ケータイ進化も新章へ/松井 宏次

明けましておめでとうございます。
初詣の人が詰めかける平安神宮や伏見稲荷、人々の賑わいに、鳥居や柱の朱色が彩りを添えていることでしょう。皆様、佳い新年をお迎えのことと存じます。
2011年もよろしくお願いいたします。

昨年から今年にかけての身近なITの話題の一つにスマートフォンをあげることができそうです。昨年2010年の初頭では、果たしてスマートフォンは普及するのか、Twitterは利用者が増えるのか、といったことが論争の題目になっていました。
それが1年を経て、今や、スマートフォンは、しっかりと利用者を増やし、先行したSoftBank/Appleのi-Phoneに、対抗するOSとしてAndroidを用いながら、NTT docomoや、au KDDIのスマートフォン商品が、どのように巻き返して行くかが話題になっています。スマートフォンにも牽引されながらTwitterも広まり、ネットマーケティング、販売プロモーションなどにおいても、大きな影響を持つに至りました。

さて、少し時を遡ると、四条通で祇園祭の鉾に、携帯電話を向ける人だかりに目を留めたのが2002年。そのことをこのメールマガジン/コラムでとりあげたのが2003年のことでした。その頃はといえば、デジカメと競合するほどに至ったカメラ性能や、音楽機能の充実が注目の的。ちなみに、携帯電話の普及台数は、日本の労働人口(15歳~65歳未満人口)数の約9割にあたる7721万3900台でした。昨年秋の時点で、その台数は、1億1540万台と発表されていますから、労働人口どころか日本の人口1億2776万人そのものに追いついてしまう勢いです。
個人の携帯電話と、勤務先支給の携帯電話とを併せ持つという1人複数所有に加え、スマートフォンの普及は、個人でも従来型とスマートフォンを合わせ持つという複数所有も生み出しました。購買意欲の低迷や、市場の充足度合いを考えてみても、この携帯電話/モバイルの売れかたは特筆されるものでしょう。

また、スマートフォンのシェア争いは、その背景に、国内の通信キャリアが築いて来た収益の仕組みを賭けての競争があります。例えばiPhoneとセットになって利用されるAppleのダウンロードサービスのApp Storeも、通信キャリアのサービスにとって無視できない競合要素とされています。
そうした中でまだまだ拍車がかかるスマートフォンの普及と、それに伴う新たな機能を備えた携帯電話全体の広がりが、利用者や生活者にとっては、とりも直さず優れたコンピュータ利用環境の普及です。

ところで、ちなみに、iPhoneを手にした人は、その画面の美しさや、持たせている機能の遊び心に魅かれたと思います。Android陣営にしても、その面もカバーをしようとするでしょう。これは、携帯電話が「ケータイ」と呼ばれ始めたときから起きて来たこととも言えますが、実用機能だけでない、感性に訴える魅力を競争の要素にしていることも、十分注目しておきたいところです。その競い合いは、コンピュータを使っているという抵抗感を無くす競争にもなっています。

唱えられて久しい概念に、「どこでも誰でも、コンピュータを使っていると意識することなく、それを利用することができる」という「ユビキタス”ubiquitous”」があります。スマートフォンというケータイの広がりは、その実現を近づけるひとつの基盤になります。
そのように捉えられるケータイの新章の幕開けは、コンピュータネットワークをより活かそうとする個人にとってもビジネス従事者にとっても、新しい可能性に繋がることと言えるでしょう。


■執筆者プロフィール

松井 宏次(マツイ ヒロツグ) SoftPlow Business Lab
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
e-mail:hiro-matsui@nifty.com Twitter : honobuono