消費者向けEC市場が拡大を続けています。経済産業省が公表したデータによりますと2012年度の国内EC市場規模は前年比12.5%増で2桁の伸びがあったそうです。このような拡大を流れのなかで通販事業に携わる企業のシステム部門は、顧客満足度向上、売上拡大、業務効率化をめざすべく、エンドユーザとともに知恵をしぼっているのが現状です。
過去には、電話受付(コールセンタ業務)、受注・出荷、ECサイト構築などが別々に機能しており、どちらかといえば、小規模な業務の集まりでしたが、前述したような業務の拡大により、企業の業績に与える影響が大きくなってきました。
たとえばある通販事業者の情報システム全体のあるべき姿として、以下のような要求があげられています。
・情報を一元化(情報の一元化とは、同じ情報を複数所持しないこと)により商品マスタ、顧客マスタ、顧客の各種履歴は、事業にかかわるすべての情報システムで同じデータを参照する
・受注や出荷などの処理を短時間で行い、リードタイムを削減する
・コールセンタの管理指標を把握し、生産性を向上させるためのアクションを継続的に行う
・経理データの連携など、データの連携は手作業を排除し極力自動化する
こういった要求は一般的なものになってきており、システム構築規模も自然と大きくなって来ています。
このようなビジネス要求に答えるソリューションは3つの「変化」にスピーディに柔軟に対応できることが必要となります。
この3つの変化とは、「ビジネスの変化」、「業務の変化」、「市場(マーケット)の変化」です。具体的には、「ビジネスの変化」でいうと高い成長戦略、ビジネス領域の拡大、顧客サービス内容の拡充、詳細かつ大量のプロモーションなど。「業務の変化」は、より細やかでスピーディなマーケティング、ワンデイデリバリ、複雑化し増加するバックヤード業務、コスト増のリスク増大化、求められる業務品質など。そして「市場の変化」は、スマートデバイスの普及、ソーシャルネットワークの拡大、生活習慣・価値観の変化、購買パターンのクロスチャネル化、グローバル対応などです。
そのような要求に答えるためにシステムに求められる要件は、以下のようなものが想定されます。
1.マーケティング機能の充実
・WEBや情報端末の特性を生かした多様なプロモーション機能
・顧客情報を駆使したワントゥワンマーケティングと分析による評価検証機能
・顧客への多様な販売サービス機能
・柔軟で拡張性の高い業務管理機能
・柔軟な構成・キャパシティ・バックアップ機能
・柔軟で安全性・信頼性の高いシステム基盤
2.業務運用機能の充実
・帳票情報を中心としたバックヤード業務の効率化
・直感的でわかりやすい管理者機能
・効率性を重視したユーザインターフェイス
・システム間連携
実現されるシステムによってもたらされる効果としては以下のものが想定されます。
1.顧客満足度の向上
・ECとコールセンタで顧客情報が一元化されているため、顧客に対して迅速で的確な応対が可能となる
・顧客や注文の状況を確認しながら、最適なサービス・プロモーションを提供することができる
2.売上拡大
・豊富な顧客情報を元に詳細な顧客セグメンテーションを定義できる
・顧客セグメンテーションに対して的確なプロモーションを実施できる
・顧客の引き上げ段階で多様なキャンペーンの実施を設定することができる
3.業務効率化
・ECとコールセンタで顧客情報が一元化されているため、顧客に対して迅速で的確な応対が可能となる
・業務に必要な情報をできるだけ1画面に集約し、コールセンタにおいて1コールでの業務完結を目指す
・処理の自動化やシステム連携により業務の高速化、ペーパレス化を推進する
通信販売事業は、今なお年々拡大傾向にある大変動きの激しい業界であり、経営にインパクトにある事業となってきています。
経営とITとの橋渡しを担うITコーディネータの役割も重要となり活躍の機会も増えるものと期待しています。
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■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。