情報システムのリプレース・リコンストラクト・リフォーム / 岩本 元

1.情報システムの見直し
 多くの企業が業務の効率化やスピードアップを目的として、各種の情報システムを利用しています。法令順守(コンプライアンス)や情報セキュリティ確保のためのシステムもあり、今や情報システムは企業活動に欠かせません。
 その情報システムを構成するハードウェアとソフトウェア(OS、ミドルウェア、アプリケーションパッケージ)にはメーカーが設定する保守期限があります。保守期限を越えた製品についてメーカーは問合せに答えたり、不具合を修正してくれません。ハードウェアは故障時の予備部品が提供されず、ソフトウェアはセキュリティパッチが提供されない点も注意が必要です。したがって、通常、保守切れに併せてハードウェアやソフトウェアを定期的に更新することになります。また、企業の事業内容を変更したり、業務改革を行う際には情報システムのアプリケーション機能の大きな変更・改善を伴います。このように、情報システムは、新規構築してから廃止するまでのライフサイクルにおいて、定期的に構成要素を見直す必要があります。その方法には、リプレース、リコンストラクト、リフォームがあります。

2.情報システムのリプレース
 リプレース(置き換え)は、情報システムのハードウェアやソフトウェアをあらたなものに置き換えることです。通常、保守期限対応や性能改善のために行います。
 リプレース後に現行OSをそのまま使用できる場合、リプレースのコストは比較的小さくなります。新規ハードウェアが現行OSのバージョンと対応しない場合は、OSのバージョンアップが必要となり、それに伴ってミドルウェアのバージョンアップや変更、さらにアプリケーションの対応を要してコストが増加していきます。
 リプレースにおいては、新規ハードウェアとして仮想サーバ技術やクラウドコンピューティング(IaaS)を利用して、ハードウェアの性能を確保しつつ、ハードウェアに関する全体コストを下げることを検討しましょう。

3.情報システムのリコンストラクト
 情報システムのアプリケーション機能は、業務内容の改善や法令変更等に対応して追加・改修していくことになりますが、それを繰り返すとアプリケーションの内部構造が複雑化して、追加・改修の一時コストが増大し、アプリケーションの保守コストも増大していきます。その場合は、情報システムを一からリコンストラクト(再構築)することになります。
 ハードウェア・ミドルウェア・アプリケーションの開発言語等を全て変更するといった大規模なリプレースのコストは、リコンストラクトのコストとあまり変わりません。そこでアプリケーションの機能改善も実施内容に加えて、リコンストラクトを実施します。リプレースとリコンストラクトを合わせたものを広い意味のリプレースと呼ぶことがあります。
 リコンストラクトにおいては、従来はアプリケーションとして開発していた機能をパッケージソフトウェアやクラウドコンピューティング(SaaS)に置き換えることで、リコンストラクトの実施コストおよびその後の運用コストを下げることを検討しましょう。

4.情報システムのリフォーム
 リプレースとリコンストラクトの中間がリフォームです。アプリケーションの機能は変更せずに、大規模なリプレースをリコンストラクトより低いコストで実施するものです。
 例えば、ハードウェアとOSをメインフレームからオープン系サーバに変更、DBMS(Database Management System)やバッチジョブの実行環境をオープン系の製品に変更、さらにアプリケーションの開発言語を変更するといったレガシー系システムの大規模なリプレースを実施する際、アプリケーションのソースコードや画面・帳票の定義データを変換するツールを用いることで、アプリケーション
を低コストで変更します。なお、ツールによる変換が困難な部分は、アプリケーションの仕様書に基づいて人手により書き換えます。リフォームは、開発言語だけをVisualBasicからJavaに変更するようなケースにも適用可能です。

5.情報システムの長命化
 情報システムのTCO(Total Cost of Ownership)を抑えるには、リプレース、リコンストラクト、リフォームの頻度を小さくすることが重要です。すなわち、情報システムのライフサイクルを長くすることが求められます。
 ハードウェアの調達時は、保守期間のより長い(かつ安価な)製品を選択します。ソフトウェアの調達時は、メジャーバージョンアップの頻度が少ないもの、バージョンアップの与える影響が小さい製品を選択します。オープンソースソフトウェアは、コミュニティがしっかりしていれば、バージョン間の仕様が安定しているものを安価に使用することができます。そして、アプリケーションを構築するにあたっては、業務内容の変更に柔軟に対応可能なアーキテクチャであるSOA等の採用を検討しましょう。また、PC端末のOSやミドルウェアのバージョンアップの影響を受けないよう、Webアプリケーションとして構築します。
 なお、クラウドコンピューティングを利用すれば、クラウドベンダ側でライフサイクルに対応してもらえます。IaaSの場合にユーザはハードウェアの長命化とリプレースを考える必要がなく、SaaSならばOSやミドルウェアの長命化とリプレースも考える必要がありません。

 既に多くの企業が情報システムを導入している状況においては、新規構築より適切な見直し方策と長命化が重要です。

————————————————————————
■執筆者プロフィール
 岩本 元(いわもと はじめ)

 ITコーディネーター、技術士(情報工学部門、総合技術監理部門)
 &情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、システム監査他)
 企業におけるBPR・IT教育・情報セキュリティ対策・ネットワーク構築のご支援