ユーザビリティを考える / 西田 則夫

昨今、Webサイトを利用して情報入手はもとより、ショッピング、決済処理
など日常的に利用するようになり、なくてはならない道具となりました。道具で
あれば使いやすいものが重宝しますが、この「使いやすさ」をソフトウェアやW
ebサイトではユーザビリティといいます。様々な機能になるべく簡単な操作で
アクセスできることや、使っていてストレスや戸惑いを感じないことなどが、優
れたユーザビリティといわれます。
 ところで、大阪市営地下鉄の券売機をご存知ですか。東京などから出張してく
る社員には、操作がわかりにくいとの評判です。ディスプレイ上で、「お金、カ
ードを入れてから料金ボタンを押してください」などのメッセージが表示されて
タッチパネルになっていますが、お金をいれてもディスプレイに変化はなくどう
したらいいか迷うようです。よくみると、料金ボタンはタッチパネルでなく、今
までの押しボタンに金額が赤字で表示されているものを押すようになっています。
ですから、出張族にとっては、非常に使いづらいようです。これは大阪仕様なの
かもしれませんが、使いやすいとおもってリリースしたのでしょうか?それとも
リリースする前に使用感をチェックしたのかどうかです。ユーザビリティを意識
していない結果といえます。
 ただ、システム開発ベンダーで数十年、開発に携わっていて、はずかしながら
ユーザビリティを常に意識してきたかといわれると言葉に詰まります。
 ユーザビリティは、国際規格のISO9241-11では、「特定の利用状況において、
特定の利用者によって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられ
る際の、有効さ、効率、利用者の満足度の度合い」と定義しています。要は、ユ
ーザは、正確に目的を達成できる(効果)、無駄な手順なく目的を達成できる(
効率)、イライラしたり不愉快な思いをしない(満足度)ことです。
通常、ソフトウェアの品質というと機能的な欠陥を発生させないことに注力し、
システムが稼働したら開発ベンダーの役割はほぼ終了という意識が強い傾向にあ
ります。しばらく前までは、大手企業は平均して2年間でシステムを構築し、1
5年間利用し続けていましたが、このことは、システム構築中のソフト品質より
システムが稼働してからの運用中の利用品質が重要であることを示します。この
利用品質を高めるには、
1.利用の状況の理解と明示:ユーザ調査
2.ユーザ要求の明示:要求分析
3.ユーザ要求を満たす解決策の作成:プロトタイピング
4.要求に対する設計の評価:ユーザビリティ評価
というプロセスを開発タスクに追加して、1.から4.を繰り返してユーザビリ
ティを改善します。
このプロセスの重要なところは、ユーザが求める要件を見える化(文書化)して
要件違いがユーザの最終試験で発覚することを防ぐことにあります。
一つの例として、ユーザが説明した要件が間違っており、ユーザ自身が自らの要
求を最初から正しく理解しているとは限らない場合があります。その後、開発ベ
ンダは、それぞれの立場で、自分の思いや願望で間違った解釈をして、工数・予
算の制約で、必要なタスク・仕様・設計・配慮・営業行為をゆがめる可能性があ
ります。その食い違いを開発終盤でなく、上流工程での要件定義段階で明確にす
ることで全体として工数・予算の削減が図れます。
 また、ユーザビリティが低いシステムがもたらすビジネス上のリスク事例とし
て以下のものがあげられます。
1.株式の売買銘柄や株式数を間違うミスに、操作画面に出た警告メッセージを
無視するもう一つのミスが重なり、5億円弱の損失が発生。
2.株の売り注文で会社名を誤ってオペレータに伝達し、さらに御入力の警告を
無視したことにより、4000株の注文を出し、損失額は2000万~3000
万円と推定。
3.CADソフトの操作ミス、図面の確認作業の怠りなどから千棟弱の建売住宅
で壁量不足が発生し、建築士に対して費用負担請求が行われた。
逆に、ユーザビリティ高いシステムがもたらすビジネス上の効用の事例としては
以下のものがあります。
1.発注時に参照できる情報を発注画面に集約することで、様々な条件を加味し
た発注を可能にし、商品の廃棄ロスや売り切れによる機会損失を避ける発注の効
率化を実現。
2.事故やヒヤリハットが発生した記録先をWebブラウザから閲覧できるデー
タベースシステムに置き換え、表示の工夫から様々な分析がしやすくなり、事故
予防策の検討が可能となった。
3.薬の処方オーダーシステムに誤投薬防止システムを組み合わせて、誤入力に
よる医療過誤を防止。
最後に、中国におけるユーザビリティの話題として、中国国内ソフトウェア製品
に対する政策と法規でソフトウェア会社は、ソフトウェア製品品質計測センター
に品質検査を依頼し、品質許可証が発行されないと販売不可になり、委託成果物
の検証テストにおいても、検査不合格であれば納品不可になるとのこと。特に「
利用者視点」の「ユーザビリティ」に関する品質検査が厳しい模様。
上記はどこまで実効性があるのかは疑問ですが、ユーザビリティを改善して、利
用者品質の向上を図ることはIT化を進める上で重要なポイントとなります。

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■執筆者プロフィール

 西田 則夫(Nishida Norio)
 情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ

 マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。

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