ITインフラと景観との京存京栄/富岡 岳司

 今春から地方に長期間出張しており、関西でのセミナーやフォーラムに参加できず残念な思いをしています。昨年に続き今年も異常気象のニュースが列島を駆け巡り、局地的集中豪雨の被害が相次いでおり、被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 今回の集中豪雨でも、防災無線による避難勧告や孤立した方が携帯電話で救助要請するなど携帯電話、無線通信によるITインフラが災害対策に大きな力となっています。かく言う私も災害と言う大きなレベルではなくとも、例えば雨雲の動き、予想などを無料の携帯サイトで確認し、「あと2時間もすれば雨が強まりそうだから今日の飲み会はほどほどにして帰ろう」などと、自分なりに天候との共存、リスクヘッジに役立てています。
地震の多い地域、危険地域では地震通報に登録されている方も多いでしょうし、桜島の年間噴火回数を大幅に更新中の鹿児島では噴火速報メールを頼りに降灰対策をされていると聞きました。

 生活基盤のひとつになった携帯や無線通信ですが、この通信網を支えるのは通信キャリアのアンテナです。普段見慣れた何気ない街角でも、視線を45度ほど上げて建物屋上を見渡すと、あちらこちらにこれら通信設備のンテナが目にとまります。また、低層住宅街で見渡すと、電信柱に同化した専用の柱にアンテナが取り付けられている事に気付きます。

 しかし、歴史遺産が多い古都京都では景観条例が厳しく、建築物の外壁面に携帯電話のアンテナを取り付ける場合は、「外壁面と調和した色彩にしなければならない」等の規制があり、意識して見渡さないとアンテナの存在に気付かないのではないでしょうか。

 では、京都でなければ、或いは歴史遺産がない地域であれば、景観をさほど気にしなくてもいいのでしょうか。こう問うと誰もがそんなことはありません、と口をそろえることでしょう。しかし、現実は洒落たビルの塔屋に、メタリック調の大層なアンテナがついていますし、ひとつの建物に何本ものアンテナが立ち並んだりもしています。
 もちろん、アンテナ設置を否定している訳ではありません。冒頭述べたように、このアンテナがあるからこそ、普段の生活のみならず災害時の私達のリスクが軽減できているのですから。私が申し上げたいのは、環境問題が取り上げはじめて久しい中、景観も環境の一つであり、特定地域の枠組みの中で取り決めるものではない。オフィス街、住宅街、山岳地帯、人口の粗密問わず大切にし、私達が受け継いだ景観は同等若しくはそれ以上のものにして後世に継承していかなければならない。そのために、携帯電話や無線通信のアンテナにおいても、形状・大きさ・色彩面でキャリア、メーカー各社はもっともっと企業努力をして欲しいと言うことなのです。

 素人の稚拙なアイデアに過ぎないのですが、例えばビル屋上の広告看板タイプにするとか、街路樹に見立てた作りにするとか出来ないものかと考えたりします。
物造り大国日本、その気になれば景観を損ねる事なく、かつ他の機能も持ち合わせたハイブリット型アンテナなんてものもできると思います。
 確かにコストはかかるでしょう。しかし、失った景観を取り戻すことに比べれば大したことではありません。いや、比べるべきでもないでしょう。そもそも、失ってはならないものを守るためのコストを惜しむ企業では永きに渡って成長発展できないと思うからです。強制力のない自主条例だった景観条例が2005年施工の景観法に位置づけられた時、既に「景観への配慮もCSR」と謳う時代の幕は開いています。
 今以上に京都の町が、ITインフラとの共存共栄の模範となり、景観とITインフラが後世に継がれることを願っています。

 梅雨も明けこれからは台風シーズン。ここでも携帯電話や無線通信での情報提供、収集が大いに活躍することでしょう。もっとも活躍の機会がないにこしたことはありませんが。


■執筆者プロフィール

富岡 岳司
ITコーディネータ京都 会員
文書情報管理士
E-mail:j420@auone.jp