞こえてきてい
ます。加えて、欧州通貨危機などをきっかけに株価が下がり、盛り上がりつつあ
った富裕層の消費マインドを冷やす恐れもあります。高額商品が主体の百貨店業
界は、2009年の全国売上高は13年連続でマイナス、高額品ほど落ち込みが激しく、
全体の減少率は初の2桁減となり、依然厳しい状況にかわりはありません。こう
した中、高島屋は4月に百貨店初となる約500坪のメガストア「ユニクロ新宿高
島屋店」をオープンし、消費者の低価格志向に応える取り組みをはじめたことが
話題となりました。

■「2009年度の休廃業・解散は約2万7000件、倒産件数の2倍発生」
 1月に帝国データバンクが発表した2009年の全国企業倒産集計によると、倒産
件数は前年比4.9%増の1万3306件で、3年連続で増加しました。不況型倒産は1
万833件、同8.4%増となり、構成比も81.4%と全体の8割を初めて超えました。
 一方で、帝国データバンクが5月に発表した休廃業・解散動向調査によると、
2009 年度の休廃業・解散件数は約2 万7000 件判明しています。2009年度の倒産
件数・約1万3000件と合わせ、判明分だけでも「年間4万社」近い事業者が何ら
かの理由で企業活動の停止に追い込まれた計算です。倒産という明確な形では定
義されない “企業の消滅”も、水面下で進行しています。企業活動を停止し、
すでに実体が失われた状態を指す「休眠」や「廃業」、企業が登記上も消滅した
「解散」などで、調査結果からは、倒産を上回る深刻な状況が浮き彫りとなって
います。

■「消費者物価指数、14カ月連続の下落-4月」
 デフレの不況が続く中、4月30日に発表された2009年度の全国消費者物価
指数(05年=100)は、前年度比1.6%下落の100.0、5年ぶりのマイナスとなり、
これを裏付けるものとなりました。下落率は01年度と02年度の0.8%を大きく上
回り、比較可能な1971年度以降で最大でした。3月の指数も前年同月比1.2%下落
の99.5で、13カ月連続のマイナスとなり、先行指標となる4月の東京都区部CP
I(中旬速報値)は1.9%減となり、回復の兆しが見えない状況です。デフレ不
況の勝ち組代表企業と言えば、ユニクロ、ニトリ、日本マクドナルドですが、そ
の業績は明暗が分かれる結果となりました。3月のユニクロの既存店売上は前年
同月比16.4%減、4月は12.4%減となったために、その“変調”に注目が集まり
ました。節約疲れで消費者の低価格志向が一巡してきたという見方も出てきてい
ますが、今期に入ってからもニトリ(3月以降3ヶ月連続増、5月10%増、2月
決算)と日本マクドナルド(1月以降4ヶ月連続増、4月0.3%増、客数は9ヶ
月連続増、12月決算)は好調を維持、その他では餃子の王将もあいかわらずの好
調が続いています(5月直営店ベース24.1%増、22ヶ月連続増)。不景気が長期
化する中で強まる消費者の低価格志向が底堅いことを裏付けていると思います。
 ギリシャ発の信用不安は一向におさまる気配はなく、日本を含む先進国の財政
リスクを市場が注目するようになってきていると聞きます。ニューヨーク株式市
場も6月4日に4ヶ月振りの安値を付けるなど、世界的な金融市場の混乱が続いて
います。政府は、景気の二番底を是非が非でも回避しなければならない状況であ
るのに、危機感が薄いと感じざるを得ません。自分の身は自分で守ると言います
が、今一度強く危機意識を持ち、気を引き締めて現状に対処していく必要がある
と思います。


■執筆者プロフィール

 松山 考志

 セキュリティパッケージソフトウェア開発会社勤務。
 東京で中小企業の経営支援のお手伝いをさせて頂いています。

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