中小企業の成長戦略の道程 / 玉垣 勲

○景気回復は本物か?
 日経平均株価がここ数カ月で急伸し、12千円を越え年間で23%の伸びとな
りました。デフレ脱却が、現政権の最重要課題をされ、アメリカの景気好転もあ
り円高基調に歯止めがかかり1ドル90円台前半となっており、95円~100
円を期待する声も産業界では出てきています。そのことで、ゆるやかな景気回復
の期待感先行が寄与しているところもありますが、実体経済、国民生活レベルで
はいまだ実感できていません。
 物価指数の上昇を2年で2%とする目標を新日銀総裁が明言してアべノミクス
を後押しするテコ入れが奏功していますが、景気回復が本格的なものとなるかど
うかは、しばらく様子をみないと判然とはしません。
 京都中央信用金庫が先頃発表した、この1~3月期の「景況調査」でも「円高
修正」の効果は中小企業には浸透するには至っていません。ただ今後については
業況の好転には期待が込められています。
 長期にわたるデフレは十数年前のITバブルの崩壊、5年前のリーマンショッ
ク、2年前の東北大震災がデフレ脱出の芽を摘んでもきました。将来の天災、外
部のリスクは、予測、予期が困難ではありますが、期待・希望を将来に抱き行動
することは大切ですが、同時に「備えあれば憂いなし」のリスク管理も看過でき
ない時代、世代であることを銘記したいものです。

○成長戦略の構築に向けて
 大胆な金融緩和が当面続行されますが、それのみで景気の回復には限界があ
ります。GNPの6割強を占める個人消費が上向くためにも企業活動が元気に事
業を展開できる環境を創造していかねばなりません。金融緩和策は究極的には企
業の設備投資を促すものとなることが不可欠です。設備投資の更新、新設が不振
であったことが長きに亘る景気低迷の大きな要因でもありました。そのことは金
融機関の貸出残高の伸びの停滞に端的に表れています。
 企業は社会のためゴーイング・コンサーン(長期的、継続的な発展)を使命と
しています。企業はいつの時代も生き残りを賭けて自己革新、経営革新につとめ
なければなりません。変化、流れに身を委ねることなく、その変化に対応する柔
軟性とスピーディな対応力が問われます。景気の転換点にあるいまは、短期、即
効性にとらわれることなく中・長期の成長戦略の構築をはかる好機と捉えたいも
のです。
 日本は、世界的にも優れた技術力、優秀な人材、それに”おもてなしの心”を
保有しています。天然資源は乏しくとも、この技術力、人材力はまさにかけがえ
のない知的資源であり、この宝庫のさらなる発掘、活用は、成長戦略を確固たる
ものに導くカギです。企業は規模の大小を問わず自らの個性、強みの再発見、再
開発を念頭に主体的な成長戦略・計画の樹立、工程(プロセス)表の策定とその
果敢な実践のPDCAの好循環の事業モデルに発展させるべく英知と行動力を結
集したいものです。

○中小企業の生き残り策のカギは
 言うまでもなく地域経済発展の核となるのは地域に根ざし、密着した地元中小
企業の存在です。この中小企業は、機動力、柔軟性に優れ、地域の活力、貢献に
尽くしています。中小企業にとっての経営課題の第一は、「人材育成」にありま
す。
地域に根ざす企業にとって社員を育ていかに雇用を維持していくかにあります。
経営の評価指標の一つについて、財務諸指標の対前年比伸び率がありますが、そ
れは社員の成長を図り、会社の経営基盤が整ってこそにあります。
 社会環境の変化が大きな時にあっても経営を継続できる組織力、また既存事業
が困難になった事態で事業開発ができる人材を有していることが、「強い企業、
幸せな企業」と言えましょう。すなわち、新しい事業領域へのチャレンジ指向の
変革への意識と行動は不可欠なのです。今後の経済変動では、右肩上がりにのみ
とらわれず、人を大切にし強みを生かして変化に対応できる企業こそが生き残っ
ていくことでしょう。その際、内部経営資源に限りのある中小企業は、地域の支
援者である地域金融機関、公的支援団体、経営・税務・ITなどの各分野の専門
家の活用、サポートで足らざるを補うことが得策であり、肝要です。

○IT利活用による企業活力の増進を
 今日においては、情報化社会の進展もあり、経営とITは、事業発展の「車の
両輪」とさえなっています。企業経営において、ITは機械化・自動化⇒合理化
で職を失うというイメージ、ITは人を本当に幸せにするのかとの疑念がなきに
しもあらずです。その疑念をはらすためにも、IT化を導入する、ITを活用す
るプロセスにおいて、社員が主体的に関われるようにすること、そして全社的視
点でものごとが見られる立場づくり、若手社員を積極的に参加させる仕組みが必
要です。情報システムの導入、活用を会社全体のレベルアップする手段」として
とらえ、社員自らが検討、また若手社員をプロジェクトの牽引役として参画させ、
部門間の調整を通じて社員全員が会社全体を知る機会を提供できる体制にしたい
ものです。
 そうすることで社員は「多能工」であるとの自信をもとに能力開発に磨きをか
け、持ち場にかかわらず会社全体の情報共有を通して社員の視野は広がり、経営
感覚も養われ、そのことがひいては「全員経営」”の活力を醸成するでしょう。
会社事情の現状認識の共有化で。課題も見つけられやすくなり、課題解決を早期
に見つけ出す近道となるでしょう。
IT利活用に積極的に関わることでIT化抵抗感を抱くことなく会社への愛着、
士気の高揚、社員相互の一体感は増幅され、そこから新たな事業の創出、展開へ
と発展する可能性が開けて来るものと思います。
 ITツールも日進月歩で多種多様となっており、会社の現状にフィットしたツ
ールの利活用は言を待ちませんが、最近では営業などのビジネスで活用可能なス
マートフォン、iPadの手頃なITツールが身近になってきました。
 また、情報化社会では、諸々の人、情報のネットワークの連携、活用が欠かせ
ません、重ねて申し上げることになりますが必要に応じて、IT利活用に外部の
公的支援機関、地域金融機関、その筋の専門家のサポートを依頼してはいかがで
しょうか、予期せぬ経営開発のヒントが得られるものと存じます。 

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■執筆者プロフィール
 玉垣 勲
 IT経営・代表、労務管理事務所・所長
 (中小企業診断士、通訳案内士(英語)、ファイナンシャルプランナー)

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