平成23年6月22日に成立した税制改正(現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に
対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律)で消費税法
の一部が改正されました。実務上影響のある主な改正点をご紹介いたします。
1.消費税の事業者免税点制度の適用要件の見直し
(1)現行の事業者免税点制度
基準期間(原則として個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度
の前々事業年度)の課税売上高が 1,000万円以下である場合には免税事業者
として消費税の納税義務が免除されています。
*1 資本金の額などが 1,000万円未満の新設法人については基準期間がない
場合を含みます。
*2 課税事業者になることを選択している場合を除きます。
(2)今回の改正による事業者免税点制度
上記の事業者免税点制度の要件を満たす場合であっても、特定期間の課税
売上高が 1,000万円を超えるときは事業者免税点制度の適用を受けられない
こととなりました。
この特定期間の適用にあたっては、課税売上高に代えて、特定期間の給与
等支払額(所得税法に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額)の合
計額を用いて判定することもできます。
(3)特定期間とは次の期間をいいます。
a 個人事業者のその年の前年1月1日から6月30 日までの期間
b 法人のその事業年度の前事業年度(7か月以下の短期事業年度の場合を
除く)開始の日以後6か月間の期間
c 前事業年度が短期事業年度の法人でその事業年度前 1年間に開始した前
々事業年度がある場合は、当該前々事業年度開始の日から6か月間(当該
前々事業年度が6か月以下の場合を除く)
d 当該前々事業年度が6か月以下の法人の場合は、その前々事業年度の期
間
(4)適用開始時期
平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度から適用されます。
3月決算法人の場合、平成24年4月から9月までの上半期で課税売上高が
1,000万円を超えると、平成25年4月開始事業年度から課税事業者となります。
2.仕入税額控除の95%ルールの見直し
(1)制度の概要
一般課税により申告を行う事業者のうち、当課税期間における課税売上割
合が95%以上の事業者は、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に
係る消費税額の全額を控除することができることとされていました。(これ
を一般的に仕入税額控除の95%ルールと呼びます)
今回の改正で、課税売上高が5億円超の事業者はこの95%ルールが使えなく
なりました。改正後は、当課税期間における課税売上高が5億円超の事業者
は非課税売上高に対応する部分について仕入税額控除ができなくなり、その
分納付税額が増えることとなります。
さらに、課税仕入れの取引ごとに、課税売上対応、非課税売上対応、共通
対応の課税仕入れに厳密に区分する必要が生じるため、事務負担が増えるこ
ととなります。
(2)適用開始時期
平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
したがって、個人事業者は平成25年分から、事業年度が1年である法人に
ついては平成25年3月末決算分から適用されます。
3.消費税の還付申告に関する明細書の添付義務化
平成24年4月1日以後、控除不足還付税額のある還付申告書を提出する場合、
消費税の還付申告に関する明細書を添付しなければならないこととされました。
その他の項目、詳細については国税庁のHPでご確認下さい。
■執筆者プロフィール
竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員:電子申告、書面添付推進事務所)
TKC継続MASシステムによる経営改善計画策定から業績管理のお手伝いを
させていただきます。
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