自社のホームページを守る著作権の活用法 / 松山 考志

 今年2012年はスマートテレビの話題が大きく取り上げています。スマートテレビは、インターネットを利用できる多機能型のテレビで、ゲーム、SNSなどを手軽に利用したりでき、スマートフォンのように、様々なコンテンツやアプリケーションの利用ができるといいます。米アップルは、2012年後半にスクリーンとインターネット接続を完備したiTVセットをリリースする予定です。またGoogleは、アンドロイドをテレビに取り入れ、虎視眈々と先行するアップルの追撃体制を整えようとしています。アップルは、itunesにより音楽からミュージックビデオ、オーディオブックまで自由自在にダウンロードできる仕組みを作り、音楽と携帯電話の産業構造を大きく変えました。しかし、スマートテレビへの番組配信に関して、音楽配信におけるアップルの著しい成功を警戒したメディア業界が警戒し、ネットで配信・放映するための権利関係の交渉が思うように進んでいないと言われています。
 今やネットでは様々な権利関係が存在し、企業活動と密接な関係を持っています。特に企業活動においてWebによる情報発信やネットによる商品の販売は不可欠のものとなっています。時間と費用をかけて製作したホームページはネットの特性ゆえに、簡単にコピーされ、気がついたら似たようなホームページが存在し、利用客が他店に流れていたというような話を聞くことがあります。ホームページ自身は、編集著作物として著作権の対象となります。自社のホームページに「著作権者名+最初の発行年+Copyright」を表記して公開していたとしても、後から自社と同じようなデザインのホームページが見つかった場合、他社が自分のものだと主張されてしまうと大きなビジネス上の損失を見過ごさざるを得ないことにもなりかねません。
 そもそも著作権は、著作物を創作した時点で発生するため、著作権を得るための手続は一切必要ないという特徴があります。一方で特許権、実用新案権、意匠権、商標権は方式審査を経て登録されて初めて権利が発生するという違いがあり、権利関係の証明が容易です。ホームページの著作権には公的証明が無いため、自分の著作物だと証明するのも一苦労です。そこで、文化庁では創作日などの事実関係、創作日、権利変動や移転などの事実関係を証明しやすくするために「著作権に関する登録制度」を設けています。
 著作権に関する登録制度の活用方法として、「第一発行(公表)年月日の登録」があります。自社のホームページの「第一発行(公表)年月日の登録」をすることにより、登録された日にホームページの最初の公表があったものと推定されます。ホームページの公表日にすでに存在していたことを主張することができます。
盗作などの侵害があった場合に、登録を受けていれば、侵害した相手側が証拠を示さなければならないという挙証責任を転換する効果があります。
 さらに公表された事実を証明する資料があれば、相手方への反論が容易になると考えられます。この事実を証明する資料の一つとして、行政書士が行う「著作物の存在事実証明」があります。自社のホームページが、自らにより創作され、今日現在この世に存在するという「事実」を公証人の確定日付の付与を得て、保管することで著作物の存在を証明する手段となります。文化庁への著作権登録は、申請書類の形式審査のみで行われるため、その著作物が「何か」ということを証明することはできず、また未公表の著作物に関しては登録することができません。
著作物の存在事実証明を作成しておけば、その日(具体的には公証人による確定日付を行った日)に確かにその著作物が存在したことを証明でき、結果的に著作物が「何であるか」の証明に役立ちます。著作権登録を行うには、著作物の公表、著作物が50人以上に頒布又は展示されたことを証明する書類などが必要となります。

(参考文献)
・日本著作権機構ホームページ


■執筆者プロフィール

 松山 考志
宅地建物取引主任者