10/31より開始したスマートフォン(以下スマホ)のリレー連載の第3弾をお
届けします。第1弾では、スマホ使う場合のセキュリティについて、第2弾はア
プリケーションを開発する前に考えることについて紹介されていました。本稿で
はスマホを活用するビジネスシーン及び個人としての活用例をもう少し具体的に
紹介します。
今年の流行語大賞では、なでしこジャパンと並んで、スマホが表彰されていま
した。携帯電話の新規出荷台数の半分を占め、折り畳み型携帯電話のヒンジメー
カーが倒産するほどスマホが流行しています。「携帯電話の高機能版?」のよう
に思われますが、実態は通話ができるキーボードがないパソコンに近く、位置情
報の連携や音声認識など独自の機能を盛り込んだ新しい存在といえます。今まで
携帯は「電話とメールでしか使ってこなかった」という方からみると全く別の機
械といえるでしょう。
そんなスマホを活用するビジネスシーンとしては以下のものが考えられます。
1.社内業務システムの端末として活用してみたい・・・
大手の企業を中心に、社内システムの一部の機能をスマホからも使用できるよ
うにして、業務を遂行するケースが増えています。たとえば、お客様宅に出向い
てアフターサービスを行う会社では、修理のための装置の情報や顧客の情報、修
理の金額見積もりと請求書の発行などをスマホからできるようにしています。
また、営業ツールとして、大きめの画面であるタブレット端末を使って、見積
もりや試算、受注の処理をその場で行うこともできます。ある業務機器販売会社
では、営業マンが外出先でも社内のシステムをスマホから安全に利用できる環境
を構築し、会社に立ち寄らなくてもよい直行直帰のしくみを試験的に導入してい
ました。その結果、営業マンの業務効率が上がりコストの削減が図れたため全社
的に展開しています。残業時間の削減だけではなく、営業マン全員のデスクが不
要となり事務所のスペースを削減することもできたようです。
これまではパソコンで行うことが多かった社内の業務システムですが、高性能
のスマホで社外からセキュリティを確保しながら使えるようになりました。この
ような環境を整備するためには、単に社内のWebシステムをスマホからアクセス
するだけのやり方では不十分で、操作性やセキュリティ面での問題が残ります。
社内システムの改編やSaaSで提供されているサービスをあらたに利用する必要が
あります。
中小企業においては、大規模のシステム開発や投資は容易ではありませんが、
工夫をしてスマホを業務で活用しているところもあるようです。例えば、カタロ
グや製品紹介の動画を取り込んでお客さまへの説明に使ったり、図面・作業標準
の情報を製造現場で活用するといった使い方は、比較的簡単に実現できます。
2.お客様が持つスマホをマーケティング端末として活用してみたい・・・
消費が停滞する中においても、画面が大きくて見やすいスマホ経由の通販は2
割程増加しています。パソコン通販との違いは、持ち歩ける携帯性です。通販だ
けではなく、お客様をネットから店舗へ誘導する「オンラインからオフライン
(OtO)」手法に活用できるといった特徴があります。位置情報(GPS)を活用し
た集客アプリとポイント管理のしくみが提供されています。具体的には、GPSの
情報を利用して近くにあるお店の情報をスマホに送ります。これを受けた利用者
は、そのお店に来店し来店ポイントを獲得したりそのお店で使える割引クーポン
を使うことができます。このしくみに加盟している店舗は、来店および購買の促
進効果が期待できます。従来はチラシやタウン誌などでカバーされていたクーポ
ンのサービスもスマホのアプリとして提供されています。皆さんも主要駅の近く
でクーポン満載の無料タウン誌を貰われた経験があると思いますが、こういった
紙媒体がスマホに置き換わるだけではなく、GPS機能との連携により、今まさに
いる場所の近くのお店の検索とお得なクーポンがスマホからダウンロードされる
のです。こういったしくみは既に中小の小売店や飲食店、美容院やエステなどの
サービス業が多数利用しています。
また有料サービスを利用するのではなく、各店舗が独自でTwitterなどの無料
のソーシャルメディアで顧客と対話をしたり、口コミの伝播を狙った販促をうま
くできているお店もあります。TwitterやFacebookなどで注目されやすいのは写
真や動画のある記事です。女性は気に入ったお店の風景や雑貨、美味しそうな食
事の写真などを投稿することが多く、口コミやお得なセール情報といったキーワ
ードが大好きな女性にとってはそれをいち早く教えてくれる最強のツールといえ
るでしょう。もし皆さんがこのような業種の経営者の方や、支援されているITコ
ーディネータの方とすれば、スマホによる販促についても十分理解しておく必要
があります。
3.情報端末として仕事の効率化~個人として活用するなら・・・
さまざまなビジネスシーンでスマホを活用する機会が今後増えてきます。皆さ
んもそれを具体的に検討することもあるでしょう。できれば今のうちに、自分自
身でスマホを使って、特徴やメリットデメリットを理解しておく必要がありそう
です。せっかく使うのですから、普段の仕事に活用したいものです。
移動中や空き時間を使って、メールをしたり、資料をみたり、閃いたアイディ
アを残したいときに役立つのがスマホです。私自身は、パソコン宛にくるメール
をGmailに転送しています。7GBまで無料で使用ができ、スマホからの検索もスム
ーズです。添付されたオフィスのファイルの閲覧もできます。エクセルやパワー
ポイントなどの文書を保存して、スマホから閲覧したり、編集することもできる
ので外出先でもパソコンなしでお仕事ができます。オフィスのファイルと互換性
のあるアプリケーションも有料で販売されているようですが、全体的にそれほど
互換性が高いものではありませんので、無料のGoogleAppsで編集できる形式に変
換して保持しておく方法が個人的にはお勧めです。また事務所に戻ってもパソコ
ンを立ち上げなくてもスマホから直接プリントアウトするためのアプリや対応プ
リンターが増えてきています。
もちろんスケジュールもスマホとパソコンとで共有ができます。メールやスケ
ジュール連携はGoogleAppsだけではなく、iPhoneで提供されているiCloudを始め
として、様々なアプリを無料や安価に利用することができます。
更に、便利なのが名刺情報を簡単に電子化できるアプリです。スマホについた
カメラで撮影すると、文字が名前か、住所か、電話番号なのかを自動で認識し登
録できます。このように、メールや文書、名刺やスケジュールなどをパソコンと
共有でき仕事の効率化をはかれます。
どうしても外出先でパソコンが必要となる場合もあると思います。こんな時で
もスマホには役立つ機能があります。「テザリング」機能がついた端末では、ス
マホを外部モデムとして利用ができ、外出先でパソコンをインターネット接続さ
せることができるのです。
スマホは、まるでドラえもんのポケットになったかのように「パソコン」「名
刺ケース」「文書類」「インターネットルータ」など事務所にある様々な道具と
同じ役割を果たしてくれます。
さて、このように外出先でスマホを使いこなすためには、第1弾の池内さんの
メルマガにもあった通り、セキュリティには十分注意が必要です。また第2弾の
宗平さんのコメントのとおり、なにはともあれまずは自分で使ってみることが大
切だと思われます。深く知りたいのであれば、iPhone(iOS)とAndoid双方のスマ
ホを試してみることも考えてみてはいかがでしょうか?
■執筆者プロフィール
杉村麻記子(すぎむらまきこ)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 勤務
makiko.sugimura@gmail.com
コメントをお書きください