アップルとグーグルの代理戦争としても注目を集めていた、米アップルと韓国サムスン電子との間におけるスマートフォンやタブレット型PCの特許訴訟について、先月、米国カリフォルニア州の連邦地方裁判所はサムスンのアップルに対する一部特許侵害を認め、サムスンに約10億5000万ドル(約826億円)の支払いを命じる評決を下しました。
争点となった特許7件のうち、アップルの携帯電話iPhoneの形状やアイコンなどのデザインや、タッチ操作の技術に関する6件でサムソンの特許侵害が認定され、アップルは25億ドル以上の賠償請求額の約4割を勝ち取ったと言われています。ただ、同様の訴訟は世界10カ国・地域で起こされており、オーストラリアではサムスンが実質勝訴するなど各国で判断が分かれています。今後、世界のスマホ市場で首位を走るサムソンと、アップルの販売戦略が注目されます。
アップルとグーグルの特許紛争のようにITの世界では、常に法律との関係は付きまとうもので、我々に身近なインターネットを活用した販売においても法律上、販売者が最低限気をつけておくべき事項がいくつかあります。今回はその概要を見てみたいと思います。
今日においては、自社のホームページにおいて消費者に商品を販売することは、多くのメリットがあり、これから販売を検討されている方々も多くいるかと思います。自社のホームページに広告を出すことで、新聞広告やTVのCMを使用しなくても小額の予算で済みますし、消費者にダイレクトに広告を出させることで直接商品や自社の特長を訴求することができます。また消費者からすると、相手の時間を気にすることなく、ネットで注文することができるのは大変便利であり、決済方法もクレジットカードや電子マネーなど便利な手段が利用できるのは大変ありがたいです。矢野総研によると、平成22年度のネット通販取引額は前年比で16%増7.8兆円になったとのレポートがあります。これは百貨店や総合スーパーをしのぐ取引規模であり、もはや販売活動においてネット市場は無視できない存在になっています。このような市場の拡大を背景に、以前から消費者とのトラブルを防止するために、WEBサイトで商品やサービスの広告を行い、その商材を一般消費者に販売する場合(いわゆるBtoC取引)には、販売サイトを運営する事業者に、いくつかの法令遵守義務が課されるようになりました。
WEBサイトでの販売においては、販売者は一般消費者と電子商取引を行うことになります。消費者の中には、インターネットでのショッピングに慣れていない人や、良識な判断ができない未成年者なども含みますし、インターネットという特性上、購入内容や説明内容の確認が不十分であったり、WEBの操作ミスによる誤発注など、様々な問題が起こりえます。このようなインターネットでの電子商取引においては、販売業者は、電子消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、個人情報保護法、特定電子メール法の規定に留意する必要があります。以下、これらの法律の趣旨・目的を簡単に見てみます。
(1)電子消費者契約法
電子商取引契約については、基本的には民法に規定する基本ルールによります
が、それのみでは対応することができない「消費者の操作ミスによる錯誤」、「隔地者間の契約」の成立時期について、民法の原則を修正しています。
(2)特定商取引法
訪問販売、通信販売等の特定商取引の公正な取引と消費者等の損害の防止を目的にし ています。電子商取引においては、サイト運営者は、「販売業者名」・「住所」・「電話番号」・「支払い方法」などを分かりやすく表示する義務があります。
(3)景品表示法
商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限しています。
最近では、消費者庁は「コンプリートガチャ」「コンプガチャ」と呼ばれるゲームサービスや特定の口コミサイトを景表法違反と判断した事例があります。
(4)個人情報保護法
個人情報保護法は、個人情報の「保護」と「活用」のバランスを図かりつつ、個人情報を取り扱う事業者に個人情報の適正な取得・利用、安全管理措置、第三者提供の制限、消費者から個人情報開示に応じる義務等を規定しています。
(5)特定電子メール法
多数の消費者に対してされる電子メールの送信等に一定のルールを課し、膨大な迷惑メールを防止することを目的としています。あらかじめ受信を承諾した者以外への広告メールの送信禁止、送信者の表示義務、送信者情報を偽った送信の禁止等が規定されています。
最後に、BtoC取引においては、一般消費者の方が対象となります。企業が売上を伸ばすには信用第一をモットに、お客様から信頼されるようなWebサイトの制作を行うことが必要になります。自社のサイトが、もし売上第一主義に偏っていて、誇張的な表現があったり販売条件の記載が足りないといった点で思い当たるふしがあれば、是非、この機会に再検討されてはいかがでしょう。
(参考文献)
・経済産業省ホームページ http://www.meti.go.jp/
・消費庁ホームページ http://www.caa.go.jp/
・総務省ホームページ http://www.soumu.go.jp/
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■執筆者プロフィール
松山 考志
宅地建物取引主任者