電子教科書の未来を語ろう!/藤原 正樹

 わたしのゼミの4年生が卒業論文で、電子教科書をテーマにしている。その彼
が「先生!このままだと日本はやばいですよ」と言う。

 日本政府は、2020年までに教科書を電子化すると閣議決定した。ところが、お
隣の韓国は、2013年までに教科書の電子化を行うことを決めた。フランスは、
2011年中に行うと言う。その他の国も、教科書の電子化を推進している。さらに、
これらの国は、電子化を前提にどのようなコンテンツを提供するかを議論してい
る。日本では電子教科書の是非が、未だ議論されている!日本は、この分野でも
"失われた十年"を繰り返すのだろうか?
 このような日本でも、電子教科書を巡る議論は活発になっている。これらの議
論は、従来のマスメディアではなく、ソーシャルメディアと呼ばれるTwitterや
Ustream、ニコニコ動画などで行われていることが興味深い。おかげで、いつで
も議論の内容を見ることができる。例えば、ニコニコ動画にIDを登録すれば、評
論家の田原総一朗さんと慶応大学の中村伊知哉さんとの議論を見る(聴く)こと
ができる。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv32269377

■電子教科書は、子供達に図書館を与えるようなもの

 本題に戻そう。今回のこのメルマガの目的は、電子教科書の未来を語ることだ。
日本の電子教科書への取り組みは遅れている。これを如何に克服するかは、喫緊
(きっきん)の課題だが、日本型電子教科書の姿を議論しよう。まず、はっきり
させておくことは、電子教科書=紙の教科書の単なる電子ファイル化ではないと
いうことだ。
 電子教科書のメリット、それは第一に、表現力が格段に豊かになる点である。
文字情報に限らず、画像、動画、音声などが自由に使える点だ。
 それ以上に重要な変化は、サイバー空間が教科書自体になることだ。電子教科
書は、インターネット空間を教科書の一部に変える。教科書に含まれるハイパー
リンクは、ネット上に存在する情報を教科書の一部とする。「電子教科書は、子
供達に図書館を与えるようなもの」(中村伊知哉)なのである。

■日本の持てる知的財産を教科書にする。

 そこで問題になるのは、教師の能力である。今の教師が無能だと言っている訳
ではない。サイバー空間に存在する膨大な知識を背景に向かってくる子供達に対
して、一人の教師がいかに有能でも対応し切れるはずがないのだ。
それでは、どのように対応すべきか?一言でいえば、日本の持てる知財で対応し
ようというのが解になる。

例えば、
・高齢化社会のなかで、余力の有る高齢者の知恵を活用する。
・世界に誇る日本製造業の知的財産を活用する。
・京都花街の”おもてなしの心”を活用する。

 日本の持てる知財を子供達の教育に総動員することだ。
これを可能にするのが、急速に成長を遂げているソーシャルメディアだろう。
Twitter、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、Ustreamなどの仕組み
をうまく使えば、可能になるはずだ。ソーシャルメディアを活用することにより、
社会全体で(電子教科書を介して)子供達を教育するシステムをつくれないか?

■日本型電子教科書システムをつくる

 別の表現をすれば、電子教科書というのは、一つのシステムであるということ
だ。アップルの音楽配信が、iPod+iTunesによるシステムによって可能になった
ことはよく知られている。SONYは携帯音楽プレーヤ単体ではアップルに勝てたが、
アップルが構築したシステムに負けたと言える。
 電子教科書においても、単体の教育コンテンツの充実は不可欠だが、電子教科
書システムを作り上げることがポイントになるだろう。
日本の持てる知的財産を”集合知”として、教科書システムに取り込み、子供達
に提供するシステムに作り上げよう。これが、世界に一つしかない日本型電子教
科書(システム)だ。これが日本的電子教科書の未来像だ。

 ネット上で子供達が不正なことをすれば、ネット上で、かみなり親父にどやさ
れる! このようなことが実現できればいい。

参考文献:
・渡辺健太 宮城大学事業構想学部 卒業論文準備資料
・中村伊知哉、他「デジタル教科書革命」ソフトバンククリエイティブ(2010)


■執筆者プロフィール

藤原正樹(フジワラ マサキ)

NPO法人ITコーディネータ京都 理事
公立大学法人 宮城大学 事業構想学部 教授
博士(経営情報学)
中小企業診断士 公認情報システム監査人(CISA)
e-mail:fujiwara@myu.ac.jp

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