すぐに始めようITコスト削減 / 岩本 元

現在、何らかの情報システムを使用していない企業はないでしょう。その中には、長期間使用し改修やリプレースを繰り返す内に、ランニングコストに無駄が蓄積しているものがあります。また、情報システムのコストを低減するための仕組みも新たに登場しています。本稿では、無駄を省き、新たな仕組みを活用することによって、情報システムや情報機器といったITに関するコストを削減する方策について述べます。
 以下に示す方策は並行して検討するものですが、筆者の考える優先度の高い順に並べています。

・IT資産の棚卸しと不良資産の解消
 アプリケーションや情報機器等のIT資産を棚卸しして、機能が古くて現在の業務手順に合わなくなったために業務効率化等の当初の導入効果が得られなくなっているものはないか、使い勝手や性能が悪かったりマニュアルやヘルプデスク等のユーザーサポートが悪いためにユーザーがほとんど使わなくなっているものはないか、といった観点で不良資産を抽出します。次にユーザーサポートの改善による使用の促進、改修・増強/置き換え/再構築/廃棄を実施して、不良資産の解消を図ります。この目的は資産価値を回復するものであり、コストが減るとは限りません。

・延命
 情報システムや情報機器をそのまま使用し続ける場合、将来、保守切れになっても使用することを検討します。保守切れのまま使用する主なリスクは、不具合が生じた場合に問合せできない/改修・部品交換されないことです。端末側の環境(WindowsやWebブラウザのバージョン)を変えるときに不具合が出ることが多いことに留意して、そのリスクがいつ顕在化するか、リスクを許容できるかを検討することになります。リスクが許容できない場合は、保守契約を特別延長する見積もりをベンダから取って、置き換え/再構築のコストと比較しましょう。

・パブリッククラウド(コンピューティング)の利用
 IT資産の置き換え/再構築の際、パブリッククラウドを利用することでコスト低減を図ることができます。パブリッククラウドは、サーバやその上で稼働するアプリケーションを自社で保有せず、サービスとして提供されるものを利用するものです。最初のキャッシュアウトが小さくサービスが不要になったら解約すれば後のコスト(自社保有する場合の原価償却費)が掛からない、保守や運用の負担から逃れることができる、保有する場合に比べ調達期間が短いといったレンタルサービスに近いメリットがあります。注意すべき点は、サービスを大規模かつ長期間使用するときは自社保有の方が低コストの場合があること、多くのサービスでは情報セキュリティや稼働性等のサービスレベルが保証されないことです。
 特に、アプリケーションのパブリッククラウド(SaaS)は、アプリケーションを自社に合わせる改修が困難である一方、アプリケーションを自社で開発・保有する場合より大きなコスト削減が実現可能です。

・サーバの統合
 多数のオープン系サーバを仮想化技術等で統合することによって、自社で保有するサーバの構築および保守運用のコストを低減することが可能です。この手法はパブリッククラウドに対してプライベートクラウドと呼ばれます。ただし、サーバ数の総計が少ないときや短期間しか使用しないサーバが多い場合には、プライベートクラウドのベースとして掛かる定額の保守運用コスト(固定費)より、パブリッククラウドのサービス利用料に含まれる保守運用コスト(変動費)の合計の方が低額となります。

・競争発注
 IT資産の置き換え/再構築を自社保有で行う際、物品購入や業務委託の発注を入札することでコストが下がることを期待できます。付き合いの長いベンダにはこちらの言いたいことが伝わりやすく効率的というメリットはありますが、大きなコスト削減が期待できる場合や新規技術の提案を受けたい場合には競争発注とすべきです。例えば、イニシャルとランニングの合計費用がある基準を超える案件については競争発注することにします。競争発注には、一般的かつ明確な内容で発注仕様書を記述することが必要であることに注意しましょう。

・オープンソースソフトウェアの活用
 LINUXやPostgreSQL等の無償のオープンソースソフトウェアを使用することで大きなコスト低減を実現できます。ただし、ソフトウェアのチューニングや不具合対応のために一部のベンダが提供する保守サービスを利用すべきです。したがって、そのランニングコストを見ておく必要があります。

・メインフレームやオフコンからの脱却
 メインフレームやオフコンのハードウェアやソフトウェアの構築および保守運用のコストは、オープン系サーバのコストよりかなり大きいものです。また、メインフレームやオフコンの運用のスキルやノウハウは特殊であり、それを維持するためのコスト(教育や固定ベンダへの委託)も問題です。そこで、コスト低減のため、メインフレームやオフコンから脱却する事例が増えつつあります。ただし、脱却のためのアプリケーションの修正または再構築は一般に大規模なプロジェクトとなり、一時コストも大きいものとなります。

・保守契約の見直し
 保有しているハードウェアおよびソフトウェアの保守契約の内容を確認します。
まず、定額方式の保守契約を止めて、トラブル等の都度に対応費用を支払うスポット方式に変えることを検討します。次に、使用しない数量分の契約、保守時間帯の無駄(夜間・休日など)をチェックします。ベンダが保守契約中の人件費を提示していて、それが実動と大きく乖離している場合は費用の低減を要求します。
ここで、ベンダとの関係を無駄に悪化させることの無いよう、単なる○%削減でなく合理的な削減を要求すべきです。

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■執筆者プロフィール
 岩本 元(いわもと はじめ)

 ITコーディネータ、技術士(情報工学部門、総合技術監理部門)
 &情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、システム監査他)
 企業におけるBPR・IT教育・情報セキュリティ対策・ネットワーク構築のご支援