平成21年12月4日、「中小企業金融円滑化法」が施行されました。これは、中小企業の債務負担の状況を考慮して、元本の返済猶予や、返済期間の延長等、金融機関に貸付条件の変更等の措置をとるように努めることを義務付けたものです。
金融庁公表の速報値よると平成22年9月末現在で約979千件(27兆7千億円)の貸付条件の変更等が実行され、その実行率は97.3%となっています。
また、金融検査マニュアルの改訂も行われ、債務者が抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときは、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものとして判断して差し支えないとされました。
しかし、法施行から1年が経過した現在、貸付条件の変更等を受けたにもかかわらず経営改善計画が未策定の中小企業が多数あります。ある都市銀行では、税理士の団体と「経営改善計画策定支援に関する覚書」を締結し、経営改善計画の策定を急いでいます。
1.経営改善計画
経営改善計画とは、経営計画の中でも、企業が現在、今後抱えるであろう問題を把握し、その改善策を示したもので経営管理のためのツールとなります。
経営管理とは、目標を達成できるように社長等経営管理者が社員に対して影響力を与えるプロセスのことをいい、その中心は予算管理となります。
この予算によって全社、各部門の目標が決定され、その達成に必要な資源の確保、すなわち売上高の度合いによる必要経費が見積計上されることになり、これらを言葉や数値で具体化したものが経営改善計画であり、これにより、予算と当期の実績とが比較され業績評価が行われることとなります。
経営改善計画は金融機関等に対し、企業の将来性を明らかにすることが出来、上記のように金融検査マニュアルでもその策定が評価されています。
2.経営改善計画の策定
(1)自社を取り巻く「環境」及び自社の「現状」を認識する
少なくとも過去3期分の財務諸表等の基礎資料を時系列にみたり、同業他社の指標と比較して業績悪化の原因を確認します。
(2)自社の経営戦略を練る
事業内容、財務、収益の分野ごとに改善のための重要点をまとめる。また、自社を取り巻く経営環境(経済、市場、業界、競合商品、他社等)の予測を適切に行います。
SWOT分析という手法を使うことにより、現状分析から将来の進路決定に役立てることができます。
(3)具体的な行動計画を策定する
自社のビジョン、経営戦略に沿った中期経営計画(3-5年)を策定し、中期経営計画の初年度を月次ベースの予算として展開します。
自社の現在の損益計算書に同業黒字企業の指標(構成比)を当てはめることにより改善目標とすることが出来ます。
現在の借入金残高を10年で返済するとした場合の1年分の返済額をまかなえるキャッシュフローを3-5年目で達成出来るような計画とします。
3.業績管理体制の構築
計画(Plan)を立て、それに基づき実行(Do)すれば必ず計画と実績の検証(Check)を行います。実行すべき課題ひとつひとつについて「実行したこと」と「できなかったこと」に分け、「できなかったこと」は、その理由を明らかにして対策(Action)を行います。PDCAの経営管理対策を徹底して行えるように社内システムを整備します。
*上記の同業者の経営指標の代表的なものがTKC経営指標(BAST)です。
基となる収録データは224千社で、国税庁調べによる法人数2,603千社の8.6%となっており、わが国の中小企業の経営統計として広い普遍性を有するものと言えます。毎年1月から12月の法人決算データを集計し、翌年5月に発行されているので現状に即した指標となっています。
■執筆者プロフィール
竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)
TKC継続MASシステムによる経営改善計画策定から業績管理のお手伝いをさせていただきます。
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