今日は3月5日。「さん」と「ご」で「珊瑚の日」。「み」と「5」で巫女の日でもある。更には、ミス・コンテストの日でもあるらしい。
日本人は語呂合わせが好きで、毎日が○○の日である。5月6日にいたっては、「語呂合わせの日」だとか。私流では24年3月5日は伏見へGO!(2、4、3へ5)。仕事帰りに伏見の酒蔵で秘蔵の美味しい日本酒を といきたいところですが年度末の月曜、そんな余裕などありません。
そう、3月は会計年度が終わる月です。
例年以上に今年度は、来るべき決算に戦々恐々となっている経営者も多いのではと察します。東日本大震災、電力不足、円高、欧州危機、タイ洪水被害、TPPといった未曾有の六重苦により我が国の経済は凍りついており、あらゆる事業体がもがき苦しんでいます。震災被災地の方々も苦しい、福島の方々も苦しい、各地の経営者も苦しい、日本全体が苦しいです。
でも、日本は素晴らしい国で、こんな厳しい状況下でも、やがて春が訪れて桜が咲き、私達の心を和ませてくれます。なんとか創意工夫と不屈不倒の精神で、この難局を乗り越え春を迎えましょう。
さて、この時期は、来年度に向けての準備を整える時期でもあり、スローガンを立案される経営者も多いのではと思います。来年度は「復興」や「回復」と言ったキーワードが多く用いられることでしょう。
今回はそのスローガンについて触れてみたいと思います。
ウィキペディアでスローガンを調べてみたところ、【企業や団体の理念や、運動の目的を、簡潔に言い表した覚えやすい句・標語・モットーのこと】と記されていました。
企業が創業した時や団体が発足した時には、崇高な創業の精神や発足の意義が高らかに謳われそれを高いレベルで維持するために理念が設けられています。
その理念に基づいて事業目的の達成に向け、その年度での考え・行動を簡潔に表したのがスローガンと言えるようです。
何気なく、耳にしているスローガンと言う言葉も、こう書くと結構威厳のある重いものであることに気付かされます。
スローガンが目的達成のために表された年度毎の語句であるなら、スローガンは単年度KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)と言えるかも知れません。
そう考えるなら、スローガンは単に「簡潔に言い表した覚えやすい句」にするだけでなく、数値化が可能な、つまり評価し易いものであった方がいいわけです。
しかし多くのスローガンは、一見わかり易く実行できそうなわりには、その実、抽象的で具体的にどう行動するかが判らないものが多いようです。
そして、そのようなスローガンは毎年、言い回しだけを変えた変り映えのしない内容ともなっている事も多いようです。
では、何故そうなってしまっているのでしょうか?
答えは簡単です。立てたスローガンに対し、モニタリングや検証をしていないからです。つまり、月毎、四半期毎にスローガン(KGI)がどれだけ実践できているのかをチェック(モニタリング)せず、期末(まさしく今のこの時期)に、スローガンに対しこの1年どうであったかの評価(検証)もしていないから、今期のスローガンは「今期のスローガン」で終わってしまい、達成されようが達成されまいが関係なく来期のスローガンが謳われてしまっているのです。
先に述べた通り、スローガンは【企業理念に基づいて事業目的の達成に向けその年度での考え・行動を簡潔に表したもの】ですから、その結果がどうであったかをしっかりと検証する必要があります。
私達、ITコーディネータは経営戦略の立案と評価にバランスト・スコアカード
(BSC)なるものを良く用います。その際、必要不可欠な指標となるのが
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)
KPI (Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
CSF (Critical Success Factors:主要成功要因)
です。
事業目的達成のための重要目標達成指標(KGI)を定め、それを司る重要な要素(CSF)を明確にし、KGI達成の指標としてKPIを定め、このKPIをモニタリングしていきます。バランスト・スコアカードを経営に活かすには、様々な視点での分析力や手法活用のノウハウが必要ですが、一足飛びにそんな難しい事しなくても、スローガンを用いれば、簡易的にこの手法を活用できると私は考えます。
例えば、
1.スローガンを立案する。
2.何の数値がどの値になればスローガン達成とみなすかを明確にする。
3.スローガン達成に向け、最低でも毎月、確認しておかなければならない項目
(生産高、歩留り、在庫、経費、進捗、受付数 など)と値を決める。
4.その値を毎月確認し、遅れているなら是正措置を検討しスピーディに対策をとる。
5.年度末(まさしく今)、最終的にスローガンに対しどうであったかを数値をもって評価する。
6.上記結果を踏まえ、新たなスローガンを立案する。
と言った感じです。
ここで重要なのが、5と6です。つまり、そもそもスローガンが適切であったのか(事業目的に合致していたのか、評価できる内容であったのか)の検証です。
スローガンはある意味、仮説ですので(このスローガンが達成できれば事業目的も達成に近づくであろうと言った仮設ですので)、検証は絶対必要です。
スローガンが達成できたのに事業がうまくいっていないとか、そもそもスローガンが評価できないのであれば、来期のスローガンはしっかり見直す必要があります。逆に、スローガン達成が道半ばでも、事業目的達成と連動していると評価できるのであれば、敢えて来期に違うスローガンに変える必要はありません。
そのようにして、スローガンをうまく活用すれば、たった十数文字の語句であっても、経営に役立てることは可能だと思います。また、(実は私の会社でも実施しているのですが)スローガンを全従業員から募集することで、従業員の事業目的理解度向上と経営参加意識向上もはかれます。
このようにスローガンを活用することは、【スローガンを用いたSPDLI】とも言えるでしょう。
※SPDLI:Strategy(戦略)、Plan(計画)、Do(実行と情報収集)、 Learning(分析と学習)、Innovation(変革)
私の会社では、経営目標、事業目的に合致した実践レベルでの来期スローガンが決まりました。あとは、実践しモニタリングしていくだけです。
スローガン、流行語を取り入れただけの単なる「語呂合わせ」で終わらない事が大切ですね。
■執筆者プロフィール
富岡 岳司
ITコーディネータ京都 会員
ITコーディネータ
文書情報管理士
E-mail:j420@auone.jp