身近に感じたクラウドサービス / 松山考志

 先日、パーソナル・デジタルビデオカメラを購入する機会があり、もともと購入の検討対象にしていなかったメーカーの製品を購入しました。理由は、機能と価格のバランスがよかった点と、自分で録画した動画をメーカーのクラウドサービスを利用し、家族や友人と簡単に共有できるという点に惹かれました。実は、最初に購入を考えた際、録画した動画や写真をDVDにコピーして相手に渡すことを考えていたのですが、ちょっと面倒だなと思っていました。そのような時にタイミングよく店員の方が「会員登録をすればクラウドサービスを利用し、いつでも簡単に知り合いの方に動画や写真を簡単に共有できますよ」、「しかも無料です」と教えてくれた一言が、購入の決め手になりました。これまで個人でクラウドを利用することはメールや自分で作成したドキュメントを保管する程度で、クラウドが便利だと思ったことはほとんどありませんでしたが、「クラウド」の存在をとても身近に感じた瞬間でした。

 昨今のようにモノがあふれている時代で、同じような機能を持った製品を複数のメーカーが販売している状況においては、消費者はカタログだけ見ても商品のよさが簡単に分からず、同じようなものがあれば価格の安いものを購入してしまうでしょう。販売者側はついモノを売ろうとしてしまいがちですが、モノの差別化ができない今日では、お客様はモノではなくサービスを求める傾向が強くなっています。また、なかなか景気が回復しない現状では、モノを購入するよりは必要な分を必要な時間だけ使用するニーズが強くなっています。営業現場に出ると、本当にお客様はサービスを求めていると実感することが多くなりました。

 ITの話に戻りますが、MM総研の調べでは国内クラウド市場は急成長を遂げており、2017年度には市場規模が2兆円に達する見通しということです。2012年度の国内クラウド市場は5千億円程度、その後5年間は年平均32.0%の成長を続けるとの予測です。クラウド採用の基準が「コストが安い」から「セキュリティレベルの高さ」にシフトし、情報漏えいやサイバー攻撃、ウィルス感染などの脅威に対して一定の関心があることも新しい傾向になっています。実際、私自身、自分が利用しているWebサービスがサイバー攻撃の被害に会い、数ヶ月サービスを利用できなくなることを経験しました。自分自身は被害に会いませんでしたが、顧客データが盗まれる被害も発生しています。ベンチャー企業が提供しているサービスでしたので、まさかこのサイトが被害に会うとは思っていませんでしたが、規模の大小関係なくサイバー攻撃の被害に会うリスクを認識する必要があると感じました。クラウドには確かに、利用者にとってはコストを抑えてITを活用でき、企業にとってはクラウドを使って価値あるITサービスを提供することができるというメリットがあります。一方で、このような事故が発生するリスクがあることも認識した上で利用する必要があります。

(参考)
・MM総研ホームページ ニュースリリース
 http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120130828500

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■執筆者プロフィール

松山 考志
宅地建物取引主任者