安倍晋三首相は平成25年10月1日において、消費税率を平成26年4月に現行5%から8%に引き上げることを表明しました。新聞報道等によると、経済指標が好転していることから、増税の最終決断をしたとのことです。
すでに皆様ご承知の通り、改正後の税率である8%は、平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税について適用され、平成26年3月31日以前に行われた資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税については、改正前の税率である5%が適用されることとなります。
ただし、平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等のうち一定のものについては、改正前の税率である5%を引続き適用することとするなどの経過措置が講じられています。
今回は、この経過措置のうち、首相の最終表明した平成25年10月1日を指定日としている経過措置で最近お問い合わせいただいたものについてご案内させて頂きます。
1) 平成8年10月1日から指定日の前日である平成25年9月30日までに締結した一定の工事や製造、ソフトウェア開発などの請負契約に基づいて平成26年4月1日以後に行う「課税資産の譲渡等」については、改正前の税率である5%が適用されます。
2) 平成8年10月1日から指定日の前日である平成25年9月30日までに締結した一定の賃貸借契約に基づいて平成26年4月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該当するものに限ります。)における、平成26年4月1日以後に行う「資産の貸付け」については、改正前の税率である5%が適用されます。なお、5%が適用される経過措置期間は契約の貸付期間のうち平成26年4月1日以後の貸付期間となります。
( 自動契約条項のある賃貸借契約は、解約申出期限を確認! )
さらに、上記2)における賃貸借契約については、ずいぶん以前に契約を締結して、自動継続条項によって契約が更新されているものがあります。
自動契約条項のある賃貸借契約とは、契約当事者のいずれか一方から解約の申出がない限り、当初締結した契約の内容で自動的に賃貸借が継続される「自動継続条項」を契約書に定め、この条項により再び契約を締結することなく同じ契約内容で契約が更新されるものです。
自動継続条項のある賃貸借契約について消費税の経過措置が適用されるかどうかの判定は、自動継続された賃貸借契約の貸付期間の開始日や契約締結日ではなく、「解約申出期限」の日が、平成25年9月30日までの更新で自動継続されている契約かどうかによるものと思われます。
この自動継続条項のある賃貸借契約の取扱いについては、平成25年4月付 国税庁消費税室「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」の問37(注)に次のように示されています。
「(注) 自動継続条項のある賃貸借契約で、例えば、解約する場合は貸付期間満了日の○月前までに申し出ることとされている場合、解約申出期限を経過したときに当事者間の合意、すなわち新たな契約の締結があったものと考えるのが相当ですから、指定日の前日までに解約申出期限が経過して自動継続された契約に基づき、施行日前から施行日以後引き続き貸付けを行う場合には、その自動継続後の貸付けで施行日以後行われるものについてこの経過措置が適用されます。
なお、指定日以後に解約申出期限が経過して自動継続された場合には、その自動継続後の貸付けについてこの経過措置は適用されません。」
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■執筆者プロフィール
中川 秀夫(なかがわ ひでお)
税理士、ITコーディネーター、CFP(1級FP技能士)、
経営革新等支援機関認定事務所代表