IT戦略における不易流行/恩村 政雄

私のモットーにしている言葉に”不易流行”があります。
不易流行とは、残すべきところは残しながら(不易)、時のトレンドの変化に合わせ改善を重ねること(流行)と理解しています。
世界に冠たる長寿企業(老舗)が多い日本の中でも、特に京都は長寿企業が目白押しに存在しています。
それらの企業経営者に共通しているのは、初物食いをする前に、自社の核となる経営資源を磨き上げ、そぎ落とした資源の補強に新しい技法や最適なツールを融合させ、企業体質を強化していく経営手法であります。

私の所属しているグループの一つに関西IT百撰があります。
(関西IT百撰(NPO法人IT百撰アドバイザークラブ)とは、2001年に関経連はじめ関西の諸業界団体を母体に発足、現在は民間企業の有志が支援)その事業目的は、当時、中小企業が経営改善・改革を目指し競ってIT化を進めてはいるが、実体をみると導入した最新のIT機器類は事務所で埃を被っているケースが多く見られる。せっかく最新のIT機器を高価で購入したのに効果がでていないのは何とももったいない。IT機器類を積極的に活用し売上や利益に結び付けている企業を公募し、その活用実例を広くPRすることで、中小企業にIT活用方法の気づきを起させることにあるということが事業の目的です。

2002年初公募以降、毎年60社以上の企業から応募があり、その中でも特にIT活用が上手になされ、企業業績に結びついていて、他の中小企業の範となる活用をしている企業の発表の場を創造して、経営者自ら話していただくことにより、他企業の経営者はIT活用のヒントを得る。
(因みに、応募企業のメリットは、社会的評価が高まるのみで実益はなく、また、関西IT百撰会員が応募企業訪問時は交通費実費支弁のみ)

本年度の応募企業の中でIT戦略に不易流行を見た企業の事例をみますと、

事例1.A精密試作製造会社の時間管理のあくなき追及

 ・「世界最速の光造形で、開発工程を圧倒的に短縮します」を標榜しその実現に5年前から、全社員が在社全時間中にどの業務にどれくらいの時間をかけたのかを紙日報で5分単位で記入、もちろんたばこ1服やトイレタイムの時間もカウント、月末に個人別に一括入力、もし空白時間があると本人に直接確認、と継続した取り組み。
 ・紙日報での時間記入の定着を見極め、紙日報からスマートフォンに入力するように切り替えてから、1分単位、リアルタイムでデータを集計し、分析も可能となり月次決算作成から日次決算作成を実現。
 ・社員の原価意識の高まり、案件ごとの受注価格と製作原価の差違原因の検討、良い意味でのライバル意識で一人一人の技能レベルの向上等の利点が多く現出し、海外からも多くの引合い。
 ・利用システム構成はスマートフォン、DB(Google Apps)、パソコン。
 ・「不易」は経営者のぶれない強い意思、直接・間接全業務と各作業工程の記号化。「流行」は品質・コスト・納期及び受注価格と製作原価の差違分析の徹底検討、検討結果の次ステップへの反映。

事例2.B機械器具商社の現場目線を徹底的に重視した販売管理システム

 ・25年前に初めてシステムを開発・導入したプログラムに改善改良を加えて使い続け、一方では、社長自ら現場に入り、鳥の目、魚の目、虫の目で受発注の仕方や在庫管理状態をつぶさに観察し、考えられることは全て考えたとも言える販売管理システムに仕上げる。
 ・10,000点もの機械器具パーツ在庫の有無、補充タイミング、後継品や代替え品の品番検索、取引先1社ごとに10年前に納品した仕様や価格検索、売上金額や代金回収状況もボタン一つでパソコン画面に関連したデータが帳表形式で一括して一覧表示。
 ・取引先からの信用は高まり、口コミで毎年60社以上の取引先が増加。それ以上に、ワンクリック操作で必要な関連データが一画面に表示されることにより営業や業務提案力が高まり、生産性は高止まり。
 ・利用システム構成は、OS(Windows)、DB(SQLserver)、開発言語(VB,NET)のクライアントサーバー、安価なオープン系ハードウェア。
 ・「不易」は初期開発導入プログラムの継続使用、大局着眼・小局着手のコード設計。「流行」は現場業務の直視と改善をシステム直結。

中小企業の人・物・金の経営資源は限られているだけに、誰でもが有している時間・情報・知恵というオフバランスシートの資源を経営活動に取り込み、アクション計画に結びつけるという不易流行型の経営手法が次なる飛躍につながっている企業は当2事例に止まらず数多くみられます。
その中にあって、IT技術は不易流行型経営の実現に結びつける一つのツールと位置づけ、新旧を問わず自社に適切なIT機器やツールを選ぶITマインドが求められています。


■執筆者プロフィール

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