事業承継税制の見直し / 竹内 政明

 中小企業の事業承継の円滑化に向けての支援策として「中小企業における経営
の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」が平成20年5月
に国会で成立し、同年10月より施行されました。支援措置として遺留分に関す
る民法の特例、金融支援制度が創設されています。
 また、中小企業が事業承継を行う際に、経営権を安定させるため、後継者が先
代経営者から贈与や相続で自社株式を取得する場合、相続税・贈与税の負担が重
く、事業承継の大きな障害となっていたことをふまえ、その税負担を軽減するた
めに平成21年に事業承継税制が設けられました。しかし、その利用条件が厳しか
ったため利用件数は500件程度にとどまっています。そこで条件を緩和する改正
が行われました。

1.非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度(事業承継税制)

(1)非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度
 
  後継者である相続人等が相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会
社の株式等を先代経営者である被相続人から取得し、その会社を経営していく場
合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(発行済株式等の2
/3に達するまで)に係る課税価格の80パーセントに対応する相続税の納税が猶
予される。この猶予された税額は、後継者が死亡した場合などは納付が免除され
る。なお、免除されるときまでに特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するな
ど一定の場合には、猶予されている税額の全部又は一部を利子税と併せて納付す
る必要がある。
(注)この特例は、平成20年10月1日以降に相続等により取得した非上場会社の株
   式等について適用される。

(2)非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

 後継者である受贈者が贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の
株式等を先代経営者である親族から全部又は一定数以上取得し、その会社を経営
していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうち、その株式等(発行済
株式等の2/3に達するまで)に対応する贈与税の納税が猶予される。この猶予
された税額は、先代経営者や後継者が死亡した場合などは納付が免除される。な
お、免除されるときまでに特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するなど一定
の場合には、猶予されている税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要
がある。
(注)この特例は、平成21年4月1日以降に贈与により取得した非上場会社の株式等
  について適用される。


2.納税猶予制度の主な適用要件

(1)先代経営者(被相続人、贈与者)の要件
 1)会社の代表者であること又は会社の代表者であったこと
 2)被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ
  同族内で筆頭株主であったこと
 3)贈与の場合には役員を退任すること

(2)後継者(受贈者、相続人又は受遺者)
 1)先代経営者の親族であること
 2)相続開始から5か月後において会社の代表者であること。
  贈与の場合、贈与の時において会社の代表者で20歳以上であり役員等の就任
  から3年以上経過していること
 3)同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同
  族内で筆頭株主であること

(3)会社の要件
 1)原則として中小企業基本法の中小企業者
 2)上場会社、風俗営業会社、資産管理会社に該当しないこと
 3)総収入金額が零の会社、従業員数が零の会社(特例の適用に係る会社の特別
  関係会社が一定の外国会社に該当する場合には、従業員数が5人未満の会社)
  に該当しないこと

3.改正点

(1)雇用確保要件の緩和
  納税猶予適用後5年間、各年の一定の基準日において適用開始時における雇用
 の8割以上を維持する必要があったのを、適用後5年間において平均で8割以上を
 維持に緩和

(2)後継者の親族間承継要件の廃止
  上記(2)1)の先代経営者の親族であることとあったのを、親族に限らず

 適用が可能に

(3)先代経営者の役員退任要件の緩和 (贈与税)
  上記(1)3)先代経営者の役員の退任が必要であったのを、代表者の退任

 要件に緩和(有給役員として残留可)

(4)民事再生等による免除
  民事再生計画等に基づき事業再生を行う際に、納税猶予税額を再計算し、

 一部免除する措置の創設

(5)債務控除方式の変更
  債務の相続があっても納税猶予をフル活用できるように、先代経営者の

 個人債務等を株式以外の相続財産から控除

(6)納税猶予の打ち切りに係る利子税の負担軽減   
 1)納税猶予期間に係る利子税を引き下げる。年2.1%から0.9%

 (貸出約定平均金利の年平均が1%の場合)
 2)納税猶予期間が5年を超える場合には、5年間の利子税を免除 

(7)経済産業大臣への事前確認制度の廃止

(8)その他
 1)提出書類の簡略化
 2)一定の株券不発行会社への適用を可能とする。   
 3)一定の事由により経済産業大臣の認定の取消しがあった場合は、

 その猶予税額の納付に当たり、延納・物納の適用を可能とする

*適用時期
(6)については平成26年1月1日から 
(7)については平成25年4月1日から
その他については平成27年1月1日から

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■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)

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