「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司)がベストセラーになっております。現在3部まで出版されています。まとめてみましたので、数回にわけて紹介したいと思います。
1.会社は誰のために
会社は経営者や株主のものではありません。従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に直接かかわるすべての人々のものなのです。
1)会社経営には、「五人に対する使命と責任がある」。
a)社員とその家族を幸せにする
b)外注先・下請企業の社員を幸せにする
c)顧客を幸せにする
d)地域社会を幸せにし、活性化させる
e)自然にうまれる株主の幸せ
上記1から5番の順序を間違えないことである。正しい判断をしていくには、ブレない正しい視点を持つことが大切です。
2)企業の社会的使命は、会社を継続させることである。業績や成長は継続のための手段にすぎない。
3)会社が、私たちの心を打つようなことをやっているかいないか。心に響く会社なのか、社員がやりがいをもって楽しく仕事に取り組める会社のなのかが、重要である。
4)企業経営に関しての問題の99.9%は、内つまり会社内部にある。
5)景気は与えられるものではなく、創るものです。お客様が喉から手が出るほどほしい商品を創り、提案すればいい。
6)今は下請企業でも、30年計画を立て、徐々にその立場から決別する。こんな気概をもたなければなりません。人がやらないもの、できないことをやるのです。オンリーワンの会社をめざすべきだ。
2.日本でいちばん大切にしたい会社たち
(1).日本理化学工業株式会社
昭和12年(1937)設立。従業員約50名。うち7割が知的障害者。
主にダストレスチョク(粉の飛ばないチョーク)を製造。
50年間、積極的に障害者を雇用し続けている。
一人ひとりの状態に合わせて機械を変え、道具を変え、部品をかえた。
(2).伊那食品工業株式会社
昭和33年(1958)創業。創業以来48年間、連続増収増益という記録を打ち立てた。製品は寒天。国内シェア80%、世界シェア15%。
寒天という斜陽産業のなかで、時代に合った新しい付加価値をつけ数値をのばしている。
社是は、「いい会社をつくりましょう」、補足、「いい会社とは、単に経営上の数字ではなく、会社を取り巻くすべての人々が『いい会社だね』と言ってくださる会社のこと」。
経営理念は、「企業は社員の幸せを通して社会に貢献すること」、補足、「企業は企業のためにあるのではなく、企業で働く社員の幸せのためにある」。
創業以来一度も、リストラを行ってことがない。
経営方針
a)無理な成長は追わない
b)敵をつくらない
c)成長の種まきを怠らない
「100年カレンダー」・・・「100年先でも価値ある企業として存続していることを考え、経営の舵取り・決断をするようにしている」
朝は自主的に会社の内と外を掃除しており、土日、昼休みには、社内の植物の剪定もしている。
(3).中村ブレイス株式会社
島根県の石見銀山の麓。製品は義肢装具。従業員は70名。
昭和49年(1974)創業。
「私たちの仕事が世のため、人のために役だっている」という自負、満足に満ちている。
弱者の側に立った、人間の尊厳を高め、守ることに役立つ製品を作っている。
(4).株式会社柳月
本社は帯広。北海道にこだわり、北海道から出ない会社。40店舗。
昭和22年(1947)創業。従業員約600名。売上高75億円。
商品は製菓業。40年以上にわたって増収増益。
社長の信条
a)企業の目的は地域の人々をしあわせにすることである
b)「あなたの会社がなかったら、お客様はほんとうに困りますか」と、いつも自分自身に問いかけ、「わが社がなくなったらお客様が困るような会社をめざしたい」
5つの使命
a)お菓子を通じて家族の団らんを提供し、親子のコミュニケーションづくりをします。
b)いかに買いやすい価格で提供するか、コストダウンに努め、無駄を省きます。
c)日本一おいしく、安全で衛生的なお菓子づくりをします。
d)帯広十勝、北海道の地域に貢献し、なくてはならない企業を目指します。
e)食文化の向上に努め、常にお客様に新しい商品を提供し続けます。
柳月5つの誓い
a)私たちは、心を結ぶ団らんをお手伝いします。
b)私たちは、心を結ぶお菓子をつくり続けます。
c)私たちは、心を結ぶ接客・サービスを行います。
d)私たちは、地域社会と心を結びます。
e)私たちは、心を結び、幸せをめざします。
そして、「私たちは、お菓子を通じて家族の絆を結び、人と人との心を結びます。」
柳月は自社だけの繁栄を考えていない。同業者を大切にするWIN・WINの関係を大切にしている。
北海道にこだわるのは、「わが社はお菓子を売っているわけではありません。
お菓子といっしょに“北海道”も包んで売っているのです。」という。
柳月は、企業文化、理念を非常に大切にし、心を結ぶ「感動」を最も大切にしている。
(5).杉山フルーツ
静岡県富士市の吉原商店街に立地。最盛期120店舗、現在は70店舗。
昭和25年(1950)創業。家族経営5~6人。無休。
平成3年売上高は約8千万円、平成18年には倍増。
平成6年商店街の大型店2店が撤退し、集客装置を失う。
経営改革を実行。
a)「贈り物」需要に特化する。
b)イベント──>インターネットの活用、その他セール
c)接客態度を改めた
仕入れた商品を従業員みんなで、「これはお客様の心を満たすだろうか、ほんとうのものだろうか」検討する。さらに、果物の産地、農家まで行って買い付ける。1箱買って来ると、いったん全部バラして入れ直し、まがい物やいたんだものを排除して店頭に並べる。
新製品の開発でオンリーワンの店舗。
顧客満足度の高いお店である。
■執筆者プロフィール
クリッジナリティー 代表 米田 良夫
中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ。