最近、中小企業の中でも、少しづつソーシャルメディアの活用を進めている企業が出てきている。最新の調査でも、ソーシャルメディアの企業利用率は36.9%で、1年前より約10%の上昇との事。しかし、とりあえず導入した、という状況がほとんどではないだろうか。
しかし、最近の環境変化は、会社の規模に関係なくその変革を迫り始めている。
ソーシャルメディアを使い、コミュニケーションの密度を上げることにより、企業の持つ魅力を広く伝え、ブランドイメージをアップし、結果的に、顧客満足度が上がり、売上アップにつながることが可能となる。
そのためには、ソーシャルメディアの特性を理解し、企業活動全体の中での最適化を考える必要がある。
現在の多くの経営者の意識では、社内でキチンとした体制を作ることが難しい。
しかし、厳しい状況ながら、既存組織、チャネルを上手く活用することで、結果を出している企業もある。支援事例や成功事例から少し考えて行きたい。
まずは、現状を理解する事が肝要である。
次は、小さな範囲からソーシャルメディアを活用する。
そして、全社、顧客へその活用を広げる。
この流れは、経営トップがソーシャルメディアを理解し、推進する場合、担当者がまず、社内で推進する場合、いずれも、似たような形になるようである。
1.まずは自社を理解する。
facebook、twitter、ブログ等導入している企業は増えてきている。しかし、安易な導入は、概ね、長続きしない。
以下のような点をチョット考えていただくことが必要なのでは?
1)自社の顧客がソーシャルメディアを活用すべき顧客なのであろうか?
ターゲットとしている企業はどこなのか?自社の市場でのポジションはどのようになっているのか?
幾つかのご相談のあった企業でも、この質問の時点で、ハタと止まる。
もし、特殊な製品、サービスを扱い、特定顧客のみのビジネスであれば、無理にソーシャルメディアを導入する必要はない。
もっとも、将来的な姿をキチンとの考えであれば、逆に良いことではあるが。
2)実施するための社内リソースは大丈夫なのか?
先行している大手や中堅企業には優秀な人材がいる。
・ネットに詳しい人
・コミュニケーション能力の高い人
・会社含めた関連情報に詳しくて積極的に外に関わりたい人
・元々マーケティングへの理解と予算が大きい。
・新規な取り組みへの文化がある。等など
ソーシャルメディアへの理解が低い社内での人材と予算の確保は出来るのか?
もっとも、成果を出している企業は社長自身がコツコツと、担当者が仕事の合間にコツコツと頑張っている。
そして、その手軽さがソーシャルメディアの特長でもある。
2.小さな範囲からソーシャルメディアを活用する。
チョット進めてみようとの雰囲気になったなら?「傾聴」というやり方がよい。
・顧客、パートナーは自社の製品、サービスをどう思っているのか?
・顧客、パートナーは他社の製品、サービスをどう思っているのか?
表面的なコメントや要望だけではなく、「人と関連性」を分析、理解することがソーシャルでは重要となる。ソーシャルメディアでは人が中心であり、「話題抽出から人で分析」が基本となる。
「その分析と対応」について、
1)既存顧客はほとんどソーシャルメディアを使用していない場合は、既存の顧客と顧客の顧客がどう思っているか?も考慮して、最終的には、「導入しない」事も考える。
2)既存顧客にソーシャルメディアユーザが多く、接点として有効であり、しかも、競合他社が先行している場合は、積極的な社内説得を含め、マーケティング拡大として取り組む必要がある。
3)自社製品への不満が多い場合は、サポート強化の点から関連部門も巻き込み、取り組む。
3.全社、顧客へその活用を広げる。
自社ブランドを製品、キャラクター、販売チャネルを使って拡大させる。
1)既存資産の活用
twitterのフォロワー、facebookのいいね!の拡大によりファンの顕在化を図る。
・社員がまずフォロー・店舗などのフォロー・営業のフォロー
・リアルマーケティング(チラシ、DM他)での実施
・Webマーケティングでの実施
・ボタン設置、メール告知、など
他のメディアとの連動を考える事は、かなり効果がある。
2)既存チャネルでの数字の増加による社内認知度アップ
まずは、出来る範囲からその実績を数字化し、体制強化、予算アップを図る。
Webサイトのアクセスアップ、イベントの集客数、コールセンターでのコール数等により見込み顧客数の増加、商談化数が増加したこと等の説明をして行く。
そして、社会とつながり、社内のソーシャルネットワーク化により、外部変化、顧客意見などに素早く対応する組織となることが最大の効果でもある。
・社会のソーシャルネットワークと深くつながり、リアルタイムに動ける。
顧客の声、問合せ、製品開発へのアイデア、改善
・社内のソーシャルネットワークにより、現場とリアルな情報の共有が出来る。
社内情報、顧客の不満、製品への回答
なお、最新の調査では、大企業の経営トップでも、ソーシャルメディアの扱い方についてまだまだ迷いがあるようである。
「顧客とのより密接な関係構築」作り、是非、一歩進んだ対応を願いたいものである。
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■執筆者プロフィール
小久保弘
ITコーディネータ、販路コーディネータとして、中小製造業をを中心に 経営戦略、新規事業支援、IT化支援を実施している。
また京都、滋賀にて研究会を開催し、具体的な課題を参加企業とともに検討している。
詳細は、http://www.kokusan-itsien.jp/