人口構成の変化から消費構造の変化 / 藤井 健志

人口構成の変化から消費構造の変化
 ~日本の人口は減って老人が増えてものが売れなくなるのか?~

<50年後には人口が8700万人に>
●先日(5月13日)、中長期の日本経済の課題を検討する政府の有識者会議(「選択する未来」委員会)が、少子高齢化や人口減問題を解消するための提言をまとめたものが発表されました。何もしないと、50年後には人口が8700万人になり、65歳以上が約4割を占め、地方自治体の4分の1が消滅するリスクもあると。
そんなことになったら大変と、「出生率回復で50年後に1億人維持」、「年齢性別に関係なく働ける社会に」を目指して、出産や子育てへの予算・税制面の支援を倍増し、女性や若者の就労環境を整えることや、生産年齢人口の上限を「65歳未満」から「70歳まで」と見なおすことで70歳まで働けるよう高齢者の雇用促進を提言しています。

ここでは人口構造の変化から、最近の商業形態・消費構造の変化に少し触れてみたいと思います。

<日本の人口減少と老齢人口の増加>
●少子高齢化という言葉が巷に叫ばれ始めてからもうずいぶん長いような気がしますが、総務省の人口推計によると2013年11月現在、総人口は1億2568万4千人で、前年同月に比べて24万9千人が減少しています。各年齢層では以下のようになっています。

年齢層カテゴリー前年同月比増減人口構成比
年少人口(14歳以下)15万7千人減1637万9千人12.9%
生産年齢(15歳~64歳) 115万5千人減7892万8千人62.0%
老年人口(65歳以上)109万4千人増3198万8千人25.1%
総人口21万8千人減1億2729万5千人100%

 
老齢人口は増え続け、ついに4人にひとりが65歳以上となっています。町を歩いていても、電車に乗っても、かつては若い人々が中心の光景が日常でしたが、今や元気な年配の方たちが目に留まるようになってきました。

<日本の世帯数の変化>
●また世帯数についてみてみると、厚生労働省の国立社会保障人口問題研究所が2013年1月に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、以下の4つのポイントが指摘されています。

1.世帯総数は2019年をピークに減少開始、平均世帯人員は現象が続く。
2.「単独」「夫婦のみ」「ひとり親と子」の割合が増加
3.世帯主の高齢化が進み、65歳以上の高齢世帯が増加する。
4.高齢世帯で増加が著しいのは「単独」と「ひとり親と子」
※国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」より

大きな流れとしての人口の減少、年少人口の減少と老年人口の増加とともに、ひとりぐらし(単独世帯)については増加傾向が続いています。2010~35年の間に「単独世帯」は32.4%から37.2%に、特に世帯主が65歳以上の高齢世帯では「単独」世帯498万世帯から762万世帯と1.53倍に、ついで「ひとり親と子」で133万世帯から201万世帯と1.52倍と著しい増加となっています。
すべての世帯に占める一人暮らしの割合は3分の1を上回り、世帯全体の数は2020年をピークに減少に転じるということです。かっては親と子供、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒に暮らすというのが当たり前のようだった家族構成も核家族化を経て、単身世帯が2010年には一番多くなりました。

<消費面での変化>
●こうした人口構造の変化により少しずつ消費の面でも変化が現れてきています。
車でショッピングセンターに行き、家族のものをまとめ買いすると言ったことも段々と減ってきて、近くのコンビニやスーパーで買物をするような人が増えてきました。

一方、人口の都心回帰、行動範囲の狭い高齢者の増加、仕事を持った主婦の増加により、食料品や日用品の商圏も小さくなってきています。食料品スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどが私の周りでも増えてきたように感じます。
都心部でも高齢化が進む中で徒歩で行ける店舗のニーズが高まってきています。
大型中心のスーパーから小型店の出店へ重心が移りつつあります。
「スーパーが都心部での小型店の出店を増やし、主要22社の2014年度の出店数は 合計195店で、この内4割は標準より小さい店舗となる」(※日本経済新聞4/22)
コンビニエンスストアでは生鮮品の扱いを増やしており、スーパーとの垣根が崩れつつあります。

もう一つの消費面での大きな方向としてネットスーパーが広がりつつあります。
スーパーマーケットに置かれている商品を消費者がインターネットを通じて購入し、スーパーが宅配するサービスです。今までのネット通販ではあれこれ情報を調べて注文するという業態でしたが、実際に最寄りのスーパーで販売している商品をその日のうちに届けてくれるもの。これも高齢化や働く主婦の増加の影響もあり、買い物に不便を感じている消費者がスーパーで買物をするのと同じ感覚で買物をすることができます。

<ITの活用で新しい消費の形態>
●通信インフラやデバイスを支える要素技術の進歩はますます著しい進化を遂げています。ITにより冷蔵庫の中身や買い時も分かるようになるでしょうし、健康状態に応じた提案も求めれば与えられるようになるでしょう。

2020年から世帯数も減少すると推計されています。
スマートデバイスの進歩と共に、ユザーの行動を予測可能とする「ビッグデータ」が生み出され、消費の形態もいままでにないものが生み出されてくるでしょう。
その一役を担いたいものです。

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■執筆者プロフィール
藤井 健志

一級建築士、中小企業診断士、ITコーディネータ
(勤務先)(株)日商社 プロジェクト開発部