企業内ソーシャルをビジネスに活かす / 杉村麻記子

【浸透したICT】
FacebookやTwitter、LINEなどのソーシャルメディアは、スマートフォンの普及と共に一般的なコミュニケーションのツールとして広く普及してきました。
各企業はこれらのソーシャルメディアをつかって、一般の生活者に対して様々なマーケティング活動やビジネスに活用をしています。このあたりのコラムは、すでに何人かの執筆陣が紹介しています。詳しくは、ITC京都のHPに「経営とITの話」のバックナンバーがありますのでそちらでご確認ください。
<https://www.itc-kyoto.jp/column/>
本メルマガでは少し視点を変えて、企業内でのコミュニケーションや情報共有のあり方を考えてみたいと思います。

皆様もご承知の通り、ICTはビジネスをする上で欠かせないツールとなりました。
以前のようにICTを使うことが目的ではなく、現在はICTを活用して仕事をすることがあたりまえのこととなっています。大企業はもちろん、中小企業や個人商店でも、パソコンやスマートフォン、メールやインターネットを使わないと仕事が回らないでしょう。ところがこんな便利ははずのツールが、実は効率的な仕事の進め方や企業内や企業間のコミュニケーションを阻害していることもあるのです。

【メールとファイル共有の弊害】
もし皆さんがイベントを企画することになったと仮定します。社内や企画会社の人とイベントの内容を検討していく場合にはどのようにやり取りをするでしょうか? 直接会って話をしたり、電話でやりとりすることも多いでしょう。ただ、同じ社内であっても時間がとれないこともあります。社外とのやり取りを考えると、手っ取り早くて確実な方法として「メールを使ったやり取り」を選択することが多いでしょう。さらに企画内容や配布するチラシや会場でのシナリオ、招待客のリストなどをワードやエクセル、パワーポイントにしてパソコンやサーバーの中に保存して、社内の関連するメンバーで共有することもあるでしょう。
メールでの連絡やファイルの共有・・・ごく普通のお仕事の進め方ですが、ここにはみえない落とし穴が潜んでいます。メールやファイル共有といったツールは、当事者しかわからない情報が多く、「複数名で一緒になって対面しながら進める」のと同じレベルで情報共有することは難しいということです。
基本的にメールはやり取りをした当人同士だけの情報共有です。それを避けるために、関係者全員にCCメールを送ることもありますが、だれに対して相談しているのかわからないメールをちゃんと読んでいる人はいったいどのくらいいるのでしょうか?

【企業内ソーシャルでできること】
FacebookのグループやLINEのグループでのやりとりを思い浮かべてみてください。楽しい仲間で様々な会話が行き来したり、写真が共有されています。同じ時間を共有していなくても、過去のやり取りをさかのぼって確認することができるので、あいだをおいていても、途中から参加しても、そこでどんなやり取りがされていたのかを時系列で追いかけることができます。まるで仲間で集まって話しているのに近い感覚で、バーチャルで情報交換・共有ができる。これがSNSのようなソーシャルでの情報共有のすごさです。
従来型のやり方の弊害に気づいた会社では、すでに社内のやり取りをメールからソーシャルに切り替えているところもあるようです。もちろん社内だけではなく、社外の会社と情報を共有することもできます。
企業内ソーシャルでは、業務を進める上の連絡や情報共有に加えて、業務上の問題点や困ったことやその解決方法を先輩や同僚に相談するなど新たな知識の創造に一役買っているケースもあるようです。
雑貨を取り扱う複数のお店を持つある会社では、陳列やPOP等について、店員がスマートフォンで写真を撮り、工夫したことやお客様の反応なども含めて社内ソーシャルにアップします。普段あまり顔を合わせることがない店員同士が、うまくいった成功事例やうまくいかなかった失敗事例を共有することで、各店舗の売上げに貢献しているようです。この会社では、有益な情報を共有した店員を表彰するなどして、社内情報共有やコミュニケーションの活性化に積極的に取り組んでいます。

【活用する3つのポイント】
このように企業内でコミュニケーションのあり方が、従来のメール中心型から、ソーシャル活用型へと進化してきています。最後に企業内ソーシャルの活用ポイントを3つあげてみます。
1)目的を明確にする。ツールありきではありません。
企業内ソーシャルについても、SalesforceのChatterやMicrosoftのYammerなど企業向けのSNSサービスを提供するベンダーも増えてきています。お決まりのことばですが、他のICT導入と同様にどのツールを使うかではなくまずは、目的は何か? どんな課題とどう解決したいか? といったことを明確にしたうえでその実現方法として企業内SNSが有効であれば使う・・といったスタンスで導入するべきです。

2)使い方のルール、手引きをつくりましょう。
業務システムとは違い、SNSは対面と同じ環境で情報をやり取りするのを支援するツールですので、ある程度自由な雰囲気で何気ない会話を促進することが必要です。一方で、制限をしなさすぎると本来の目的ではないことでしか使われなくなるという危惧もあります。
これらを避けるためには、企業内SNSはどんなルールでどういう会話をすればいいか? 業務でうまくつかうにはどうすればいいのか? それが分かるような手引きをつくり示しておく必要があります。

3)社長(TOP)自らつかってみて
社内で認知されるためには、社員から興味を持ってもらうことが重要です。
「企業内SNS導入をしたけれど、若手社員だけで遊びのように使っているだけ・・」という評判になれば、失敗といわざるを得ません。SNSの利用を対象者全員に広げるためには、社長(TOP)自らつかってみて、社内に認知させていくといった方法も有効です。

————————————————————————
■執筆者プロフィール

杉村麻記子
ITコーディネータ・中小企業診断士
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社勤務