ルフィ船長に学ぶコミュニケーション術/小林 由香

明けましておめでとうございます。今年も、本コラムをご愛読の程、よろしくお願いいたします。
 元旦に一年の目標を決められた方も多いのではないかと思います。私は、この一年の目標を、「絆を大切にする」に決めました。
 「絆」という文字は、「2011年を表す漢字」に選ばれました。語源は、動物をつなぐための綱ということですが、転じて今では、人と人との大切なつながりを表す文字として使われています。
 「縁は偶然ではなく必然で、その縁が形をなし、絆が生まれる。」と何かで読んだのですが、その過程においては。コミュニケーションがとても大切であると考えます。
 ビジネスを成功に導くためにも同じことが言えると思います。
 以前のコラムでも書きましたが、情報通信技術の進化に伴いコミュニケーション手段の選択肢が増加し、ビジネスに新しいチャンスや利便性をもたらしている一方で、それぞれの特徴をよく知って使わないと大失敗をするという場面も多々あるとよく言われる昨今です。
 年末から家族で大ヒットコミック「ONE PIECE」を読み始めました。
 「ONE PIECE」は、大航海時代を舞台にルフィ少年が「海賊王に俺はなる!」と、恩人である海賊シャンクスに貰った麦わら帽子を象徴に「麦わらの一味」を率いて海へと繰りだす長編海賊コミックです。
 「縁はやおら形を成していく・・・」
 私は、ルフィ少年が印象的な出会いをしながら、麦わらのルフィ船長となり、海賊一味を率いて大海原を意気揚々と航海していく姿にとても惹かれます。
 チームワークの優れた「麦わらの一味」は、予想もしないトラブルに巻き込まれながらも力を合わせて荒海をわたっていきます。

■コミュニケーションはシンプルに
 チームのリーダーは、目標を掲げ、それに向かって進むための方向性をメンバーに示さなければなりません。
 ルフィ船長は「海賊王に俺はなる!」と宣言し、それを実現させるために、海賊団(チーム)や行く先々で新しく出会う仲間に分かりやすい言葉でコミュニケーションを図ります。
 舞台は大航海時代の海の上。時代は全く異なりますが、どのコミュニケーション手段をつかうにしても、伝わらなければ何にもなりません。
 基本は、「相手の立場に立って、出来るだけ分かりやすい言葉でシンプルに」を心がけたいものです。

■ルールを決める
 この「ONE PIECE」、実は大航海時代の海賊に関する正確な知識を元に書かれているそうです。そしてルフィ達の掟は、実際の海賊団の掟そのものだそうです。
 「麦わらの一味」の優れたチームワークですが、その背景には厳しい掟が存在するのですね。
 ビジネスのコミュニケーションも然りです。
 とくにメールやSNSで気になるのですが、人の批判めいたことが書かれていることがあります。もちろん、伝えなくてはいけないことかもしれませんが、これでは、コミュニケーションの流れが悪くなったり止まったりしてしまいます。
 このようなことは、当たり前でわざわざルールにするようなことはないように思いますが、残念ながらこういうケースは見られるものです。
 会社でメールアドレスを社員に割り当てるとき、メールでは、批判はしない。
 何でもメールに頼らない。言いにくいことは直接目を見ていう。などのルールを決めていくのが成功の秘訣であると思います。

■リラックスできる環境
 また、ルフィ率いる麦わらの一味は、関係が対等で言いたいことを言い合います。ときには、些細なことでいさかいになることもあります。
 しかし、それを長く引きずることはありません。
 リーダーは、メンバーが「自分の考えが話せる」と思える、安心感のもてる環境を作り出すことが重要です。
 まず、心の底では分かり合えているという安心感がなくては言いたいことも言えませんし、翻って陰口をたたくということになってしまうものです。
 清涼菓子のCMではありませんが、「よいアイデアとは、リラックスしているときの方が浮かぶ」と思われる方も多いと思います。
 麦わらの一味はいさかいがあってもまた集まって美味しそうに食事をします。
 そういうところから、また、よいアイデアが浮かぶものです。
 チームのリーダーは、得てして孤高なものです。リラックスできる環境をつくりだすどころか、緊張感を漂わせることも多いように思います。
 しかし、たまには、リラックスできる環境を作り出し、メンバーの本来の姿が眺められるようにしたいものです。

 「ONE PIECE」のルフィとその仲間たちの魅力は、読めば読むほど深まります。1997年から続くベストセラー。仕事で行き詰った時など、清涼剤の役目も果たしてくれるようです。
 何をどう伝えて、その反応をどう捉えるか。経営者の悩みは尽きませんが、そんなひととき、大海原を駆け巡るルフィに触れると、意外と元気が湧いてくるかもしれません。今年も、多くの良き出会いを作りながら、時代の荒波を越えていきたいものです。

参考文献『ONE PIECE』(集英社)尾田栄一郎
 『「ONE PIECE」はなぜ人の心をつかむのか』(ベストブック)
                         富田英太・藤岡良晃


■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。