突然ですが、あなたはビジョンを持っていますか?/中川 普巳重

 経営者の方は企業ビジョンとして明確なビジョンを持っていることと思います。
組織の中で働く人もパフォーマンスを最大限に発揮するためには、ビジョンを持つことが重要だと思います。しかし、将来のビジョンを描くことにわざわざ時間を割く人は少なく、日々目の前にある業務に追われてしまっているのが実情ではないでしょうか。
 誰のために、何をするのか、どこに向かい、何をしようとしているのか。私自身、組織に属していた時にとても気になっていたことです。自分がどのような役割を果たしていくのか、何を求められているのか、が明確であればあるほどパフォーマンスは高く、不明確な場合はかなり低かったと思います。

 みなさんご自身のビジョン、部下のビジョン、支援先の経営者のビジョン、周りの人々がどんなビジョンを持っているのか?日頃のコミュニケーションを通じてビジョンを引き出し、自身も含めパフォーマンスの向上に役立ててみませんか?
例えば、アルバイトで来ているスタッフが日々の報・連・相ができていない時、「ちゃんと報告しろと言っているだろう?何でわからないんだ!」なんて注意していませんか?
 彼のビジョンが「将来は独立をして自分の店を持ちたい」と知っていたならばどうでしょう。「君は将来自分の店を持ちたいんだったよな。店の業務をうまく回すためには一人一人が確実に役割を果たすことが大事だと思うんだ。君は今それができていないと思うんだがどうだろう?自分が役割を果たすだけでなく仲間を引っ張っていくことを考えてみてはどうだろう?将来自分の店を持った時にきっと役に立つと思うよ」といった話をしてみてはどうでしょうか。彼は独立心が強く何でも自分でやりたかったのかもしれません。
 どこに向かって頑張るのか(将来自分の店を持つこと)、誰のために頑張るのか(自分のため)を話すきっかけとなりパフォーマンス向上の切り口となるのではないでしょうか。

 そんな単純なことじゃないよと感じる方も多いと思います。もちろんです。これまでに時間をかけて習慣化されたものを変えるのですから、日々よほど意識しなければ習慣化された思考、行動を変えることはできません。
 だからこそ、意識して日々少しの時間でも良いので確保して、ビジョンを引き出し、常に忘れないよう確認する必要があるのだと思います。
 ちょっと余談になりますが、先日お会いした方がとてもパワフルに事業を進めておられたので、どんなビジョンをお持ちなのか、どんなことを日々心がけておられるのかお聞きしました。その方は、ビジョンや自分がやる気になれる言葉をいろいろと書き出し、手帳、デスク、自宅のトイレ、寝室等、身の回りにたくさん貼って常に見ているとのことでした。なるほど、習慣化するための努力をされているのだと実感しました。

 以下、ビジョンを引き出す質問例です。まずはご自身で取り組んでみてください。

・人生で実現させたいことは何ですか?
・絶対に失敗しないとしたら、どんなことに挑戦しますか?
・仕事で大切にしているものは何ですか?
・あなたにとって仕事とは何ですか?
・あなたが会社に望むものは何ですか?
・あなたにとって成功とは何ですか?
・あなたが成功していると思うのはどんな人ですか?
・あなたが仕事を通じて実現させたいことは何ですか?
・あなたが仕事で過去に成功したことは何ですか?
・あなたが仕事で過去にうまくいかなかったことは何ですか?
・やりたいと思っていて、先延ばしにしていることは何ですか?
・5年後にはどんな生活を送っていますか?
・5年後に経済的にはどうなっていますか?
・あなたは1年後に何を手に入れていますか?

 ビジョンは人それぞれです。正解・不正解も無ければ、すぐに答えが出なくても良いものです。ちょっとした質問をきっかけに考え始めるもの良いと思います。
また、ビジョンと言うとものすごく立派なことを掲げなくてはいけないと思う方もおられるかもしれません。ここで言うビジョンは身近なところでやりたいことをより具体的にイメージすることだと捉えてください。ご自身の価値観に即したものであれば行動につながりやすいですし、自分のことを知らなければビジョンは実現しにくいかもしれません。
 なかなか自分では自分のことが分かりにくいものです。この機会に、私ってどんな人?私の強みって何だと思う?など自分を知るための質問を周りの人にしてみるのも良いかもしれません。また、周りの人を改めて観察してみると違った姿が見えてくるかもしれません。

 今回ビジョンをテーマにしたのは、相談業務を通じて起業家、経営者の方々と話をしていて、「結果(成果)を出している人」=「明確なビジョンを持っている人」であると感じているからです。

・人生で何を大切にしたいかがはっきりしている
・「しなくてはいけないこと」ではなく「したいこと」にエネルギーを使っている
→忙しいのに活き活きしている
・自分のビジョンを言葉や絵にすることができる
・ビジョンに基づいた具体的な目標がある
・ビジョンおよび目標に向かってすでに行動している

私も常にビジョンを描き続け頑張っていきたいと思います。


■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
京都中小企業応援センター コーディネータ
中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、
キャリア・デベロップメント・アドバイザー
Eメール  fumie-na@k4.dion.ne.jp