昨今のデフレ、円高や製造業海外移転の動きの加速により、中小企業を取り巻く環境はますます厳しくなっています。そのなか、過去事業拡大や節税対策のための分社化による複数社経営形態から、会社同士の合併により経営の効率化を図るという事案が増えています。
複数社経営には、利益が順調に上がっているような好況時は、分社化することで法人税対策や消費税対策になり、また、事業ごとに責任や権限を明確にできるなどのメリットがありました。しかし、不況の今、前述のようなメリットよりも、分社化しているためにかかるコストや情報管理の煩雑さなどのデメリットが目につくようになってきました。そうした理由で合併を検討する会社が増えているのが実情です。
では、中小企業が採用している合併の種類とそのメリット、デメリットについて触れてみたいと思います。「中小企業には合併なんて煩雑な手続きとは無縁だ」といった意見もあるかもしれませんが、意外とそこまで煩雑でもありませんので、ぜひ参考としてください。
1.会社合併の種類
まず、合併には吸収合併と新設合併の2つの手続きがあります。吸収合併とは、合併の当事者となる会社のうちの1つの会社を存続会社として残し、その他の会社の権利義務を存続会社に承継させて消滅させるものをいいます。例えば、A社とB社が合併するケースでは、A社がB社の権利義務を承継し、B社は消滅することになります。
新設合併とは、合併の当事者となる各会社を解散させて、新たに設立する会社に全ての権利義務を承継させる方式をいいます。例えば、新たに設立されたC社に、A社およびB社の権利義務を承継させるということです。なお、実際の合併においては、吸収合併の場合がほとんどです。
2.合併のメリット、デメリット
合併のメリットについては、冒頭で述べたとおり、会社が複数に分かれていることにより発生する余分な人材や経費を削減できる点が挙げられます。また、合併する当事会社が赤字会社と黒字会社であれば、損益通算することが可能なケースもありますので、これも大きなメリットといえます。また、これまで提携関係にあった会社同士の結束をより強固なものにし、企業規模を拡大することができるというメリットもあります。
反面、合併によるデメリットもあります。やはり本来別々の会社が1つになるわけですから従業員等の不安や不満を招く可能性もあります。また、金融機関の会社に対する評価が変わることもあり、借入枠が減少してしまうこともないとはいえません。金融機関とは事前に協議しておくことが望ましいでしょう。
3.まとめ
合併は一つの方法に過ぎませんが、この厳しい不況が続く中で、複数社経営の当初の趣旨から外れた状態となっていると感じている経営者の皆さまは、現在の会社に合致したあるべき経営形態を考える機会としていただけると幸いです。
■執筆者プロフィール
氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり経営戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com
HPアドレス http://www.hikari-advisor.com
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