会社の寿命は30年なのかを考える / 柏原 秀明

■ はじめに
 今から約30年前,「会社の寿命は30年である」[1]といわれ,ビジネス業界が
一斉に注目した時期があった。ここでは,最初に30年までの寿命の会社の特徴と
それ以上に寿命を延ばした会社の特徴について振り返る。そして,これらの特徴
は,現在活動中の会社が長寿命になるための羅針盤として今でも十分通用するの
か,また,21世紀のビジネス環境に合わせた新たな特徴には何があるかについて
考察したい。

■ 30年までの寿命だった会社の特徴
 1984年時点での30年までの寿命だった会社の特徴は,大別すれば「トップ経営
者が目先の繁栄に目を奪われ,変身努力を怠ったこと」,もしくは「無謀な多角
経営に走りすぎて,寿命を絶やしたこと」の2つのいずれかであると述べている。
また,日本電気株式会社元会長は,「企業が成長段階から成熟,そして,衰退期
を迎えるライフサイクルは,何もせずに放っておく限り30年程度にしか過ぎない」
と述べている。
 このことは,隆盛を極めていた会社は,「現在持っている常識,現在行ってい
る判断や行動の方法,その基準となっている現在に至るまでの実績といったこと
がらから離れて自由に将来を予測することができない。現在,安定しているもの
は将来もまた安定してると,つい信じこみがちである」と示唆している。
このような楽観主義的な会社は,この危うさに気づいた時には既に寿命が見えて
いる。まさに,“茹(ゆで)でガエル”状態の現実に直面するのである。

■ 30年以上に寿命を延ばした会社の特徴
 寿命を延ばした企業には,次のような特徴があるといっている。
・先を見通したトップリーダーの鋭い決断
 将来へ向けての時代の変化の先読みと仮説に基づく布石への対応
・社風一新,沈滞を破る
 新時代に対応するには社風一新こそ不可欠
・危険を冒して活力を出す
 既存事業から経営資源を活用し,将来期待できる新規事業へのチャレンジをお
 こなう
・大樹に寄りかからない
 好調な収益事業(大樹)に目を奪われるのではなく,逆風が吹く前に脱出準備
 を行うこと
・“ムダ金使い”の勇気を 
  将来有望な新規事業を実現するためには,その種になるテーマを厳選し,リ
スク覚悟で決断・投資すること

■ 21世紀に活躍している会社への教訓
 30年前の会社の寿命は30年と言われているが,現在活躍している多くの会社の
寿命は5年とも10年とも言われている。その理由には,情報通信技術,特にイン
ターネット・Web・モバイル技術の急速な発展によって,理工系の縦糸技術革新
や新規のビジネス創出などが今まで以上に速くなったことが主要因と考えられる。
しかし,30年前にいわれた企業の寿命を決める特徴要因は,現在でも基本的な考
えは十分に通用すると考える。
21世紀の外部環境は,5大陸を視野に入れたグローバル化が加速度的に進展して
いる。21世紀に活躍している会社は,30年前に寿命を延ばした会社の基本的な考
え方を道標にして,一層の速さで実践すれば成功のチャンスは増大すると考える。
一方,GEの元会長兼CEOのジャック・ウェルチは,ビジネス・リーダは,「過ぎ
去ったことは,もうどうにもできない。正しかろうと間違っていようと,良かろ
うと悪かろうと,どうにもできない。過去から学ぶものはあるが,たいして役に
立たない。ビジネス・リーダは明日に生きる人間であり,昨日から抜け出そうと
懸命に努力する人間である」といっている[2]。このことは,ビジネス・リーダ
は,30年前の特徴要因に加えて,非線形なビジネス環境の変化の芽を敏感に気づ
き,それを将来の付加価値に結びつける力,それを商品・サービスに結びつける
力を具備し,組織を活用し実行に移す能力を持たなければならないと言っている
と考える。

■ おわりに
 ここでは,会社の寿命の特徴を定性的に振り返り,21世紀に活躍している会社
は,基本的な特徴要因に加えて,ビジネス・リーダは,“会社の明日をどうすれ
ばよいかに集中する”ことが重要であることを示した。
 アベノミックスによる三本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)の提唱と実
行により,日本経済に大きな揚力が発生し,常勝気流に乗り始めたように思われ
る。このことは,1990年代初頭に発生したバブル崩壊からの“失われた20年”の
長いトンネルを抜けだし,夜明け前の好機にさしかかっていると期待できる。そ
して,多くの会社が,30年以上に寿命を延ばした会社の特徴を大いに学び,日本
の若者たちに自身の実力を大いに発揮できる機会を提供していただくことを望む。

参考文献
[1] 日経ビジネス編,「会社の寿命“盛者必衰の理”」,日経ビジネス,1984年
[2] ロバート・スレーター,「ウェルチ リーダーシップ31の秘訣」,日経ビジ
  ネス人文庫,2001年

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■執筆者プロフィール

柏原 秀明 (Hideaki KASHIHARA)
京都情報大学院大学教授,柏原コンサルティングオフィス 代表
NPO法人ITC京都副理事長・理事

博士(工学),ITコーディネータ,技術士(情報工学・総合技術監理部門),
EMF国際エンジニア,APECエンジニア

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