テレビメディアの未来 ~2020年東京オリンピックを何で見るか
「あまちゃん」「半澤直樹」と今年のテレビ番組はひととき世間で大きく話題となり、我々をその世界に魅き込んでくれました。「じぇじぇじぇ」や「倍がえし」は流行語大賞の強力な候補としても巷で名前が上がっています。
オリンピックが2020年に東京で開催されることが決まり、その頃にはメディアとしてのテレビはどのような形態で見られるようになるのか、少し考えてみました。
先の東京オリンピックは1964年に開催されましたが、これを機会にテレビの普及率は87.8%と飛躍的に増加しました。テレビがお茶の間の主役となり、家族みんなで1台のテレビを見るというような時代でした。
1972年の札幌オリンピックの頃にはカラーテレビが普及し、さらに1998年の長野オリンピックでは、ネットを通じて情報が見られるようになりました。
そしてこの10年メディアと取り巻く環境は大きく変化しました。
携帯されるデバイスの普及、ソーシャルネットサービスの普及、そしてユーザーによる情報発信、それが動画などにも広がりました。
テレビ放送が日本で初めて開始されたのは1953年。NHK放送文化研究所が実施した「デジタル時代の新しいテレビ視聴(テレビ60年)調査」は、この10年のメディア環境の変化の中でテレビ視聴の2つの傾向に注目しています。
ひとつは「カスタマイズ視聴」、もうひとつは「つながり視聴」というキーワードです。
「カスタマイズ視聴」とは文字通り自分好みにカスタマイズして見ること。
ハードディスク録画機、あるいはテレビ自体に録画機能が装備されるようになり、およそ6割のかたが録画したテレビ番組を見ています。
「自分の都合のいい時に見たい81%」「放送時間にしばられたくない38%」「時間を有効に使いたい37%」の方が、録画してみる理由(複数回答)をあげられていました。日曜日も仕事で「半澤直樹」が見られない。そんな時は録画しておいて後で見る、あるいは週末にまとめて見る、というような視聴形態を私自身も行っていました。
インターネットで「テレビ番組に関する動画」(番組そのものや、番組の一部を一般の人が加工したものなど)を見る人は全体の29%でした。その理由の問い(複数回答)には「見逃した番組を見るため46%」「見たい番組を好きな時間に見られるから41%」「過去の番組を見るため40%」「検索して見られるから36%」と続いています。
カスタマイズ視聴には、「テレビ番組を録画して好きなときに見る」という見方と、「インターネットを利用して自分で見たいテレビ番組を探してみる」という2つのカテゴリーに分けられて分析されています。
「つながり視聴」については、LINE、Facebook、mixi、TwitterなどのSNSでテレビに関する情報や感想を読んだり書き込んだりすることのある人は全体の22%でした。その理由の上位は、「他の人の感想を知ることができるから83%(そう思う+どちらかと言えばそう思う)」、「同じ好みの趣味の人と情報や感想を共有できるから」「面白い番組を知ることができるから」「番組や出演者の情報が手に入るから」がほぼ同じで63%と続いています。
感想や意見交換を通じて、つながって一緒に番組を楽しむというようなSNSのコミュニケーション機能を通じてのテレビ番組視聴形態が広がっています。スマートフォンを片手に友人とLINEでチャットしながら、Twitterに流れる番組へのつぶやきを眺めながらテレビを見ている、という人も多くなっています。かってのラジオ番組のはがきリクエストが、ネット時代のメール、SNSによる一緒に参加しているという意識に、誰かとつながっているという意識に取って代わってきているのでしょう。
さてそれでは2020年の東京オリンピックの映像はどのような見られ方をするでしょうか。7年先の世界、あくまで想像するしかないのですが。フルハイビジョンテレビの4倍の解像度を持つ4Kテレビも2014年には試験放送がスタートされます。個人的には特殊用途以外でそこまでの映像が必要なのかと少し疑問に思ってしまうのですが。
中国ではネットに接続して見るスマートテレビが急成長していますが、日本に比べて著作権の規制が緩く無料で動画を簡単に見られるという事情が大きく関係しているのでしょう。
東京オリンピックでは、ネットでの競技映像が公に送信されるでしょうか。個人の撮影した映像があちこちからSNSなどを通じて流れてくるでしょう。新しいデバイス、グーグルグラスやiWatchの進化系はどうなっているのか。我々一般人でも映像が簡単に撮影できて投稿できるようになっているでしょうか。
今までのように自宅のテレビは、メインの観戦場所ではあり続けるでしょう。
その時は4Kテレビが主流になっているか?家族のつながり、絆といったような社会的な動き、世相も反映されるでしょう。
自分のいる場所にふさわしいデバイスがそれぞれの観戦の場所となるでしょう。
検索内容によって表示されるオススメ商品などが変わるように、ユーザーの行動によって発信される映像が編集され、受け手に応じて内容が変化しているかも知れません。情報の送り手任せから、自分自身で自由に設計したり編集したり、カスタマイズ可能な受信形態になっていないかなあ、と思ったりします。
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■執筆者プロフィール
藤井 健志
一級建築士・中小企業診断士・ITコーディネータ