「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストを活用しよう/中川 秀夫

 中小企業が金融機関に融資を依頼する場合、金融機関より「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストを要求されることが増えているようです。中小企業者を対象とした融資商品を扱っている金融機関だけでなく、信用保証協会においても、保証料率の割引の際の必要書類として利用されています。

 この「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストは、中小企業の計算書類について、「中小企業の会計に関する指針」の適用状況を確認するための書類として、作成し、公表するためのものです。日本税理士会連合会は、計算書類の必要十分な情報開示を行うことを目的として、税理士に対し、チェックリストの活用促進を行っています。したがって、金融機関等に提出を求められた中小企業の方が、顧問税理士等に作成を依頼されることとなるわけですが、その前提として中小企業自体が「中小企業の会計に関する指針」に拠り会計処理を行い、計算書類の作成を行う必要があります。したがって、「中小企業の会計に関する指針」とは、どのようなものであるかを知る必要があります。

 (「中小企業の会計に関する指針」作成の経緯)
 中小企業が、担保や保証に過度に頼らずに資金調達を行い、また、新たな取引先の信頼を確保するためには、財務諸表の質の向上が重要であるとの観点から、中小企業庁では、平成14年6月の研究会において、「中小企業の会計に関する研究会報告書」を発表して、株式公開を当面目指さない商法上の小会社を念頭に「中小企業の会計」をとりまとめました。さらに、これを引き継ぐものとして、平成17年8月に民間4団体(日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会)により、「中小企業の会計に関する指針」が策定・公表され、平成18年4月には、会社法施行等に対応した、「中小企業の会計に関する指針」の改正が行われ、以後、毎年改正が行われており、最近では平成22年4月にも改正が行われました。今年の改正は、企業会計基準委員会が公表した各種の企業会計基準等のうち、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」、改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」に対応した会計処理の見直し等を行っております。

(「中小企業の会計に関する指針」の適用対象となる中小企業)
(1)本指針の適用の対象となる会社は、以下を除く株式会社です。
   ・金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
   ・会計監査人を設置する会社及びその子会社
(2)特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、本指針に拠ることが推奨されています。

 (「中小企業の会計に関する指針」の作成に当たっての方針)
 企業の規模に関係なく、取引の経済実態が同じなら会計処理も同じになるべきでしょう。しかし、投資家をはじめ会計情報の利用者が限られる中小企業において、投資の意思決定に対する役立ちを重視する会計基準を一律に強制適用することが、計算経済性の観点から必ずしも適切とは言えない場合も考えられます。そこで、この指針における中小企業では、会計処理の簡便化や法人税法で規定する処理の適用が、一定の場合には認められることとされています。
 中小企業経営において、企業の経営実態を正確に把握し、適切な経営管理に資することの意義が、会計情報に期待される役割として大きいと考えられていることから、中小企業が拠ることが望ましい会計処理や注記等を示す方針となっています。

 なお、中小企業庁で「中小企業の会計」の内容を分かりやすく解説したパンフレットが作成されています。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/kaikei30/kaikei.htm

「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストを上手に活用して、資金調達を円滑に行い、また、新たな取引先の信頼を確保するともに、「中小企業の会計に関する指針」を自社の財務諸表の質の向上に役立てることが何より重要です。


■執筆者プロフィール

中川 秀夫(なかがわ ひでお)
税理士、ITコーディネーター、CFP(1級FP技能士)、
不動産コンサルティング技能登録者
IT投資に関する支援を新機軸に経営計画、建設投資、不動産に関する業務サポートを展開中 。

お問合せ先:naka.h@dream.com