災害に関する税制上の取り扱い/竹内政明  

3月11日に発生しました、東日本大震災により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。国税庁より、この震災の発生に伴い、災害に関する質問をとりまとめた「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(平成23年3月31日現在の法令・通達等に基づいて作成)が平成23年6月に公表されました。このなかより、多くの企業で関係するであろう項目をご紹介いたします。 

1.被災した法人への税制上の取り扱い

(1)災害により滅失・損壊した資産等

 a.被災した商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産の損害額は損金となります。

 b.損壊した資産の取壊しや撤去等のための費用は損金となります。

 c.土砂その他の障害物の除去のための費用は損金となります。

(2)被災した資産の復旧費用
 被災した資産について支出する次のような費用に係る資本的支出と修繕費の区分については次のとおりとなります。

 a.被災した資産についてその原状を回復するための費用は、修繕費となります。

 b.被災した資産の被災前の効用を維持するための補強工事、土砂崩れ防止工事等のために支出する費用について、修繕費とする経理をしているときは、この処理が認められます。

 c.被災した資産について支出する費用(a・bに該当するものを除く)の額のうち資本的支出か修繕費か明らかでないものがあるときは、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、その処理が認められます。

 上記(1)、(2)は個人事業者においても法人と同様に処理することができます。

2.被災した取引先等を支援する法人の税制上の取り扱い

(1)災害見舞金等を贈ったとき
 a.被災した取引先に対する災害見舞金については、それが被災前の取引関係の維持、回復を目的として取引先の復旧過程において支出される場合は交際費に該当しないものとして取り扱われます。これは取引先の救済を通じて自らが蒙る損失を回避するための費用と考えられるからです。
  また、災害見舞金を支出した場合に取引先から領収書の発行を求め難い事情にあるときは、帳簿書類に支出先の所在地、名称、支出年月日を記録しておくことが必要です。

 b.災害見舞金に充てるために自社が所属する同業団体等に拠出する分担金で、その同業団体等の規約等に基づいて合理的な基準に従って、賦課されたものは損金となります。

(2)取引先等に対する売掛金等の免除等
  災害により被害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金等の全部又は一部を免除した場合には、その売掛金等を免除したことによる損失の額は損金となります。(寄付金及び交際費に該当しないものとして取り扱われます。)
  また、すでに契約で定められたリース料、貸付利息、割賦代金について、減免を行うなど従前の取引条件を変更する場合や、災害発生後に新たに行う取引について従前の取引条件を変更する場合も同様に取り扱われます。
  上記「取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等、直接取引を行うもののほか、商社等を通じた取引であっても自ら価格交渉等を行っている場合には取引先に含まれます。
  消費税についても上記取り扱いに該当する場合には、当該費用とした売掛債権に係る消費税額を、その処理した課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除することができます。

(3)取引先等に対する低利又は無利息融資
  被災した取引先の復旧過程において復旧支援を目的として低利や、無利息で融資を行った場合には、通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は寄付金として取り扱われません。

 その他の項目、詳細については国税庁のHPでご確認下さい。


■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員:電子申告、書面添付推進事務所)
TKC継続MASシステムによる経営改善計画策定から業績管理のお手伝いをさせていただきます。
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